認知症患者さんの「内縁」関係・相続や生命保険の注意点は・FP資格を持つ認知症専門医が解説

認知症患者さんの「内縁」関係・相続や生命保険の注意点は・FP資格を持つ認知症専門医が解説

男女とも長生きをするようになった時代、外来患者さんの中にも「内縁関係」の方が増えてきました。「内縁」というと、何か意味ありげな雰囲気がありますが、現実は、普通のご夫婦と変わりはありません。印象としては、「とても仲が良い」という印象がある程度です

ただし、認知症を専門とする当院では、「内縁関係」である一人は、認知症です。そのため、通常の「内縁関係の男女」とは異なり、注意すべき点があります。今回の記事では、FP資格をもつ認知症専門医である長谷川嘉哉が、「内縁関係の男女」が気を付けるべきことをご紹介します。

1.内縁関係とは?

内縁関係に、法律上の定義はありませんが、一般的には、婚姻届けを出さずに、法律上結婚した夫婦と同様の関係を営む男女を言います。「事実婚」と呼ぶこともあります。近年では、高齢化に伴い、配偶者を失くした高齢の男女が法律上結婚せずに、内縁関係を選択することが増えてきています。

やはり高齢になると、それぞれに子供や孫もいるため、相続問題などを回避するために結婚には踏み切れない方が多いようです。但し、法律上の男女には認められる権利も、内縁関係では認められないことがありますので注意が必要です。

なお、法律上には、言葉の定義があるのでご紹介します。

  • 婚姻:男女の婚姻意思が合致して夫婦となる身分行為。婚姻には事実上婚姻意思が合致している事実婚と婚姻届が提出される法律婚の2つがあります
  • 結婚:法律婚をすること
  • 入籍:他の人の戸籍に入ること。結婚と同義で用いられることが多い

2.内縁関係でも受けられる権利と義務

内縁関係の男女には、基本的に婚姻の意志と、夫婦の実態はあるため、以下の権利と義務は、認められています。

  • 内縁の妻は、夫の社会保険の被扶養者になる権利があります。そのため、遺族年金の支給を受けることも可能です。
  • 権利と同様に義務も発生します。扶養の義務、婚姻費用(生活費)の分担義務、事実婚解消時の財産分与などが長谷氏します。

なお、上記の権利と義務を主張するには、同性していた事実を証明する必要があります。そのためには、内縁関係が分かるような記載が必要です。この場合は、男女のどちらかが住民票の世帯主となり、片方を「夫(未届)」又は「妻(未届)」と記載します。

3.内縁関係によるデメリットは

内縁関係は、法律上の結婚に比べ以下のようなデメリットがあります。

3-1.法定相続人にならない

内縁関係では、相手方の法定相続人になりません。そのため、相手が死亡しても遺産を受け取ることができません。私の患者さんの中にも、一生懸命介護して、看取りまでしたのち、実の子供さんから、一銭のお金ももらえず、住んでいた家を追い出されてしまった方もいらっしゃいます。

3-2.各種税金の控除が受けられない

年金制度は、同居の実態に合わせ権利がありますが、税法上は内縁関係は、配偶者として認められません。従って、配偶者控除や配偶者特別控除などの税金の優遇は受けられません。同様に、法律婚の場合に認められる、相続税・贈与税の特例や控除は、内縁関係では受けることができません。

4.内縁関係のパートナーのために

互いのパートナーに自分の財産を残すには、以下のような対策が必要です。


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4-1.生前贈与

贈与については、生前から毎年、行っておくと有効です。年間110万円以下であれば贈与税はかかりません。逆に、110万円を超える贈与を行い、贈与税を支払うことで税務署に贈与の証拠を残すことができます。例えば、111万円を贈与すると、贈与税は1000円になります。さらに贈与契約書も作成しておくと、税務署に否認されるリスクは軽減します。

4-2.遺贈

遺贈とは、遺言で一定の財産を特定の者に対して、譲り渡すことを遺言書に記すことで、その財産を処分することです。ただし、他にも子供などの相続人がいる場合は、争いを避けるために、遺留分以外の財産を遺贈すると有効です。なお、内縁関係の場合、相続税控除などが受けられないため、相続税が高額になるため、納税資金も考慮する必要があります。

*遺留分:一定の法定相続人は、法律上「遺留分」として最低限度相続できる割合が決められている。この遺留分を侵害するような内容の遺贈だと、後々、法定相続人とトラブルになることがあります。

4-3.生命保険

一般的に生命保険の受け取りは、戸籍上の配偶者と二親等以内の血族である法定相続人と規定されています。ただし、一定の要件を満たさせば内縁関係でも受取人に指定して保険加入が認められる可能性があります。具体的要件については、保険会社さんに確認してみましょう。

5.遺言作成の注意

パートナーのためにも、遺言書による遺贈はとても大事です。但し、遺言作成時の認知機能についてはとても重要です。

認知症には、進行度によって判断能力に差があります。従って認知症の診断がつけば、絶対に遺言書が書けないわけではありません。軽度から中等度であれば遺言作成は可能です。具体的には、認知症の進行度を評価するMMSE(Mini Mental State Examination:ミニメンタルステート検査)が30点満点で20点以上であれば、遺言作成は有効です。

この点は、のちのち問題になることが多いため、認知症専門医の診察を受けて、「認知症ではない」という診断書をもらってからの遺言作成は相当に信憑性が高まると思われます。遺言と認知症については以下の記事も参考になさってください。

6.まとめ

  • 高齢化に伴い、配偶者を失った男女による「内縁関係の男女」が増えています。
  • 内縁関係の権利と義務を主張するためにも、住民表で内縁関係が分かるような記載が必要です。
  • 内縁関係の相手に、一定の財産を残すには、遺贈が有効です。
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