本当に、患者さんの多くが、この本に書かれているように運動をすれば医師は「商売あがったり」になると思います。それほどまでに運動は、多くの疾患を改善させてしまうのです。そして、その効果に比して、副作用は殆どありません。この本を読めば、すぐにでも身体を動かしたくなります。専門医としてもお薦めです。
- 身体を動かすと、気分が晴れやかになるだけでなく、あらゆる認知機能が向上する。記憶力が改善し、注意力が研ぎ澄まされ、創造性が増す。
- 運動は不安障害やうつ病のリスクを減らすだけでなく、それらを治療する手段として抗うつ剤やセラピーに匹敵する効果がある
- 人類の歴史において、ほとんどの時代、身体を動かさなければ食料を手に入れることも、生き延びることもできなかったからだ。そのため、私たちの身体は動くのに適したつくりになっている
- 生活習慣は一変し、その結果、もともと身体が適応していた生活からはますます遠ざかってしまったが、あなたや私の脳は、今もまだサバンナで暮らしている。
- 機能的にすぐれた脳とは、細胞がたくさんある脳でも、細胞同士がたくさんつながっている脳でもなく、各領域(たとえば前頭葉や頭頂葉)がしっかりと連携している脳
- GABAは脳内の活動を抑制して変化が起こらないようにする、いわば「ブレーキ」の役目を担っている。しかし身体を活発に動かすと、そのブレーキが弱まる。運動によって、GABAの脳を変えまいとする作用が取り除かれるのだ。そうなると脳は柔軟になり、再編成しやすくなる
- 扁桃体と海馬は常にバランスを保ちながら、互いに綱引きをしているのだ。 要するに、扁桃体がアクセルを、海馬がブレーキを踏んでいる状態
- 慢性的にコルチゾールが分泌されると──それが何か月も、あるいは何年も続くと、海馬は萎縮してしまう
- 定期的に運動を続けていると、運動以外のことが原因のストレスを抱えているときでも、コルチゾールの分泌量はわずかしか上がらなくなっていく。運動によるものでも仕事に関わるものでも、ストレスに対する反応は、身体が運動によって鍛えられるにしたがって徐々に抑えられていく
- 桃体は、一瞬にして全身に厳戒態勢をしく。あなたは「闘争か逃走か」の態勢に入り、心拍数が増加して不安になり、最悪の場合パニック発作に見舞われる。 だが、このとき前頭葉が論理的な思考を促して、そういった感情を鎮めよう
- 定期的に運動をすれば、前頭葉と扁桃体の連携も強化される
- 運動を終えるとコルチゾールの血中濃度が下がり、次回からはあまり上がらなくなる。また、ストレス反応のブレーキペダルである海馬と前頭葉が強化され、不安の引きがねである扁桃体の活動が抑えられる
- 週に2回以上運動をしている人は、ストレスや不安とほぼ無縁
- 運動によって選択的注意力と集中力が改善する
- 身体に負荷を与えると、脳はそれが生死を分けるほど重要な行動だと解釈するのである。そして結果的に集中力が高められる
- 持久力系のトレーニングを行った被験者たちの海馬が、まったく縮んでいなかったことである。それどころか、 成長して2%ほど大きくなっていた
- 理論的には、脳の肥料であるBDNF(運動するほど生成量が増える)が、海馬の成長を促した
- 海馬が身体を動かすことによって最も恩恵を得る
- 運動をすると、海馬で新しい細胞が生まれる。身体を動かすことで血流が増え、より多くのエネルギーを得て海馬の機能がよくなる。
- 18 歳のときに体力に恵まれていた若者は、その後何十年にもわたってその恩恵をこうむっている。高い学歴を経て、( 40 歳前後の時点で)報酬に恵まれたよい仕事に就いていることがわかったのである。 また、うつ状態になる率も低かった。
- 毎日、意識的に歩くと認知症の発症率を 40%減らせる
- 身体と脳は、2つに分かれた別々の器官ではない。 まず、身体を動かすと、身体そのものにも多くの好ましい影響がおよぼされる。たとえば血糖値が安定し、フリーラジカルの増加が抑えられる。それが脳の働きを強化することにもつながる。また心臓が丈夫になれば、脳に血液を、必要なエネルギーとともにたっぷりと送り込める。 「健全な精神は健全な肉体に宿る」という格言は、いかに言い古されようとも真理
- 生物学的には、私たちの脳と身体は今もサバンナにいる。私たちは本来、狩猟採集民