言葉が出てこない!記憶と単語を結びつける専門医推薦の改善法7選

言葉が出てこない!記憶と単語を結びつける専門医推薦の改善法7選
2017-10-23

「あの、昔すごく流行った、あの芸能人、名前は何だっけ、最近またよくテレビに出てるほら、あの、誰でも知ってるでしょ…」

「昨日あれに行ってきたの、あれを診てもらいに。そうしたらあれはなんともなくて、あっちのほうを検査したほうがいいって言われて…」

「○○君、ちょっとあれをあれしてほしいんだけど、あれ、と言ったらあれだよ、あのこと…」

皆さんのまわりでよくあるできごとだと思います。このように言葉が出てこないことを心配されている方が大勢います。

以前は、40歳を超えるとよく訴えるフレーズでしたが、近年では20歳代の方からも聞かれます。詳しく聞くと「覚えているはずだが、単語としてうまく出てこない」とのこと。

こういう方は「何となく脳の機能が落ちていっていて、早く認知症になるのではないか」と心配しているのです。どうやら脳の中にはしっかり保存されているのに、言いたい言葉とうまくリンクしない、引き出せないことで困っているのです。

実は、その問題には年齢にかかわらず前頭葉機能が関係しています。今回は、前頭葉機能のメカニズムを知りながら、「言葉が出てこない」ことへの対策法をご紹介します。

目次

1.言葉が出てこないメカニズム

brain-anatomy1
脳の構造
brain-anatomy2
海馬は深層部にあります

言葉が思いだせない原因には「前頭葉機能低下」が深くかかわっているのです。

実は脳の「言葉を入れて引き出す」機能を大まかに分類すると、情報をインプットする『記銘力』と、情報をアウトプットする『想起力』に分けられます。

記銘の際には脳の中の海馬が関与し,想起に際しては両側の前頭葉が関与しています。つまり、おぼえたことを上手に想起できるようにするには前頭葉が十分に働くことが必要なのです。

ちなみに、前頭葉は脳の社長と言われます。理由は、すべての決定に関与するからです。ルーチンワークはせずに、重要案件に限って参加することからも、まさに社長的存在です。一方で、海馬は資料室といえるかもしれません。

2.前頭葉機能とは?

認知症の外来では、常に前頭葉機能と側頭葉機能を分けて診察しています。側頭葉は海馬よりもさらに長期記憶に関係している部分です。認知機能が低下する場合、前頭葉機能の低下から始まり、その後側頭葉機能が落ちていきます。

一般的には、前頭葉による想起力(アウトプット)の低下から始まって、側頭葉による記銘力(インプット)が低下していくのです。認知症の診断がつくころには、想起力も記銘力も低下していることが多いのです。

つまり、『言葉が思い出せない』は年齢に関わらず、前頭葉機能低下が疑われ、放置すれば認知症につながる可能性もあるのです。ここではその前頭葉が脳内でどのような役割をはたしているか、イメージをしていただきます。

2−1.本棚のラベル

図書館を思い出してみてください。館内には莫大な量の本が収蔵されています。その中から物を探し出そうとするときに、やみくもに探しても本は見つかりません。図書館の本は、項目ごとにラベリングされています。そのため本を見つける最初の一歩は、探している本についたラベルの棚の前に立つことです。そのラベルを付ける役目が、前頭葉と言えるのです。ちなみに、本棚自体は側頭葉と言えます。つまり、認知症が進行すると本棚が崩れて本がバラバラなっているとイメージしてください。

2−2.旅の行程表

例えば、『数年前に出かけた旅行の話をしてください』と質問されたとします。いきなり、質問されても正確に答えることはできません。しかし、そこに旅の行程表があったらどうでしょうか?  「この場所のこの景色は素晴らしかった」、「ここで食べたものは美味しかった」、「ここで誰々が集合に遅れそうになった」など、次から次へ記憶が言葉になって思い出されます。この際の、行程表の役割こそが前頭葉機能なのです。

