当院の外来でも、何かイライラしたり、大声を出す方が増えたような気がします。その方々に共通しているのが費用面に対するクレームです。保険診療における自己負担については、クリニックでは何とも対応ができません。経済的に苦しくなれば、精神的にも余裕がなくなるのかもしれません。加谷珪一さんの書籍は、いつも鋭い指摘をされています。今回の、『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶 』も納得の内容です。
- 社会の息苦しさをもたらす要因のひとつとして考えられるのが、近年、急速に進んできた日本の国際的な地位低下です。日本は過去30年間、ほぼゼロ成長という状況が続く一方、諸外国は経済規模を1・5倍から2倍に拡大させました。
- 日本ではこの 30 年間、実質賃金がまったくといってよいほど上がっていませんし、貧困に陥る人も増えてきました。経済的に苦しくなれば、精神的にも余裕がなくなるのは当然の結果
- 私たちの生活を息苦しくしている最大の要因は、他人に対する誹謗中傷やバッシングに代表される日本特有の社会風潮
- もともと日本社会には、不寛容で抑圧的な文化が存在しており、それがコロナ危機をきっかけに、さらに激しくなった
- 日本社会は表面的には近代化を達成しましたが、現実にはまだ前近代的ムラ社会の要素をたくさん残しています。近代的な経済システムと、社会のあちこちに残存している前近代的ムラ社会の制度がぶつかり合っており、このギャップが結果的に日本社会の不寛容さを生み出す元凶になっている
- 幸福度に影響する項目のうち、日本人のランキングが著しく低かったのは「人生の自由度」と「寛容さ」
- 日本では何か失敗すれば、周囲から激しく責め立てられますから、新しいことにチャレンジできず、結果として、自分自身に対する満足度も低くなっている
- 日本では何か新しい技術やビジネスが誕生するたびに声高な批判が寄せられ、スムーズに事業を展開できないことがほとんど
- その間に他国が一気にノウハウを蓄積してしまい、結局は他国にお金を払ってその技術やサービスを利用しているケースはザラにあります。無人機(ドローン)の業界はまさにその典型といってよい
- 成功者が妬まれ、足を引っ張られるということは、実はお金に対する欲求が強いことの裏返し
- 声高に叫ばれている自己責任論とは、弱者に対するバッシングを行うための道具に過ぎず、経済活動における自己責任とは異質のもの
- バブル崩壊以降、日本経済は輸出主導型経済から消費主導型経済にシフトせざるを得なくなり、個人消費が経済成長に及ぼす割合が高くなったと考えています。個人消費の水準というのは、国民のマインドに大きく左右されるものであり、消費主導型経済においては、国民のネガティブなマインドは成長の大きな阻害要因となり得る
- 毎日の生活が充実していて、明るい雰囲気に満ちている社会と、陰湿でバッシングが多い社会とでは消費水準が異なり、最終的には長期的な経済成長にも影響する可能性が高くなります。これが本書の主題でもある、マインドが経済に与える影響
- 消費主導型経済においては、社会全体としてITをフル活用することが成長の必須要件であり、諸外国はこれを実現できたことから、消費主導型経済においても高い成長を維持している
- 日本の労働生産性は米国やドイツの3分の2程度
- 日本企業は、大人数で長時間労働しないと同じ金額を稼げていません。 ドイツでは週休3日という企業も結構ありますし、残業など考えられないという雰囲気です。米国も職場によっては「とにかく稼げ!」というところもありますが、多くは定時退社が常識
- コロナ危機では、データと自然科学を重視するという基本原則がことごとく無視される結果となりました
- 近代組織においては、科学的なデータ収集や分析は「専門家」が行い、「リーダー」はそこから得られた知見を元に最終的に決断を下すという明確な役割分担が確立しています。