新型コロナウイルス感染拡大による自粛要請により、行動が制限されています。特に高齢者の場合、自粛により認知症が進行してしまうのではないかと心配です。もちろん、若い人でも外出規制で、一日中家の中にいると、「認知症になってしまうのでは?」と心配になるものです。こんな時にこそ、日常生活の中のちょっとした工夫で認知症を予防できるものです。
今回の記事では、月に1000名の認知症患者を診る専門医長谷川嘉哉が、「コロナ禍の今にお薦めの認知症予防」についてご紹介します。
目次
1.自粛の今、高齢者が気をつけることは?
高齢者のかたは、自粛要請の今、以下の点に気をつける必要があります。
1-1.生活リズムの乱れに注意
高齢者の方は、生活リズムの変化への対応が苦手です。日中の活動性が落ちてしまうと、夜間の睡眠が不安定になる。その結果、起床時間も遅れがちになり、食事の摂取時間も狂う。その上、昼間もウトウトしてしまい、さらに夜間の睡眠が不安定になる。まさに、負のスパイラルに陥るのです。
1-2.頭の廃用
外出自粛により、家の中にいる時間が長くなると、人にも会わない、周りの景色も変わらない、一方通行のテレビを観るだけになってしまいます。重力のない宇宙での生活で筋力が衰えるように、刺激のない生活によって、脳力も衰えてしまうのです。
1-3.身体の廃用
家の中での生活では運動量は極めて僅かです。脳にとっては、頭を使うことも、身体を使うことも同じ情報処理です。運動量が減ることは、脳への刺激が減ることと同じなのです。
自宅での自粛生活は、放っておくと、頭と身体の両面から認知機能を低下させる可能性があるのです。以下にそれぞれの対応策をご紹介します。
2.生活リズムを整える方法
生活リズムを整えるには以下の注意が必要です。
2-1.デイは可能な限り継続
新型コロナを恐れて、自らデイサービスセンターの利用を中止されている方がいらっしゃいます。しかし、私は、「デイが運営されているならば利用を継続してください」とお願いしています。先日もNHKの番組で、新型コロナの影響でデイサービスが利用できなくなった家族が、「デイを使わなくなって、明らかに悪くなってしまった。改めてデイの使うことの重要性を痛感した」とコメントされていました。
デイの利用については、あくまで地域単位で考えるべきです。少なくてもデイが運営されている地域であれば、デイの継続利用が大事です。
2-2.起床時間を整える
起床時間を規則正しくしましょう。用事がないと、いつまでも起きてこないかもしれません。子供と同様に、決まった時間に起きるようにしましょう。このことが、規則正しい食事の摂取にもつながり、さらには排尿・排便のリズムにまでつながるのです。
2-3.化粧・髭剃りに気を配る
認知症の進行の、目安に身だしなみが重要です。どこにも、出かけることがないと、身だしなみが乱れます。そのためにも、女性はお化粧、男性は髭剃りは毎日行うようにしましょう。私の外来でも、髭をそらずに来院された方には、はっきりと本人とご家族に注意をしています。
3.頭の廃用予防には
頭の廃用予防には以下がお勧めです。
3-1.良いものを読んで、見て、聴こう
家にいる時間が長い今こそ、良い本を読んだり、良い映画を観ることはお勧めです。特に、脳への刺激を考えると落語はお薦めです。落語は、集中して聞かないと話の内容が分からなくなるので、ただテレビを観るよりずっと頭を使います。詳しくは、以下の記事も参考になさってください。
3-2.書くことが脳を刺激する
自宅にいる時間が長い今こそ、新聞の書き写しもお薦めです。たとえば掲載されている料理のレシピを書き写すだけでも効果があります。何であれ「書く」ことは、認知症予防につながります。詳しくは、私の拙書も参考になさってください。
3-3.電話もお薦め
子供さんは、できるだけ親に電話をしてあげてください。私は、「家族の関心に優る良薬はない」と思っています。電話でも十分脳への刺激になります。同時に子供さんは、電話での親の応答の様子に注意を払いましょう。たとえば昨日は「電話なんてしてこなくて大丈夫」と言っていたのに、今日は「最近、電話がなくて寂しい」などと理屈の通らないことを言い出したり、すぐ感情的になるようなら認知症のサインです。
4.身体の廃用予防には
身体の廃用を予防するには、転倒予防に力をいれることが大事です。
4-1.転倒による打撲や骨折に注意
転倒により、打撲や骨折などのケガをすると、それがきっかけで歩く機会が減ってしまいがちです。そうなると、人間関係が狭くなり、精神面にも悪影響が出て、認知症の発症リスクが高まるのです。
4-2.自宅を転ばない環境に!
家にいる時間が長くなりがちな今、転ばない環境づくりが重要になります。「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果(全体版)」(内閣府・平成二十二年度)によれば、室内の転倒事故発生場所は、「居間・茶の間・リビング」が最も多く、「玄関・ホール・ポーチ」、「階段」と続きます。
高齢者は、歩行の際足が上がりが悪くなり、すり足になりがちです。そのため、カーペット、敷居などのちょっとした段差でも転倒するので注意が必要です。足を踏み外しやすい階段や玄関、浴室などでは重傷を負う危険性もあるので、手すりを取り付けるなどして転倒予防が必要になります。
4-3.特に大事なのは下半身
転倒予防には、下半身の強化が大事です。手軽な強化法として「片足立ち」があります。文字通り、支えなしに片足で立つだけ。スペースのある場所で行うことが基本です。膝をあげて足の裏を5~10センチ浮かせましょう。片足立ちは、運動量のあるトレーニングです。フラフラしたり足の筋肉が痛くなりますが、それは普段使っていない筋肉が使われている証拠。もちろん、よろけそうになったら壁や椅子につかまって構いません。片足を上げた状態でゆっくり呼吸しながら1分キープできれば「合格」です。
5.ブレイングボードが特にお勧めな理由
コロナ禍の今できる認知症予防をご紹介してきましたが、ブレインググループが開発したブレイングボード®もお薦めです。ブレイングボード®は、「有酸素運動」「筋力トレーニング」「柔軟性向上」「バランス性向上」の4つの運動がわずか5分でできてしまいます。特に、有酸素呼吸運動だけでなく、筋力や柔軟性・バランスを改善することで運動効果を高めますのでお勧めです。
ブレイング®とは、ブレイングループが創った「脳を意味するブレインとトレーニングを組み合わせた言葉」です。まさに、ブレイングボード®を使うことで、運動機能の改善と脳への刺激が同時に可能となるのです。
6.まとめ
- 自宅での自粛要請が続くと、特に高齢者は認知症の発症・進行が心配です。
- そのためには、生活リズムを整え、頭と身体の廃用を予防することが大事です。
- 一つの方法として、運動機能の改善と脳への刺激が同時に可能なブレイングボード®もお薦めです。