【お薦め本の紹介】『神様の定食屋』・・心と食欲を同時に刺激する物語

【お薦め本の紹介】『神様の定食屋』・・心と食欲を同時に刺激する物語

神様の定食屋を読みました。読み終えて最初に感じたのは、「お腹がすく」という、とても素直な感覚でした。しかしこの作品の魅力は、単に料理がおいしそうというだけではありません。料理を通して人の思いが伝わり、心がほどけていく。そして読者自身も、どこか心が温かくなる。身体と心の両方に働きかける物語でした。認知症専門医として日々患者さんやご家族と接している立場から見ても、この作品にはとても重要なテーマが流れています。
それは、「食べること」と「記憶」と「人の思い」です。

今回はこの作品を、医師としての視点も交えながら紹介してみたいと思います。

目次

1.読んでいるだけで食欲がわく物語

『神様の定食屋』の魅力のひとつは、料理の描写です。食堂で出される料理は決して豪華なものではありません。
いわゆる「ごちそう」ではなく、

  • 焼き魚
  • 味噌汁
  • 煮物
  • 定食

といった、どこにでもありそうな日本の家庭料理です。

しかしその描写が実に丁寧です。

湯気。香り。炊きたてのご飯。味噌の香り。こうした描写を読んでいると、不思議なことに、
本当に食欲が湧いてくるのです。人間の脳はとても面白く、視覚や想像でも食欲が刺激されます。

例えば

  • 料理番組を見る
  • 食べ物の写真を見る
  • おいしそうな描写を読む

これだけでも脳の食欲中枢は反応します。つまり、この作品は文学でありながら、
脳の食欲中枢を刺激する本とも言えるのです。

2.料理は「栄養」ではなく「記憶」でできている

認知症の外来をしていると、よくこんな場面に出会います。

家族:「最近ほとんど会話できないんです」
家族:「記憶もほとんどなくて…」

しかしその患者さんに「昔好きだった料理」を聞くと、突然話が出てくることがあります。

「母ちゃんの味噌汁はな…」
「若いころ食べたカツ丼がな…」

料理は単なる栄養ではありません。料理は記憶なのです。

匂い。味。温度。食卓の風景。それらはすべて、脳の中の記憶と深く結びついています。この点は医学的にも知られており、嗅覚と記憶は脳の同じ領域(海馬周辺)と強く関係しています。

だからこそ、

  • 懐かしい匂い
  • 家庭料理
  • 思い出の味

は、記憶を呼び起こす力を持っています。『神様の定食屋』はまさにその点を、
物語として見事に描いています。

3.料理に込められた「人の思い」

この物語のもう一つの魅力は、料理=人の思いとして描かれている点です。料理は単なる技術ではありません。

同じレシピでも

  • 誰が作るか
  • 誰のために作るか

で味は変わります。私は外来でよく、こんな話を聞きます。「おばあちゃんが作る味噌汁が一番おいしい」理由を聞くと、材料でも技術でもなく、思い出なのです。


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・子供のころの食卓
・家族で食べた時間
・誰かが作ってくれた温かさ

これらすべてが味の一部になります。『神様の定食屋』は、料理が人の心をつなぐという、とても大切なテーマを優しく描いています。

4.高齢者医療と「食べる力」

認知症医療の現場で、実は非常に重要なテーマがあります。

それは食べる力です。

高齢者の健康は、

  • 食べる
  • 動く
  • 人と話す

この三つで大きく左右されます。

そして最も最初に落ちるのが、食欲です。食欲が落ちると

  • 体力低下
  • フレイル
  • 認知機能低下

が一気に進みます。だからこそ医療現場では、「何を食べるか」よりも「食べたいと思えるか」を重視します。その意味で、この作品はとても興味深い。読んでいるだけで食欲が刺激されるからです。文学としても楽しく、健康の視点でも意味のある作品だと感じました。

5.心を満たす食事

現代はとても便利な時代です。コンビニ。冷凍食品。デリバリー。いつでも簡単に食べ物は手に入ります。しかしその一方で、食事の意味は少しずつ変わってきました。

食事は本来

  • 栄養補給
  • 家族の時間
  • 人とのつながり

という役割を持っています。『神様の定食屋』は、この忘れかけた価値を思い出させてくれます。食事とは体を満たすだけでなく、心を満たすものなのだと。

6.まとめ

神様の定食屋は、

  • 食欲を刺激する料理描写
  • 人の思いが込められた物語
  • 心を温めるエピソード

が見事に組み合わさった作品です。そして医師として感じたのは、食べることは生きることだという当たり前の事実でした。料理は栄養だけではありません。記憶であり、思い出であり、人と人をつなぐものです。

もし最近、

  • 食事を急いで済ませている
  • 誰かと食べる時間が減った

そんな方がいれば、この本を読んでみてください。きっと本を閉じたあと、
こう思うはずです。「今日はゆっくりご飯を食べよう」と。そしてそれは、健康にも、人生にも、
きっと良い影響をもたらしてくれるはずです。

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