医療法人ブレイングループのデイケアでは、積極的に脳リハビリを行っています。脳リハビリでは、音読、書字、計算といった、「読み書き算盤」を中心に行っています。 その中で、先日、ご利用者の一人が、突然「字が書けなくなった」のです。
この患者さんは、字が書けない以外には、意識レベルも良好、しゃべり方もスムーズ、麻痺などの運動障害もありません。この状態を医学的には、「純粋失書」と言います。実は、私は「純粋失書」を実の父親で経験しています。しかし、私の31年の脳神経内科専門医の経験で初めてでした。入院した脳神経内科の部長先生も初めてと言われていたので本当に珍しいようです。
しかし、本当に珍しいのかは疑問です。失書は、文字を書かなければ気が付くことはありません。高齢になれば、そもそも字を書く機会は減ってきます。したがって失書以外に症状がなければ、気が付かれることもないのです。潜在的に、失書の患者さんはいらっしゃるのかもしれません。
今回の患者さんは、早期に気が付いたおかげで、すぐに当院を緊急受診。頭部CT上に、軽い脳梗塞巣を確認。頭部のMRAで、左の中大脳動脈の狭窄も認められたため、脳梗塞の治療とともに、再発予防目的で抗血小板療法が投与されました。おかげさまで、失書の症状も徐々に改善、今後は脳梗塞の予防を中心に治療を行っていきます。
書くという行為は、脳のあらゆる部位を屈指して行われます。そのため書くことを習慣化している人は、年をとっても脳の機能が維持され、何かあった場合でも早期に発見できるのです。脳機能の維持のためにも、万が一の早期発見のためにも、毎日何かを書き続けることを強くお勧めいたします。
なお、失書については以下の記事も参考になさってください。