病院に連れて行くだけではダメ!認知症を疑った時の受診の仕方を専門医が解説

病院に連れて行くだけではダメ!認知症を疑った時の受診の仕方を専門医が解説

社会の啓もうにより認知症は早期受診が大事ということが理解されてきています。そのため、最近では多くの御家族や患者さんが、早い段階で認知症専門医の受診をしてくださいます。しかし、受診に際し、どんな準備をして良いのかもわからないものです。先日も、ご家族が前もって詳細な準備を頂いたおかげでスムーズな診察につながりました。受診に当たってご家族に適切な準備をして頂くと、正しい治療と診断につながり、患者さんにもご家族もメリットが大きいものです。

今回の記事では、月1000名の認知症患者を診察する専門医長谷川嘉哉が、認知症を疑った際の受診に際してご家族が準備するととてもありがたいものをご紹介します。なお、そもそも受診をするレベルか否か悩むケースや、患者さん自身が受診を拒否する場合は、以下の記事も参考になさってください。

1.当日必要な準備は

いきなり医師の質問に答えることは緊張するものです。その上、短い時間で的確に伝えることは難しいものです。前もって以下のことを確認しておいていただけると診断にとても役立ちます。以下は、私が専門外来でお聞きする代表的な質問から紹介させていただきます。

1-1.既往歴

今までに、手術や入院をしたような病気はとても重要です。配偶者さんは比較的正確に覚えておられることが多いのですが、子供さんの場合は、父親と母親の既往歴が混乱していることがあるので、前もってご確認いただけるとありがたいです。

1-2.家族歴

認知症専門外来では、認知症の家族歴がとても重要になってきます。ご両親だけでなく、ご兄弟の中での認知症の有無の確認がありがたいです。できれば、認知症になって看取りまで家で生活できたのか、最後は入所になったのかも教えていただけると参考になります。なお、認知症と遺伝については以下の記事も参考になさってください。

1-3.服薬履歴

飲んでいる薬の情報はとても重要です。この情報を、持ってくることを忘れたご家族には、多少遠くても取りに帰ってもらうほどです。何しろ、薬の調整だけで認知症の症状が改善することがあるからです。同時に、服薬管理ができているか否かも、薬の残薬から確認をお願いしたいです。何しろ、「薬の飲み忘れは、認知症の初期症状」とさえ言えるのです。

1-4.症状(物忘れ)のチェック

症状は、物忘れを中心とした症状を中心に伺います。「料理ができているか、味付け、レパートリーは?」、「金銭管理ができているか?小銭が使えているか?」、「服薬管理ができているか?」、「男性は髭剃り、女性はお化粧と言った身だしなみは?」、「近所の方から異常を指摘されたことは?」などの情報は有益です。

1-5.さらに深刻な症状はあるか(周辺症状)

物忘れだけでなく、被害妄想(お金を盗られた)、嫉妬妄想(配偶者が浮気をしている)、幻覚(変なものが見える)、易怒性(怒りっぽくなる)、徘徊(勝手に出かけて迷子になる)などの症状があれば、必ず伝えください。

1-6.騙されたことはないか

認知症専門外来に受診される患者さんが、悪徳業者に騙されることも多いものです。突然自宅を訪れるリフォーム業者、勝手に品物を送り付けてくる業者、景品を餌に布団を売る業者などがあります。ただし悪徳業者以外に、銀行、郵便局、保険販売員も、患者さんの認知機能の低下をいいことに、不要な商品を契約させることがあるので注意が必要です。

1-7.運転免許更新時の点数も

運転をしている方は、事故の有無。車の傷の有無も大事な情報です。75歳を超えた方を対象にした免許更新時の試験を受けられた方は、その際の点数を教えてもらっていただけていれば、診断に相当役立ちます。同時にご家族として、「運転をやめてもらいたいか否かの希望」も教えてもらえると対応することができます。


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1-8.困っていること

何を伝えるかを考えることも難しい場合は、単純に「困っていること」をお伝えいただいても結構です。「患者さんの夜間の頻尿で困る」、「最近、怒りっぽくなって対応が大変」、「食事したことを忘れるので対応が困る」などでも十分です。

2.紙にまとめる

受診に際しては、紹介した事柄を紙に書かれることをお勧めします。

2-1.何を書く?

前章で紹介したようなことを書いてもらえればよいのですが、実際に書くとなると「どこまで書けばよい?」、「こんなことを書いても大丈夫?」と迷うものです。私は、いつも「迷ったら書いてください」とお願いしています。内容が、重要であるか否かは医師が判断します。遠慮せずに、書いていただく方がありがたいのです。

2-2.受付で問診票等とともに出す

記載いただいたメモは、できれば受付で出してください。ご家族によっては、診察の際に渡してくださるのですが、患者さんの前では、じっくり読みにくいものです。先に渡しておいていただけると、しっかりと読んでから診察に臨むことができます。

2-3.見もしない医師は論外?

せっかく記載したメモを見もしない医師や、メモを重要視しない医師がいることも事実のようです。正直、認知症を診ることができる医師は思いのほか少ないものです。医師の変更も考えた方が無難です。

2-4.医師の言葉をメモする

患者さんの状況のメモだけでなく、医師からの説明もメモされると、来院されなかった家族への説明も正確になります。何より、医師からすると、説明内容をメモされると少し緊張してよりしっかり説明をしようと思うものです。

3.準備することで治療効果がわかる、とは

準備することは、患者さんの受診時の状況を家族が認識することにつながります。認識すると、受診して治療されることによって、「症状が改善した」、「症状が進行した」といったことが明確になります。準備もせずに受診をすると最初の基準がはっきりしないため、治療効果があるのか否かも分からなくなるのです。

4.まとめ

  • 認知症の専門外来に受診する前には準備が大事です。
  • 既往歴、服薬歴、家族歴、症状を思いつくままにメモをして、受付に提出すると診断治療に役立ちます。
  • 何よりも受診時の状況を認識することで、治療効果も明確になるのです。
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