医師が断言!インフルエンザワクチン効果と「必ず打つべき人と理由」

医師が断言!インフルエンザワクチン効果と「必ず打つべき人と理由」
2018-01-22

毎年、冬場になるとインフルエンザワクチンが話題になります。そして、「インフルエンザワクチンは効果あるの?」「インフルエンザワクチンは接種する必要があるの?」「型が違えば、効果がないのでは?」といった議論が溢れます。

インフルエンザはこの病気そのものも大きな影響を与えますが、さらに怖いものが合併症です。今回の記事では、インフルエンザワクチンが発症率だけでなく、合併症も軽減させることの重要性をお伝えします。

現在接種は任意ですが、このワクチンの効果を考えると、必ず打つべき人が明確になるのです。その対象についても説明していますので、お知りになりたい方はぜひ参考になさってください。

目次

1.インフルエンザワクチンとは。種類が複数あるの?

人間の身体には、ウイルスに感染するとそのウイルスを排除する働きをもった物質(抗体)を作り、次に同じウイルスが入ってきても感染症になりにくくする「免疫」という働きがあります。この働きを利用するのが、ワクチン接種です。

1-1.ワクチンタイプの決定

インフルエンザウイルスには様々なタイプがあり、流行するタイプが毎年異なります。世界での流行状況からどのタイプがはやるのかを世界保健機関(WHO)が予測し、それに基づいて日本の研究機関でも検討してワクチンのタイプを決定します。

特に指定がない場合は、厚生労働省が認可した4価ワクチン1種類が接種されます。

●国内で広く用いられている4価ワクチンとは
現在国内で広く用いられているインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスA型株(H1N1株とH3N2株の2種類)及びB型株(山形系統株とビクトリア系統株の2種類)のそれぞれを培養して製造されているため、「4価ワクチン」と呼ばれています。2018〜19年度は、流行予想や製造供給体制を検討して、
A型株
A/シンガポール/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09 ※昨年と同様
A/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)(H3N2)B型株
B/プーケット/3073/2013(山形系統)※昨年と同様
B/メリーランド/15/2016(NYMC BX-69A)(ビクトリア系統)
となりました。

1-2.タイプが外れても効かないことはない

「インフルエンザはタイプが外れたら効かない」と誤解されている方が少なくありません。

確かにインフルエンザは流行するタイプが毎年変わり、その予測の当たりはずれはあります。ですがその予想が外れてしまっても、50~60%は予防効果があったと報告されています。効果は薄れてはしまいますが、それなりの効果は期待できるのです。

1-3.ワクチンによってインフルエンザにはならない

「予防接種をしたらインフルエンザにかかってしまう」という誤解をされている方もいらっしゃいます。インフルエンザは不活化ワクチンですから、感染力はまったくありません。ウイルスの死骸を入れているようなものですから、インフルエンザに感染してしまうことはないのです。

但し、私自身もそうなんですが、元々免疫力が高くて元気な人は、接種後に熱っぽくなる方がいらっしゃいます。しかし、一晩の安静で改善しますので心配はありません。

研究イメージ
膨大な研究からワクチンには効果があると結論づけられています

2.インフルエンザワクチンに効果はあるのか

毎年、「ワクチンに意味がないから厚生労働省は集団接種をやめた」とか、「WHOがインフルエンザワクチンは効果がないことを認めた」という類いの噂がネット上でありますが、それは噂にすぎず、本当ではありません。

2-1.大規模な研究による統計処理で確認されている

インフルエンザワクチンには効果があり、接種を毎年受けた方がいいということは、厚生労働省やアメリカの疾病対策センター(CDC)で報告されています。WHOも発症や重症化を防ぐにはインフルエンザワクチンが最も効果的だと公表しています。

実は、私が以前働いていた病院で厚生労働省のインフルエンザワクチンの大規模な研究が行われていました。特別養護老人ホームに入所されている方をワクチンを接種した群と接種しなかった群に分け、発症・合併症について調べました。さらに、年度を分け、ワクチンは1回で良いのか、2回必要なのかを検討。同様の研究を全国各地で行い、「高齢者の場合は、1回のワクチン接種でインフルエンザの発症を抑え、合併症を減らす」という結果が得られたのです。

2-2.感染は防げないが発症を抑える

ワクチンを理解する場合に感染と発症は分けて考える必要があります。インフルエンザワクチンを接種してもウイルスが身体に入り込むことは防げません。気道にウイルスが侵入してくると、それを防御するのは粘膜免疫になります。これを突破されると、身体に侵入してしまいます。

つまり、インフルエンザワクチンを接種していても、一度はインフルエンザウイルスに「感染」してしまうのです。ですがワクチンの効果はここから発揮され、免疫のスイッチがすぐさま入ってやっつけてしまいます。結果、発症を抑えることができるのです。

しかし、小児や高齢者のように免疫の働きが不十分だと、たとえワクチンを接種していても症状が生じてしまいます。ですがその症状は、予防接種をしなかった場合よりも軽減されるのです。

2-3.経験談の寄せ集めはエビデンスではない

以前にもご紹介しましたが、個人の経験談はエビデンスにはならないことを知っておいてください。統計において個人の経験は何のエビデンスにはなりません。ワクチンを接種したが発症したという話は、コマーシャル等で良く見られる「これは個人の感想です」と同レベルの話なのです。

