はっきり言って、著者の森永卓郎さんはあまり好きではありません。TVに出ていてもチェンネルを変えます。著書も手に取ることはあり得ません。しかし、今回の「ザイム真理教」は殆どの出版社が発行を拒否したというのです。そういう話を聞くとかえって読みたくなるから不思議です。内容は、かなり納得するものでした。最近でいえば高橋洋一さんも同様の話をされています。この本は、毛嫌いすることなく多くの方に読んでいただき、ご意見をいただきたいです。
- 国全体の財政、特に自国通貨を持つ国の財政にとって、財政均衡主義は誤っているどころか、大きな弊害をもたらす政策
- 大蔵省(財務省) のキャリア官僚というのは、東大法学部出身者が多い。出世コースに乗っている人に限れば圧倒的に東大法学部だ。法学部出身だから、あまり経済学を勉強していない。だから、財政均衡、すなわち税収の範囲内に歳出を収めるという経済学的にはありえない話を「正しい」と思い込んでしまった
- 若手の財務官僚の半数は、財政均衡主義に疑問を持っているのだという。ただ、そのことを省内で口に出すことはできない。もしそんなことを言ったら、出世コースから外されるか、最悪の場合、地の果てに飛ばされてしまう
- 岸田総理も当時の菅直人総理と同じように、財務省に注射されているのでしょう。経済政策についてわかっていない総理ほど、注射はよく 効く
- 安倍内閣と菅内閣はコロナ対策で100兆円規模の予算を組みましたが、増税は一切しなかった。財務省に対して「文句を言うな」と増税は一切認めないとの姿勢を貫いて黙らせたのです。しかし、岸田首相は 43 兆円の防衛費増額くらいで増税する
- 財務官僚の最大の特徴は、増税を心の底から「正義」と信じてやまないことだ。
- 財務省は、自らが作り上げた財政均衡主義という教義を持ち、その教義を正当化するために「日本の財政は破綻状態だ」と国民を脅す神話を作り上げてきた
- そもそも日本は、そんなに大きな「借金」を抱えているわけではない。日本政府は、世界で類を見ないほど大きな資産を保有している
- 日本政府は現預金や有価証券などの流動資産を841兆円、土地や建物などの固定資産を280兆円も持っている。合計の資産額は1121兆円だ。こんなに政府資産を持っている国は日本以外には存在しない。つまり、日本政府は借金も多いが、その借金の3分の2ほどは資産としてキープしている
- 負債の1661兆円から保有資産の1121兆円を差し引くと、資産負債差額は540兆円となる。これが本当の日本政府が抱える借金
- 2020年度の名目GDPは527兆円だから、借金のGDP比は102%だ。GDPと同額程度の借金というのは、先進国ではごくふつうの水準だ。日本の財政が国際的にみて悪いと言う事実はまったくない
- 世界の投資家はグロスの借金をみているのではなく、ネットの借金をみている。その証拠に、2021年末現在で、発行済みの日本国債の 14・7%、175兆円は海外投資家が保有している。もし財務省の主張するように、日本の財政が破綻に近い状態であるなら、世界で最低水準の金利しかつかない日本国債を海外投資家が買うはずがない
- じつは日本政府が抱える本当の借金は、ほぼゼロなのだ。資産負債差額が2020年度末で540兆円あるが、そこに日本政府が手にしている通貨発行益の532兆円を加えると、日本政府が本当に抱えている最終的な純債務はわずか8兆円にすぎない
- 藤巻氏が日銀に警告してきたのと同じ理由でオーストラリア準備銀行は、債務超過に陥ったのだ。その後、何が起こったのかというと、じつは何も起こらなかったのだ。市場参加者は、中央銀行の債務超過には関心を持たなかったというのが現実に起きたこと
- 歴史上ただ一人、反財務省のスタンスを採った安倍元総理は、旧統一教会への怨恨を膨らませたテロリストの凶弾に倒れたが、政治的にはその前からザイム真理教の攻撃と闘っていた
- 財政出動ができないなかで、通貨発行益を量産した結果、なんと2020年度末の国の実質的な債務は8兆円と、ほぼ無借金のところまで財政を改善させてしまったのだ。 結果的には、財務省の完勝だ。先進国で、完全無借金の国はほとんどない。日本の国債金利が世界で一番低いのも、日本が実質的に無借金であることを投資家がよく理解しているから
- デフレ下における増税は、政策として間違っている。ことさら財務省を悪玉にするつもりはないけれど、彼らは、税収の増減を気にしているだけで、実体経済を考えていません
- 2020年8月 28 日に安倍総理が辞任の意向を発表した。その時点で、私は二つのことが確実に起きると確信した。一つは、日本が重税国家になることと、もう一つは日本経済の転落が加速するということ
- 2010年度の国民負担率は、 37・2%だった。それがどんどん上がっていって、2022年度には 47・5%と、ほぼ5割に達している。働いても半分が税金と社会保険料でもっていかれる計算
- 日本経済が成長できなくなった最大の理由は「急激な増税と社会保険料アップで手取り収入が減ってしまったから」だ。 使えるお金が減れば、消費が落ちる。消費が落ちれば、企業の売上げが減る。そのため企業は人件費を削減せざるを得なくなる……という悪循環
- 2021年民間企業従業員の平均年収は443万円、国家公務員の年収は、平均年収は681万円と民間よりも 54%も高い
- いまの深刻な少子化は、非婚化が原因で発生している。正確に言うと、結婚しないのではなく、結婚できない
- 20 代後半男性の既婚率をみると、年収150万~199万円が 14・7%であるのに対して、年収500万~599万円だと 53・3%に跳ね上がる。非正社員の平均年収は170万円だから、非正社員の男性はほとんど結婚してもらえない
- ザイム真理教の正体がこれまで明らかにされなかった背景には、ザイム真理教に強力なサポーターと強力な親衛隊がついていたことが大きい。サポーターは大手マスメディアと富裕層、そして親衛隊は国税庁
- 分離課税にしたほうが有利になる人たちが、そっと分離課税を残してきたのではないだろうか。 有利になる人たちとは、高額の退職金を受け取る大企業役員や金融トレーダー、そして高級官僚たち
- 一刻も早く退職金の分離課税と所得の2分の1控除はやめるべきだ。それで庶民は何も損をしない
- もっとも公平な税制を作ろうと思うのであれば、消費税を廃止し、税制の特例を廃止し、すべての所得を総合課税することが望ましい
- カルト教団の多くでは、富裕層やエリート層が、一般信者と異なる待遇を与えられるのはよくある話だ。ザイム真理教でもその構造はまったく同じだ。庶民は教団の集金のターゲットとしてしか扱われない
- 富裕層やエリートが財務省に逆らえないのは、単に自分たちを優遇してくれるからだけではない。財務省の外局である国税庁が幅広い裁量権を持っているから
- いまの政府の戦略は「死ぬまで働いて、税金と社会保険料を払い続けろ。働けなくなったら死んでしまえ」というもの