3.前頭葉機能を低下させる原因

前頭葉機能は、言葉を思い出すために重要な働きをしています。世の中には、前頭葉の機能を低下させる原因がいくつかありますので、ご紹介します。

3−1.加齢

残念ながら30歳を超えると、前頭葉機能は徐々に低下します。この原因としては、20歳を超えると、1日10万個の脳の神経細胞が失われることも一因です。

しかし、1日10万というと凄い数と思われがちですが、1年では、3650万個。60年では3650万個×60年=21.9億個です。しかし、脳全体では千数百億個の神経細胞がありますので、神経細胞の減少には十分耐えれます。実は、加齢によって前頭葉機能が低下する原因は、神経細胞の減少よりも、生活習慣の積み重ねによる脳の機能低下が重要になります。

3−2.ストレス

過剰なストレスとは、交感神経が過剰興奮している状態をいいます。つまり、脳がオーバーヒート気味になっているといえます。この状態では、前頭葉機能はスムーズに働くことができません。

3−3.睡眠不足

徹夜をしたり、睡眠不足の状態が続くと、ボーッとしてうまく頭が回らなくなります。睡眠不足の日が何日か続くと、明らかに前頭葉機能が衰えることが分かっています。それどころか、慢性的な睡眠不足は将来の認知症にもつながる事が報告されています。

4.スマホの過剰依存が前頭葉機能を低下させる

Vietnamese play pokemon go on motorbike
便利な先進技術も、依存しすぎるとデメリットをもたらします

 


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平成29年10月16日の朝日新聞の記事で、『高速道路の誤進入20歳代が最多』という記事が出ていました。本来、高速道路に入るつもりのない歩行者やバイクや自転車で高速道路に間違って侵入してしまうようです。

この件数が、認知能力が低下した高齢者でなく20歳代が最多というから驚きです。記事の中では、“スマホアプリの誤誘導が原因”と結論付けられていましたが、本当にそうでしょうか? いくらアプリが誤誘導したとしても、自分の目で見て判断をすれば、高速道路の間違って侵入するとは考えられません。これは、あまりにスマホに依存しすぎて、自身の頭を全く使っていないことで起こっているのではないでしょうか? スマホは有効に使えば、衰えた機能を外部脳として補うことができます。しかし、過剰に依存すると、自身の前頭葉の機能をも低下させてしまう恐れがあるようです。

5.生活習慣を見つめなおそう

これだけ年齢に関わらず、言葉が出てこない人が増えている原因には生活習慣が考えられます。改めて生活習慣を見直してみませんか?

5−1.思い出そうとしているか

そもそも、日常生活で物を覚えて、思い出しているでしょうか? 以前は、自宅の電話番号だけでなく、友達、会社、レストラン棟の名前や電話番号も記憶して、思い出していました。最近は、自宅の電話番号でさえ思い出す機会がありません。このような生活習慣は、間違いなく前頭葉機能の低下につながっているのです。「あれ、あれ」で済ませずに、なるべくわかりやすく伝えられるように頑張ってみましょう。

5−2.インプット以上にアウトプットしているか?

最近は情報過多です。日々の生活でも一方的に、インプットされる情報にあふれています。前頭葉機能は、情報をアウトプットするときに働きます。アウトプットする機会が減ることで、前頭葉機能は徐々に低下してしまうのです。

5−3.学生時代のように書いて覚えているか?

歳をとって記憶が落ちたのではなく、子供の頃と比べて復習が少なすぎるともいえます。学生時代、試験の前には、紙に書いて覚えたものです。書くという行為は、まさに情報のアウトプットです。情報を海馬にインプットしながら、その情報をアウトプットするために前頭葉機能を働かせる。バランスよく脳を使っていたわけです。

5.具体的な対策とは

ここでは、言葉が出てこない原因となる前頭葉機能を改善させる具体的な方法を紹介します。

5−1.「言葉がでてこなかったノート」を作る

Artist hands drawing in blank copybook free space
書くという行為だけで記憶の定着化が図られます

「言葉が出てこなかったノート」とは、思い出せなくて格闘の末、思い出した単語を記載するだけのものです。ノートに記載される単語が増えてくると不思議と、傾向がわかるものです。そもそも、思い出せなかったものは、人名、本・映画の題名、お店の名前に集約されます。つまり、言葉の内容や意味が思い出せないわけでなく単純に、名称だけが思い出せないのです。

