重なる悩み事・悩んだら書き出せ!書き出せば脳がたちまち冴えわたる

重なる悩み事・悩んだら書き出せ!書き出せば脳がたちまち冴えわたる

私が、スタッフが退職する際に贈る言葉があります。「人生にはいろいろな困り事が起こります。不思議とその困り事はまとめて起こります。そんな時は、ぜひ紙に書きだしてください」です。患者さんなどを診ていると、「なぜ今、重なるの?」と思うほど、病気、介護、進学等の困り事が重なります。

そうなると、頭の中はパニックになって、いつもできていたことも出来なくなります。そのため、さらなる問題が発生。頭だけでなく体も悲鳴を上げてしまいます。

そんな時に、困り事をすべて紙に書き出してみると、不思議なことに頭が整理され、次から次へ解決策が浮かんできます。まさに、「書き出せば脳がたちまち冴えわたる」です。実は、その理由は脳の働きからすれば当たり前です。今回の記事では、月に1,000人の認知症患者さんを診る脳神経内科専門医の長谷川嘉哉が、「悩んだら書き出す」ことの効果を解説します。

1.人生の困り事はなぜ重なる?

困り事はなぜ重なるのでしょうか? 一般的に人生の困りごとは、「親の介護・病気」、「自分自身や配偶者の健康」、「子供の教育問題」、「仕事」などです。自分自身が50歳になれば、当然両親は高齢です。もちろん配偶者もそれなりの年になり、子供たちは学生・就職と問題満載です。そこに自らの仕事の問題も加わるのです。

考えてみれば、50歳前後になれば、人生の困りごとは重なることが普通と考えるべきなのです。

2.困り事が重なるとなぜパニックになる?

困り事が重なるとなぜパニックになるのでしょうか? 困り事には脳の前頭葉が対応します。その時の前頭葉の働きをワーキングメモリーと言います。

2-1.ワーキングメモリーの処理能力には限界があり、加齢とともに少なくなる

ワーキングメモリが同時に処理することのできる情報は意外と少なく、せいぜい5つから7つ前後。その処理能力も加齢により衰えていき、50歳代になると最盛期に比べて30%ほど低下すると言われています。つまり、50歳代であれば同時に処理できる情報は、5つ程度なのです。

2-2.処理能力をこえるとパニック

例えば父親に介護が必要になって、介護に疲れた母親も病気。そこに二人の子供の就職問題と受験が重なり、そんな時に限って、仕事の問題がいくつも重なると、簡単に5つ程度のワーキングメモリは手一杯になります。まさに、パニックなってしまうのです。

2-3.ワーキングメモリーの解放が必要

ワーキングメモリが手一杯になれば、さらに新たな情報を処理することはできなくなり、問題がさらに大きくなってしまいます。その時に、我々がやるべきことは「ワーキングメモリの解放」なのです。

The brain is filled with water
脳に情報を詰め込みすぎると溢れ出てしまいます

3.書き出す効能

ワーキングメモリを解放するもっとも簡単で効果的な方法は、「紙に書きだすこと」です。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


3-1.俯瞰できる

とにかく困りごとをすべて紙に書き出します。そうして、紙全体に書かれた困りごとを眺めてみましょう。それは、まさに俯瞰(ふかん)です。俯瞰とは、「高いところから見下ろす」という意味で、山の頂上から下界を見下ろすような、または鳥になって街全体を見渡すイメージです。俯瞰すると、パニックの原因となっている困り事は、思いのほか少ないことに気が付きます。

3-2.対策が考えられる

思いのほか少ないことが分かれば、次は優先順位をつけて、対策を考えます。そうすると、何ともならない困り事は、さらに少ないことが分かるのです。

3-3.精神が安定する

困りごとを俯瞰して、その数が思いのほか少ないことが分かり、何ともならない困り事はさらに少ないことが分かると、不安や怒りといった感情も治まってきます。精神が安定すると、さらに脳が冴えわたり新しいアイデアが出てくるのです。

Smart serious man focusing on his work
気持ちを落ちつけるためにも書き出してみましょう

4.書き出してからの具体的方法

書き出してからは、具体的には以下の方法でワーキングメモリを開放します。

4-1.すぐやる

困り事を書き出したら、できる事はすぐにやりましょう。困り事と思っていたものが、電話一本で解決することもあるのです。外来で「とりあえず介護申請をしましょう」とアドバイスしたのに、1か月後の診察でも「忙しくて介護申請していません」という方がいます。介護申請などすぐにできることです。こんなことで、ワーキングメモリーを一つ使っているのはもったいないのです。

4-2.任せる

ワーキングメモリを開放するための最も簡単な方法は、「他人に任せる」です。ワーキングメモリが一杯になってパニックになる人は、一人で抱え込む傾向があります。時には、人に頼る勇気を持つことも大事です。

4-3.肩の力を抜いて集中する

すぐにできなくて、任せることもできない事柄に、集中しましょう。その際も、できる事を、できる範囲で行うぐらいに、肩の力を抜いて臨みましょう。外来でも、介護うつになる方ほど、真面目に取り組みすぎる傾向があります。しかし、肩の力を抜いた方が、脳が冴えて、新たな対応策は浮かんでくるものなのです。

5.まとめ

  • 人生の困り事は、まとめて起こることが普通です。
  • そんな困り事を処理する、ワーキングは同時に5つほどの情報しか処理できません。
  • ノートに書き出すことで、ワーキングメモリを解放すれば、脳はたちまり冴えわたります。
error: Content is protected !!
長谷川嘉哉監修シリーズ