【お薦め本の紹介】目を背けてはいけない、人新世の「資本論」by斎藤幸平

【お薦め本の紹介】目を背けてはいけない、人新世の「資本論」by斎藤幸平

昔に比べて、天候がおかしくなっていることは、誰もが感じているのではないでしょうか? でも、「できたら考えたくもない」。気候変動の代償に、1970年代の生活に戻ることにも抵抗がある。

見たくない現実を明らかにしている点では、避けたくなる本です。でも、やはり目を背けず多くの方に手に取っていただきたい本です。幸いとても売れているようで、この国も捨てたものではないようです。一部ご紹介します。

  • 人類の経済活動が地球に与えた影響があまりに大きいため、ノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェンは、地質学的に見て、地球は新たな年代に突入したと言い、それを「 人 新 世」(Anthropocene) と名付けた。人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代という意味である。
  • 産業革命以前には二八〇ppmであった大気中の二酸化炭素濃度が、ついに二〇一六年には、南極でも四〇〇ppmを超えてしまった。
  • パリ協定は気温上昇を二℃未満に抑えることを目指していると言った。だが、それは口先の約束にすぎない。実際には各国がパリ協定を守ったとしても、気温は三・三℃上昇するという指摘もある*
  • 二〇二〇年六月にシベリアで気温が三八℃に達した。これは北極圏で史上最高気温であった可能性がある。永久凍土が融解すれば、大量のメタンガスが放出され、気候変動はさらに進行する。そのうえ水銀が流出したり、 炭疽菌 のような細菌やウイルスが解き放たれたりするリスクもある。そして、ホッキョクグマは行き場を失う。
  • 気温上昇が四℃まで進めば、当然、被害は壊滅的なものになり、東京の江東区、墨田区、江戸川区のような地域では、高潮によって多くの場所が冠水するようになるといわれている。大阪でも、淀川流域の広範囲の部分が冠水するだろう。沿岸部を中心に日本全土の一〇〇〇万人に影響が出るという予測もある
  • 日本を含めた排出量上位の五ヶ国だけで、世界全体の六〇%近くの二酸化炭素を排出しているのである
  • 資本は石油、土壌養分、レアメタルなど、むしり取れるものは何でもむしり取ってきた。この「採取主義」(extractivism) は地球に甚大な負荷をかけている。
  • 資本主義がどれだけうまく回っているように見えても、究極的には、地球は有限である。
  • 人類が使用した化石燃料のなんと約半分が、冷戦が終結した一九八九年以降のもの
  • 石油がなくなる前に、地球がなくなってしまうのだ
  • 再生可能エネルギーが、化石燃料の代替物として消費されているのではなく、経済成長によるエネルギー需要増大を補う形で、追加的に消費されているのだ
  • 世界の富裕層トップ一〇%が二酸化炭素の半分を排出しているという、驚くべきデータもある。とりわけ、プライベート・ジェットやスポーツカーを乗り回し、大豪邸を何軒も所有するトップ〇・一%の人々は、極めて深刻な負荷を環境に与えている。
  • 他方で、下から五〇%の人々は、全体のわずか一〇%しか二酸化炭素を排出していない。にもかかわらず、気候変動の影響に彼らが最初に晒される。
  • グリーン・ニューディールが本当に目指すべきは、破局につながる経済成長ではなく、経済の スケールダウン と スローダウン なのである。その際の変化の目安としてしばしばいわれるのは、生活の規模を一九七〇年代後半のレベルにまで落とすこと
  • いくら経済成長しても、その成果を一部の人々が独占し、再分配を行わないなら、大勢の人々は潜在能力を実現できず、不幸になっていく。  このことは、逆にいえば、経済成長しなくても、既存のリソースをうまく分配さえできれば、社会は今以上に繁栄できる可能性があるということでもある。
  • 要するに、気候危機に直面したピケティの結論は、資本主義では民主主義を守ることができないというものだ。だから、民主主義を守るためには、単なる再分配にとどまらない、「社会主義」が必要であり、生産の場における労働者の自治が不可欠になってくる。
  • 希少性を生み出しながら利潤獲得を行う資本主義こそが、私たちの生活に欠乏をもたらしている。
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長谷川嘉哉監修シリーズ