例えば、私がどうしても苗字が覚えられない(思い出せない)スタッフがいました。なぜ、覚えられないかと言えば、子供のころから現在に至るまで、一度もその苗字の方の知り合いがいなかったからです。そのうえ、非常勤であったため仕事上の接点が少なかった・・つまり、名前という単語以外に関連するタグが少なかったのです。

逆に、人生で初めて出会った苗字でもそれ自体に強烈なインパクトがあって一緒に仕事をする機会が多ければ多くのタグ付けが行われ、認識できてしまうから不思議なものです。

こうした“言葉が出てこなかったノート”を時々見返していると自分自身の“記憶の弱点”が補正されることになります。受験でいえば、苦手科目の底上げにつながり、総合点を引き上げるようなものです。これは、“言葉が出てこなかった”を減らすには抜群の効果があります。

その上、言葉を思い出せなかったストレスが、ノートに記載する“心地良さ”につながるだけでも有効です。言葉が出てこないことが増えてきた皆さん、「言葉が出てこなかったノート」は相当にお薦めです!

5−2.「記憶のフック」を意識しよう

記憶のフックとは、記憶が引き出しやすいように、他のものに関連付けましょう、ということです。

最近では極めて初期の段階で受診をされる方が増えてきています。その方々の特徴は、前頭葉機能だけが落ちている。つまり、想起力が落ちているのです。彼らの特徴は、見た目は全く異常がなく日常生活も自立しているのです。

先日も前頭葉機能が落ちている患者さんが、午前中に俳句の会に行かれました。そこで、ご家族が、『午前中どこに行ってきたの?』と質問したところ、『どこも言っていない』と答えたそうです。家族としては、直前の記憶が失われていることをとても残念がられていました。

しかし、この患者さんは認知症ではありません。前頭葉機能が落ちているのです。そこで、自分が、『○○さん、俳句の会に行かれたそうですね?』と質問すると、『はい、行ってきました。三色の蓮の花がとても綺麗で、こんな句を詠みました』と報告してくれたのです。

つまり、自分の質問が前頭葉の記憶のフックを刺激したのです。側頭葉に収められた記憶は保たれているので、あとはスムーズに答えが出てきたのです。

5−3.アウトプットすることを前提に、情報をインプットしていく

ある著者の方の言葉です。物知りだから本を書くのではない。本を書くから物知りになっていく。本を書くという行為は新しい情報をインプットしながら、文章にします。その際に多くの付帯情報もセットで覚える事になります。つまり、すべてアウトプットを前提に、情報をインプットするのです。結果、本というかたちでスムーズに、想起力が発揮されるのです。

ですから、“言葉が出ない”で悩まれる方は、常日頃から言葉を出すことを前提に記銘していくことが大事なのです。例えば、初めて名刺交換をした方とは、会話の中で意図的に相手の名前を何度も呼ぶ、付帯情報として出身地、役職、外見等を覚えます。前頭葉が記憶に多くのフックを付けることで、不思議と脳全体で定着するようになるのです。

6.注意すべき疾患とは

ごくまれに「言葉が出てこない」症状の中に、重大な疾患が隠されていることがあります。ご紹介します。

6−1.脳梗塞

小渕首相が記者会見の際に、言葉が出なくなり、その後脳梗塞でお亡くなりなったことを覚えていらっしゃいますか? ある特定の言葉がでてこないのであれば、前頭葉の機能低下で説明できます。しかし、言葉自体が出てこない、つまりしゃべることができない場合は、優位半球の脳梗塞の前兆である可能性があります。神経内科や脳神経外科に受診して、頭部のMRAで血管の狭窄等を否定してもらう必要があります。

6−2.若年性アルツハイマー

言葉が出てこないだけでなく、記銘力も低下してきた場合。つまり、前頭葉機能だけでなく側頭葉機能まで低下してきた場合は、認知症を疑いましょう。仕事でも支障が出てきた場合は、65歳未満の方であっても若年性アルツハイマーの可能性も否定できません。神経内科の受診をお勧めします。

7.まとめ

  • 年齢に関わらず、言葉が出てこない原因には前頭葉機能が関わっています。
  • 前頭葉機能の低下の原因は、加齢以上に環境因子が関わっています。
  • ときに、重大な病気が隠れていることがあります。第三者からも指摘されるようにあれば専門医を受診しましょう
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