糖質中毒(糖質依存)は、麻薬中毒? 原因と対策を専門医が解説

糖質中毒(糖質依存)は、麻薬中毒? 原因と対策を専門医が解説

糖尿病患者さんを診ていると、異常なまでに糖質に依存している方が多いことに驚きます。先日も、糖尿病のコントロールがあまりにひどいので、食事記録をお願いしたところ、頑なに間食の内容を言わないのです。説得したうえ、聞き出すと、間食での糖質量の多さに驚きました。そして、糖質を減らすことを指導すると、「そんなことは絶対できません」と、とりあってもくれません。

患者さんが糖質の摂取に固執するには理由があります。実は、糖質には、とても強い「依存性」があるのです。そのため糖質を減らすことは、禁煙をすると同じ、またはそれ以上に困難なことなのです。今回の記事では、自ら血糖値スパイクを持つ総合内科専門医の長谷川嘉哉が、糖質中毒・糖質依存について原因と対策について解説します。

1.糖質はなぜ依存性が高いのか?

糖質の依存性が高いことには以下のような理由があります。

1-1.進化の過程で甘いものを好むようにプログラミング

糖を求めるのは、脳自身なのです。何しろ、脳細胞はグルコースを燃料としています。しかし、進化の過程においては、その糖を十分に摂取することが困難でした。そのため、貴重な糖をできるだけ摂取するために、進化の過程で甘いものを好むようにプログラミングされたのです。しかし、現在においては、あまりにも簡単に、そして過剰に糖を摂取できるようになったため、多くの弊害が出ているのです。

1-2.脳の報酬系を活性化

摂取した糖は、さらに依存性を生む働きをします。具体的には、舌が糖分を感じると、脳の報酬系ホルモンであるドーパミンを活性化させてしまうのです。ドーパミンが活性化されると達成感や満足感を感じることになり、これらの行動を繰り返したくなるのです。これはまさに、薬物乱用の働きに近いものなのです。

1-3.血糖値が下がると、さらに食べたくなる

糖を摂取すると、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは、グルコースや脂肪酸などの高カロリー物質を蓄えるようにシグナルを送ります。その結果、血液中のカロリーレベルが低下、脳は燃料が足りないと判断します。そのため、空腹レベルが急激に上昇して、エネルギー源として糖質を欲するのです。つまり、食べても食べても、甘いものがもっともっと欲しくなるのです。まさに、糖質摂取の悪のスパイラルと言えます。

2.糖質はなぜ減らさないといけないか?

人間の進化の過程で、これほどに大量の糖質を摂取することに人間の身体は対応できていません。そのため、糖質を過剰摂取していると、以下のような弊害をもたらします。

2-1.糖尿病のリスクが高まる

もっとも、怖いのが糖尿病です。糖尿病の患者数は、予備軍も含めると2000万人とされています。糖尿病は、動脈硬化性変化を進行させ、脳血管障害、虚血性心疾患を起こしやすくします。さらに、認知症においては、アルツハイマー型認知症と血管性認知症のいずれの原因となります。糖尿病自体でも、網膜症による失明、腎症による透析、神経障害による切断などにつながります。

Close-up medical syringe with a vaccine.
糖質依存は、糖尿病のリスクを高め、既往症の方の病状を悪化させます

2-2.活動パフォーマンスを落とす

過剰な血糖を摂取すると血糖が急激に上昇します。そうなるとインスリンの働きで血糖を急激に下げることになります。このような、血糖の急激な変化は、倦怠感、眠気、過剰な空腹感につながり、仕事や学習の効率を落とすことにつながります。

2-3.加齢を早める

余分な糖があると、体内のタンパク質や脂質と結びついて、AGE(Advanced Glycation End Products)を作り出してしまいます。AGEは、老化促進物質であり、見た目として肌のシワやくすみ、シミなどとなって現れます。さらには、髪のハリやツヤまでがなくなってしまうのです。

さらに、AGEは、動脈硬化や白内障、アルツハイマーとの関連も指摘されているのです。


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3.糖への依存性を減らすには?

糖質への依存性を減らすには、糖分を減らすことが第一です。糖分を減らせば脳は再適応して、それほど欲しがらなくなるのです。そのために、以下のような方法がお薦めです。

3-1.一日に一食、糖質をとらない

誤解して欲しくないのですが、糖質を摂るなということではありません。1日の3回の食事のうち、1回は、米、パン、麺、パスタといった糖質を摂らないようにすることです。「そんなことは無理」と思う方が多いのですが、個人的には最も簡単です。朝食で糖質を抜く場合は、パンやご飯を食べずに、おかずだけ食べる感じです。コーヒーとパンだけの朝食よりは、かえってバランスが良くなります。

Woman on dieting for good health concept, young women use hands to push fried chicken and choose to eat vegetables for good health.
一食は糖質を摂らないことをお勧めします

3-2.おかずで、満腹にする

これは、夕食で糖質を抜く際に使える方法です。おかずを中心に食べて、ご飯などの糖質を減らすか、抜くかで対応します。言い換えると、「居酒屋メニュー」です。居酒屋で、おつまみに含まれる糖質は少なめなのです。ただし、この場合、締めのお茶づけやラーメンはNGです。

3-3.アルコールは、ウイスキーと焼酎で

アルコールを接種する場合は、糖質が多く含まれている、ビールや日本酒は避けましょう。代わりに、ウイスキー、焼酎、ワインがお薦めです。

3-4.野菜を摂取する

食事の際は、野菜を必ず摂取するようにしましょう。特に、食事の前に野菜を食べる、「ベジファースト」がお薦めです。先に、野菜を食べることで、食後の血糖の上昇を防ぐことができるのです。

3-5.おやつ(間食)ではなく、食後のデザートとする

出来れば、甘いものは避けたいものですが、完全に断つことは不可能な方が多いと思います。そんな時に、お薦めなのが、10時や15時といった間食は避けることです。同じものを食べるにしても、食後のデザートとして食べるほうが、血糖の上昇を抑えることができます。特に15時に糖質の多い間食をとると、血糖が上昇。下がりきる前に夕食になり、長時間血糖値が高い状態が続いてしまうのです。

3-6.口さみしくなったらナッツ

どうしても、10時や15時ごろに口さみしくなったら、ナッツ類がお薦めです。私は、以下のナッツを愛用しています。食塩・植物油不使用で、素材本来の味が楽しめます。

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4.まとめ

  • 糖質は、脳の働きからも、薬物中毒並みの依存性があります。
  • 糖質の過剰摂取は、病気・加齢・合併症などとも恐ろしいものです。
  • 糖分を減らせば脳は再適応して、それほど欲しがらなくなるのです。
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