子供さんの『スマホ内斜視』に注意 脳神経内科専門医が解説

子供さんの『スマホ内斜視』に注意 脳神経内科専門医が解説

先日、若い女性を診察する機会がありました。主訴は全く別物でしたが、目の動きが気になりました。脳神経内科医は習慣的に、目の動きや瞳孔には注意をむけます。頭痛や頭部外傷の際に、医師は必ず患者さんの目の動きをチェックするほど重要なものなのです。

しかし、今回のケースは単純な内斜視です。ご家族に確認すると以前には異常はなかったとのこと。どうも最近起こった現象のようです。調べると、これは「スマホ内斜視」といって最近増えている疾患のようです。今回の記事では、脳神経内科専門医である長谷川嘉哉が「スマホ斜視」について解説します。

1.斜視とは?

通常、物を見る際は、右と左の両方の目が対象とする方向に向きます。しかし、片方の目が対象物をみようとする際に、もう片方の目が対象物を違う方向を向くことを斜視と言います。子供では斜視は2%ほどにみられます。斜視は、目が向いてしまう位置によって、内斜視、外斜視、上斜視、下斜視に分けられます。

2.スマホ内斜視とは?

目を動かす筋肉は上直筋、下直筋、内直筋、外直筋、上斜筋、下斜筋の6種類あります。その中で目を内側に向ける筋肉は「内直筋」と言います。スマホ内斜視では、内直筋の動きが強くなり、目の位置がずれることで発症します。

物を見る際、30cmより近くのものを見る際は、目を寄せて(=輻輳)、ピントを合わせます(=調整)。長時間スマホを見ていると輻輳と調整のバランスが崩れてしまい、目を内側によせる刺激が強くなります。結果、内直筋の力が強くなり、「スマホ内斜視」がおこるのです。

症状には2つあり1つは目が内側に寄ること、もう一つがものが二重に見える「複視」です。

3.多い年代は?

日本弱視斜視学会は、6〜36歳までの急性内斜視患者を「12歳以下」「13〜18歳」「18〜36歳」の3群に分けて調査を実施。この3群の人数比はおよそ1:1:1であり、全体で見ると10代の患者が非常に多いことが分かっています。中でも小学5〜6年生や中学生の発症者が多く、スマホを買い与えられる時期と重なっているのではないかと推測されています。

そもそも目を内側に寄せる力は幼少期の方が強いため、目が内側に寄った状態に適応しやすいためと考えられています。逆に大人になると目を外側に向ける力が強くなるため「スマホ内斜視」にはなりにくいのです。

4.治療法は?

スマホやパソコンを長時間使用している患者さんの場合、使用している時間の制限だけで斜視の角度が緩やかになり症状が治ることもあります。しかし、時間制限だけで治らない場合や複視が常に残る場合は以下の治療がおこわわれます。


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4-1.プリズム治療

光を曲げる膜(これをプリズムと言います)を組み込んだ眼鏡を使用する治療法です。この眼鏡をかけ続けることで複視や内斜視が改善されます。

4-2.斜視手術

内直筋の位置を外科手術でずらし、目を元の位置に戻します。斜視の角度が強い場合に有効です。

5.「スマホ急性内斜視」になりやすい生活習慣

スマホ斜視になりやすい人には以下のような生活習慣があるようです。

  • 1日3〜4時間以上、スマホなどを使っている
  • 30cm以下の近距離でスマホを見ている
  • 間違った姿勢でスマホを使っている
  • スマホなどのディスプレイが暗い
  • SNSやゲームに集中して視線をあまり動かさない

6.鑑別診断も大事

急に起こる内斜視の原因にはデジタル機器使用以外のものもあるので、眼位に急に異常が起こった場合はまず眼科や脳神経内科医を受診してください。

突然内斜視が出現した場合は、眼の動き以外にも瞳孔の状態のチェックも必要です。結果によっては、頭部CT、さらには頭部MRIも必要になる場合があります。

7.まずは気が付くことが重要

まずは周囲の方が気が付くことが大事です。子どもが映った写真で両目の見ている方向が異なっていたり、片側の目が内側によっていないか気を付けてみてください。また子供さん自身が「物が2つ見える」と言ったりしたときはすぐに受診をしてください。

8.まとめ

  • 10歳代の子供さんに、突然発症する「内斜視」の方が増えています。
  • 原因としては、長時間スマホを近くでみることによる「スマホ斜視」と言われています。
  • スマホ斜視になりやすい生活習慣は避けるようにしましょう。
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