【お薦め本の紹介】アトムの心臓 「ディア・ファミリー」23年間の記録

【お薦め本の紹介】アトムの心臓 「ディア・ファミリー」23年間の記録

映画は素晴らしかったです。観客も多くの方が涙していました。しかし原作を読むとその感動は倍増します。とても丁寧に人物や周囲の環境が描かれています。そして素晴らしい言葉がちりばめられています。映画鑑賞の前であろうが後であろうが一読をお薦めします。

  • 宣政は借金と佳美の難病という二つの痛みを抱え、名古屋や大阪の大手商社を歩いていた。
  • 尾張人特有の気質が出る。独立心が強く、しぶとくてガメつい。目的のためなら恰好を気にせず、ひたすら直進する。
  • キリスト教精神を拠り所にする陽子は、辛くても人のせいにしないで、力を尽くすことを心がけている。神様だけでなく、人様もよく見ているもので、助けてくれる人が必ず現れるものだ、と信じていた。
  • 女子医大とは、東京都新宿区河田町にある東京女子医科大学病院を指している。東京女医学校を母体に一九〇八年に開設された名門病院で、心臓、脳、消化器、腎臓病治療などで国内でもトップクラスの手術件数を誇っていた。
  • 女子医大の卒業生は全員が女性だが、医局には全国から彼のような一匹狼的な男性医師が集まっていた。
  • 自宅にいると、三人姉妹はいつも一緒にいた。
  • 「病気のよんちゃんが家族を一つにしているんだな」
  • 目指すのは白い巨塔の壁を打ち崩す「医工連携」である。
  • 東京女子医大に飛び込んだ筒井夫妻は、ノーベル賞級の研究者やベンチャー魂を持つ人々に囲まれていたのだった。
  • 挑戦者を受け入れる大学病院という器があり、そこへ現れた中小企業者の無邪気な貪欲さが、研究者たちに仲間意識を芽生えさせたのだという。
  • 宣政の表情は暗かった。研究を始めてから八年近く過ぎていた。その間、彼が投じた研究費は、補助金を含めて八億円にも達していた。
  • 泣きたかった。やめたくてやめるのではないのだ。カネがないことが悔しくてならなかった。
  • 人工心臓の開発の難しさを知るにつけ、改めて思うのは、人間の心臓の機能のすばらしさです。
  • 筒井夫妻が何とか持ちこたえているのは、カテーテルに先行して、医療器具を次々に開発していたからである。
  • 宣政だけは「自分なら日本人にあった製品が作れる」と思っていた。人工心臓の研究で学んだ知識と樹脂加工工場のノウハウを生かせるからだ。
  • 最初はあんたのための人工心臓を作っとったけど、もう今は人工心臓じゃなくて、IABPというカテーテル作ってるんよ。
  • 大卒者なんてなかなか採れないのだ。そこを神田と松尾が二人とも佳美のために会社を盛り立ててくれるとは。小躍りする気分だった。
  • 設立から四十二年、佳美の命を救うことから始まった会社は、「一人でも多くの生命を救いたい」を社是に掲げた。パートを含め従業員は約二百五十人、二〇二三年九月期の売上高は六十二億円を超えた。
  • 佳美が「また一人救えたんだね」と、その数を数えていたIABPカテーテルだけで販売数は十七万本を超えた。その他のカテーテルを合わせると総販売数は百五十万本に達する。
  • 「採算の合わない仕事ができない会社は、医療の仕事をする資格がないんじゃないか」
  • 億万長者にはなれなかったが、俺は佳美に導かれて十七万人の患者さんを助けた。そう胸を張りたい気持ちだった。
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長谷川嘉哉監修シリーズ