健康志向の高まりとともに「朝はスムージーから始める」という人が増えています。野菜や果物を手軽に摂れるうえ、見た目にも鮮やかで、いかにも“体によさそう”な印象がありますよね。しかし、医学的に見ると「スムージーを朝一番に飲む」という習慣は、実は血糖コントロールの観点からはあまりおすすめできません。今回は、スムージーに潜む“糖質の落とし穴”と、より健康的な飲み方について解説します。
目次
1.スムージーの正体 ― 果物+野菜=糖のかたまり
スムージーとは、野菜や果物をミキサーで細かく砕いた飲み物。しかし、ここで見落としがちなのが「果物の糖分量」です。果物には『果糖(フルクトース)』が多く含まれています。例えば、バナナ1本には約20g、りんご1個には約35gもの糖質があります。さらに、ミキサーにかけることで繊維が壊れ、消化吸収が早くなるため、結果的に血糖値を急激に上げてしまうのです。つまり、スムージーは“ヘルシーな見た目のジュース”にすぎません。食物繊維が残っているとはいえ、血糖上昇スピード(GI値)はかなり高いのです。
2.朝一番のスムージーが危険な理由
朝起きてすぐの状態では、体は「空腹」かつ「血糖が低い」モードにあります。このタイミングで糖質の多いスムージーを飲むと、一気に血糖値が上昇します。すると膵臓から大量のインスリンが分泌され、今度は血糖が急降下します。この“血糖のジェットコースター”が続くと、以下のような弊害が起こります。
2-1. 集中力の低下・眠気
血糖が急激に下がることで、脳がエネルギー不足になります。朝スムージーを飲んだのに午前中に眠くなる、という人はこの典型です。
2-2.肥満・糖尿病リスクの上昇
インスリンが過剰に分泌されると、余った糖が脂肪として蓄えられます。「朝スムージー=ダイエットに良い」というのは、実は大きな誤解です。
2-3.老化促進(糖化)
高血糖状態が続くと、体内でたんぱく質と糖が結びついて“糖化反応”が起こり、肌や血管が劣化します。いわゆる「AGEs(終末糖化産物)」が増えることで、老化や認知機能低下のリスクも高まります。
3.スムージーは“食後”がベストタイミング
では、スムージーを完全にやめるべきでしょうか?
答えは「いいえ」。摂り方を工夫すれば、健康的に楽しむことができます。ポイントは飲むタイミングです。食後にスムージーを飲めば、すでに胃の中に他の食材(特にたんぱく質や脂質)があるため、糖の吸収スピードが緩やかになります。
その結果、血糖値の急上昇を防ぎつつ、果物や野菜のビタミン・ミネラルを効率よく摂取できます。さらに、果物中心ではなく「葉野菜中心+果物少量」にすると、糖質量を大幅に減らすことができます。たとえば、ほうれん草・ケール・アボカドなどのグリーンベースに、バナナやりんごをほんの少し加えるだけで十分です。
4.医師がすすめる“賢いスムージー習慣”
- 朝食前には飲まない:どうしても朝飲みたい場合は、プロテインや卵、ナッツなどのたんぱく質・脂質を一緒に摂ることで、血糖の上昇を緩やかにできます。
- 果物は1種類・少量に抑える:複数の果物を入れると、糖質量が一気に跳ね上がります。「バナナ+りんご+オレンジ」は実質“液体デザート”です。
- 咀嚼を意識する:飲み物であっても、ゆっくり口の中で味わいながら飲むことで、唾液中のアミラーゼが働き、血糖上昇がゆるやかになります。
- 夜スムージーもおすすめ:夕食後や間食代わりに飲む方が、栄養バランスを保ちやすく、体への負担も少ない場合があります。
5.「健康に良い」はタイミング次第
スムージーは、確かに栄養価の高い飲み物です。しかし、“健康的かどうか”は 「何を飲むか」よりも「いつ・どう飲むか」 に左右されます。糖質は本来、体にとって大切なエネルギー源です。ただし、空腹時の糖質摂取=血糖スパイクの引き金になることを理解しておくことが大切です。「健康のために朝スムージーを飲んでいたのに、逆に太った」「午前中に頭がぼーっとする」──そんな方は、飲む時間と内容を見直すだけで体調が劇的に変わります。
6.まとめ
- スムージーは糖質量が多く、朝一番の空腹時に飲むと高血糖を起こしやすい
- ミキサーにかけることで吸収スピードが速くなり、血糖スパイクを引き起こす
- 食後に飲むことで血糖の急上昇を防ぎ、栄養を効率的に摂れる
- 果物を減らし、野菜や脂質・たんぱく質を組み合わせるのが理想

認知症専門医として毎月1,000人の患者さんを外来診療する長谷川嘉哉。長年の経験と知識、最新の研究結果を元にした「認知症予防」のレポートPDFを無料で差し上げています。