情報の見極め方は別記事にて詳しくお伝えしていますので、参考にしてみてください

3.インフルエンザワクチンを接種すべき理由

毎年のように、このような議論がなされます。ワクチンの効果はあくまで確率論です。

3-1.罹患の可能性が減り、かかっても重篤化が防げる

赤信号で交差点に進入しても、必ず事故が起こるわけではありません。逆に、青信号で交差点に侵入しても事故にあうことはあるわけです。ただし、青信号に従った方が、事故にあう可能性が低くはなります。同様に、インフルエンザワクチンを接種したほうが、発症する確率も合併症も軽減できることは大規模な研究結果で間違いはありません。


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3-2.合併症の可能性も下げる

過去にインフルエンザ大流行での多くの死亡は、細菌の二次感染による肺炎によるものであったとされています。つまり、インフルエンザは合併症に特に注意すべき疾患なのです。ワクチンは、発症率を下げるだけでなく合併症の頻度も下げるのです。

3-3.罹患前に対処する考え方が重要

「かかってもどうせすぐ効く薬があるし…」とお考えではないですか?

現在、抗インフルエンザ薬にはタミフルやリレンザ、イナビルがあります。発症後に服薬すると一定の効果はあります。しかし、最近では同一シーズンにインフルエンザのA型が治ったあとに、再びB型に感染する人が増えています。

この原因が、抗ウイルス薬による抗体形成の不十分さによるのではないかと言われています。つまり、感染が起こった時にウイルスが薬で除去されることで、十分な抗体が体内で形成されないうちにいったんは治癒してしまうのです。

やはり、免疫機能を考えても、前もってワクチンによる抗体でウイルスを退治する方が確実と思われます。

実際に罹患してしまうと、高熱は一日で落ち着いたとしても、5日間は学校や仕事を休まねばなりません。その可能性を排除しておきましょう。

4.ワクチンを接種すべき人とは

インフルエンザワクチンは積極的な接種が必要な方がいらっしゃいます。

4-1.高齢者

65歳以上の高齢者60~64歳で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に障害を有する人(身体障害者手帳1級程度)は、国が接種を強く推奨する「定期接種」の対象になっています。ワクチンで強い副反応が出たことがある人以外は、接種がお勧めです。

Doctor Giving Male Patient Injection
高齢者はインフルエンザ にかかると、寿命に大きく関わります

4-2.小児の親と高齢者の介護者

乳幼児や高齢者、基礎疾患のある人が外出してインフルエンザに罹患することはあまりありません。どちらかというと、家族が持ち込むことが大半です。集団免疫の考えから、家族が予防接種を受けることで間接的に発生防ぎます。

集団免疫とは、ある疾患へ免疫を持つ人物によって、集団内での疾患拡散が防がれ、結果としてその集団で免疫を持たない人物が感染から守られるという間接的な効果を指す。

4-3.教員など感染を拡大させてしまう可能性がある人

医療・介護関係者は、免疫力の弱った人たちと接するため、インフルエンザワクチンの接種が推奨されています。しかし、教員の予防接種率の低さは困りものです。毎年、インフルエンザに感染した教員を診察する機会が多々あります。予防接種をしていないような教師の元に、自分の子供を通わせたくはないものです。

集団の中心的人物にはぜひ予防接種して欲しいものです

5.インフルエンザワクチンの効果的な接種方法は

お子さんでは免疫が未熟なため、ワクチンの効果もつきにくいのです。そのため、2回行う必要があります。ちなみに生後6か月までは、お母さんからの免疫が残っているためインフルエンザにはかかりにくいといわれています。

大人であれば、すでに免疫が一度作られているため、一度の予防接種で十分な免疫がつきます。時々、2回を希望される患者さんがいますが、1回で十分なことは研究で証明されています。

6.ワクチン予防効果の持続期間は

インフルエンザワクチンの効果の発現と持続時間には個人差があります。一般的にはインフルエンザワクチン接種後2週間目頃から5カ月間程度効果が持続するとされています。

しかし、これにはからくりがあります。厚生省の班会議の研究でも、ワクチン接種前、接種後4週間、8週間しか抗体価の採血は行いませんでした。そのため、9週間以後、どこまで抗体がついているかは不明なのです。

ちなみに、当院で毎年ワクチンを接種してもインフルエンザにかかるスタッフが2名いました。そのため、ワクチンを接種する前に抗体価を測定したところ、前年の接種後1年を経ていても十分な抗体価が認められました。

体内にインフルエンザ 抗体があっても、かかる人はかかってしまう、という例です。

7.罹患の場合、診断書は不要にして欲しい

学生さんの場合、インフルエンザと診断すると、比較的簡単な診断書を学校に提出して、公休となります。一方、就労している成人の場合、会社等への連絡は、口頭で『病院でインフルエンザと診断された』と伝えれば、了解いただけるケースが殆どです。しかし、なかには診断書の提出を強く求める企業があります。

インフルエンザ患者さんがあふれる外来で、それぞれに診断書を作成する事は労力を要するだけでなく、患者さんへの費用負担も生じます。多くの企業さんには、社員の言葉を信じて診断書を求めることのないように希望します。

8.まとめ

  • インフルエンザワクチンは発症を100%なくすことはできませんが、発症率を下げ、合併症を減らす有効性は証明されています。
  • ワクチンを接種したから発症したという個人の体験は、エビデンスではありません。
  • 個人だけでなく感染を拡大させないという観点からもぜひ接種をしてください。特に学校の先生には強く望みます。
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