介護職の給与はなぜ低い?介護事業特有の理由を解説

介護職の給与はなぜ低い?介護事業特有の理由を解説

一度でも、身内を介護施設に入所させた経験のある方なら、介護の現場で働く人たちの大変さに気が付くものです。仕事の内容は、「きつい・汚い・危険」のまさに、3Kの典型の仕事です。その上、給与も一般の仕事に比べ安いと言われています。しかし、仕事自体は、多くの方から感謝される本当に崇高なものです。ならば、なぜ給与が低いのでしょうか? 『会社が暴利をむさぼって、職員に還元していないのでは?』と思われている人もいるようです。これは全くの誤りで、介護事業特有の厳しい現実があるのです。今回の記事では、介護事業の経営者でもある長谷川嘉哉が「介護職の給与が低い理由」について解説します。

1.介護の売上はどうやって決まる

介護保険サービスを提供した際の収入は以下のように決まります。

1-1.保険売上

介護保険の場合は、すべてのサービスの単価は国が決めています。そのため、企業努力では何ともなりません。というより、毎回改訂のたびに、単価が減ることが多く、これで給与を増やせと言われても不可能です。

1-2.保険外の売上

保険の単価が決まっていれば、それ以外の保険外の費用を徴収することも一案です。当グループでも、600万円かけて導入したパワーリハビリの機械の利用料を徴収したところ監査で否認されました。その際の担当者の言葉は、「個人的には徴収させてあげたいが、法律的には無理です」ということでした。

1-3.利用者数

ならば、利用者を増やすしかありません。しかし介護事業の場合は、定員も国が決めています。つまり、企業努力をどれだけしても、売上には限界があるのです。

2.労働生産性を上げられない

ビジネスの世界では、一人の労働者がどれだけの利益を上げたかの労働生産性が重視されます。。当然、介護事業でも労働生産性を上げたいと考えています。そのため、業務を効率化することで、少ない人数で運営することを考えます。しかし、介護事業の場合は、利用者さんに対する従業員の人数まで規定されているのです。これでは、労働生産性を上げたくても上げることができないのです。

3.介護職の給与を決めているのは「国」

つまり介護事業は、単価、定員も、働く人の人数、さらに保険外の負担額もすべて国に管理されているのです。結果、どれだけ経営努力をしても一人あたりの粗利益は、年間で5〜600万円が限界です。そこから給与を支払えば、年間3〜400万が限界なのです。もちろん会社には売上に貢献しない間接人員も必要です。そのため、実際にはさらに給与に充てる額は少なくなります。つまり『介護職員の給与は低い!』を決めているのは国なのです。日本の労働生産性は先進国の中でも低いほうにあり、国家規模で問題視されていますが、介護業界の労働生産性が低いのは、国が低く設定しているからなのです。

4.処遇改善加算は画期的な制度

ただし、介護報酬を増やしても、その使い道を事業所に任せていては、すべてが給与に反映されません。その点、2012年から運用が開始された処遇改善加算は優れた制度です。この制度は、処遇改善加算で請求した額を、全額職員の給与にのみ利用できるのです。そのため、介護サービスの業種によりますが、年収ベースで5~15%は増えているのです。この制度自体は優れた制度なのですが、以下の問題点があります。

  • もともとの給与ベースが低いので、10%増えてもそれほどの年収にならない
  • 事務作業が煩雑なため、処遇改善加算自体を申請していない事業所がある
  • 不正請求により、スタッフに還元していない事業所も存在する
  • 処遇改善加算は一時的な政策で、いつまで継続されるかわからない

処遇改善加算については、以下の記事も参考になさってください。


当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


5.介護報酬の、1か月早い入金も効果的

介護事業を経営しているものとすると、理想は介護報酬を上げてもらうことです。しかし、今の国の財政を考えると、大幅な増額は期待できません。ならば、保険請求の入金を早めてもらうだけでも効果はあります。現行では、介護報酬は国保連に請求しても入金は2か月後です。これが1か月後になるだけでも運転資金を減らすことができ、劇的にキャッシュフローが改善します。

6.給与以上の、介護職の働きがいも

確かに、介護職は慢性的人手不足、低賃金、重労働と言われています。しかし、介護職は、お金をいただくのに感謝してもらえる素晴らしい仕事です。

以前、介護サービスも同時に提供することになったタクシーの運転手さんの話を聞いたことがあります。当初は、通常の運転業務に介護まで行うことに抵抗感があったようです。しかし、実際に初めて見ると多くの利用者様に感謝され、とてもやりがいが出てきたそうです。

聞くと、タクシーの運転手さんは、酔っぱらったお客さんから罵声を浴びせられたり、ときには料金を投げつけられることさえあったそうです。それでも、黙ってお客さんには頭を下げるしかないのです。

それに対して介護職は、日々利用者様から感謝の言葉をいただくことができるのです。こんな素晴らしい仕事は、世の中には少ないものなのです。それ以外にも、介護職には多くもメリットがあります。詳しくは以下の記事も参考になさってください。

7.まとめ

  • 介護事業所の、収入は国の介護報酬ですべて決まっています。
  • 事業所の企業努力で、生産性を上げることはできないため、介護職の給与が低いのは、国の考えによるのです。
  • 処遇改善加算も優れた制度ですが、他の職種並みの給与水準になるには不十分です。
error: Content is protected !!