先日、住宅型有料老人ホーム“住ま居るメディカ”で筋委縮性側索硬化症(ALS)の患者さんを看取らせていただきました。苦しむこともない、穏やかな最後でした。しかし、患者さんの闘病経過を改めて見るととても複雑な思いとなりました。20年前に難病であるALSに罹患。その後、徐々に日常生活動作が落ち、ベッド上での寝たきり状態になりました。その後は、嚥下障害のため胃瘻を増設、さらに呼吸抑制により気管切開が施されました。こうなると自宅での生活は困難です。そのため、患者さんは3-6か月毎に病院を転院しながら闘病生活を続けられていたのです。
私が医師になった25年程前には、世の中に余裕があったためか神経内科の病棟に一人は長期入院のALSの患者さんが入院していたものです。しかし、現在ではそのようなことは許されません。急性期病院であれば1.5か月、慢性期病院でも3-6か月で退院を勧められます。何も、悪いことをして難病になったわけではありません。しかし、これがこの国の現状なのです。
そんな中で、岐阜県多治見市にある住宅型有料老人ホーム“住ま居るメディカ”は理想的な施設ともいえます。通常、住宅型有料老人ホームは“自宅である”という原則により、少しでも医療度が高くなると退所させられます。しかし、“住ま居るメディカ”は経営者自身が男性看護師であり、積極的に医療度の高い利用者を受け入れています。今回も、定期的な胃瘻や気管切開の交換は当院が担当し、日常の吸痰は“住ま居るメディカ”が対応してくれました。お蔭で患者さんも、最後の1年8か月は、転院の心配もなく穏やかな時間を過ごすことができました。
彼らは看護師としてもとても優秀です。そのうえで確実に利益も計算できる、優秀な経営者でもあります。これからの高齢化時代を変えていくのは、彼らのような、経営センスを持った職人だと思います。当グループも少しでも彼らのお手伝いができるよう協力してきたいと思います。