【お薦め本の紹介】『疼くひと』by松井久子

【お薦め本の紹介】『疼くひと』by松井久子

 70歳の女性と57歳の男性の恋愛を描いた小説です。単に自分が57歳なので、思わず手に取りました。私の外来でも、内縁関係でとても仲の良いカップルが数組いらっしゃいます。小説の中で描かれている内容は、現実にも存在し、その数も増えていると思われます。題名はドキッとしますが、とてもワクワクしていっきに読めてしまいます。お薦めです。

  • そのときどき、繁美たちよりも価値観が合い、深い話もできる友達が何人もいた筈 だった。が、そんな人たちとも今は疎遠になって、再び高校時代の四人組がいちばんの友達になっている
  • 仕事の場で出会った人たちには、やはり無理をしていたのだろうか? 自分を偽ったり、装ったりしていたのだろうか。
  • 燿子は、高校時代のあの頃を振り返って、改めて思うのである。 「女の人生は、最初に出会った男によってきまる」ということを。そして「女の人生の転変には、つねに愛の問題が絡んでいる」ということ
  • 六十歳になった頃は、自分の認識と世間からの扱われ方のギャップが大き過ぎて、「還暦祝い」も「赤いちゃんちゃんこ」も、ジョークとして笑い飛ばすことができていた。が、あれから十年が過ぎた今は、「古希」と言われただけでこんなにも心が塞ぎ、その現実を受け入れ難い気持ちになっている
  • 数年前に九十五歳の母親をおくったとき、亡き母の引き出しや文箱に大事に仕舞われた、 夥しい数の手紙や日記類を見つけて、驚き、呆れたものだった
  • 「私が死んだら、パスワードでロックされているパソコンやスマホのデータは、一切読まずに消して頂戴。それだけは約束してね」 とも、固く伝えている
  • 自分の生きてきた人生の軌跡が、死とともに跡形もなく消えること。 それもまた、老いのときを迎えての、燿子の願いのひとつ
  • 女の人生の幸せは、誰かに与えてもらうものでなく、自分の力で掴むものだ
  • バスルームを出て、全身にボディークリームを塗ると、膣の粘膜をいたわるように保湿クリームを塗り、指を膣の中に入れ、丁寧にマッサージする。もう何年もそれを続けているおかげで、燿子のヴァギナは七十歳を迎える今も、常にみずみずしく潤いを帯びていた。なぜ女たちは、朝晩、顔のスキンケアにはあれほど熱心に 勤しんでいるのに、膣のケアをしないのだろ
  • 女性は本来、閉経して生殖機能を失ったとき、晴れて快楽のためだけの性愛を謳歌できるようになる
  • 昔から、果てた後で邪険な男になってしまう自分が嫌いだった。先刻まで、あれほど愛しく思えた女に、射精した途端に何の感情も持てなくなってしまう。自分のそんな豹変に気づくたび、自己嫌悪でいっぱいになってしまう。
  • 多くの男たちも、性交とは、ペニスが 猛々しく勃起して、最後に射精するのが相手を歓ばせることだと、思い込んでいる。男は男らしく、女は女らしくあらねばならない。 そうした常識や、既成概念から解放されたら、男も女も、もっと自由になれる
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長谷川嘉哉監修シリーズ