インフルエンザが脳梗塞、心筋梗塞、認知症を引き起こす理由

インフルエンザが脳梗塞、心筋梗塞、認知症を引き起こす理由

インフルエンザが流行る時期になってきました。インフルエンザは、普通の風邪と異なり突然38度以上の発熱、筋肉痛、倦怠感が出現します。そのため年齢を問わず、患者さんは苦痛を訴えます。医師になって30年の私でも、患者さんを診るたびに怖い病気と感じるほどです。

実はこのインフルエンザ。一時的な症状にとどまらず、脳血管障害や心筋梗塞、さらには認知症まで引き起こすことがわかっています。今回の記事では、脳神経内科専門医の長谷川嘉哉がインフルエンザにかかることでリスクが高まる合併症についてご紹介します。

目次

1.インフルエンザが血管をつまりやすくする

インフルエンザは、風邪様の感染症であるため呼吸器系にのみ影響を受けると考えがちです。

しかし、インフルエンザの感染では、免疫反応により血管にも炎症が起こるのです。炎症により血管の内側(=内皮)に傷がつくと血の塊(=血栓)ができやすくなるのです。その上、インフルエンザ発症中は、高熱と脱水が起きやすく、このことにより血液はより固まりやすい状態になってます。

つまり、インフルエンザ感染によって、血管と血液の両者ともが血管が詰まりやすい状態が起きているのです。

Human heart angioplasty
血管に炎症が起こると、腫れてつまりやすくなります

2.脳梗塞の頻度を増やす

我々、脳神経内科専門医は、インフルエンザだけでなく感染症で脳梗塞が誘発されることは経験的に知っています。そんな経験を実証する研究結果を、2019年2月の国際脳卒中学会で米コロンビア大学が報告しました。

その研究結果は

脳梗塞になった男女約3万人を調査したところ、インフルエンザになって15日間にわたり、脳梗塞リスクが約40%も上昇した。しかも、その影響は最大で1年間継続した

というものでした。

Elderly woman falling down at home ,hearth attack.
インフルエンザになると、その後一年間はリスクが高いままです。かからないことが最も重要です

3.心筋梗塞の頻度を増やす

脳の血管だけでなく、心臓の血管にも注意が必要です。インフルエンザの感染がストレスとなって心臓に血液を供給する冠血管が痙攣し、狭心症や心筋梗塞を発症するのです。2018年の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」は、「インフルエンザと診断されて1週間以内で心筋梗塞になるリスクが6倍に跳ね上がる」との論文を掲載しました。この研究ではA型の発症リスク増大可能性はは5倍、B型では10倍と報告しています。インフルエンザの型によってそのリスクが変わることも明らかになったのです。

我々が通常外来で診察する場合、インフルエンザA型の方がB型よりも重症度が高い感じがします。しかし、心筋梗塞のリスクは、B型で多くなる点は、興味深いものです。


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4.インフルエンザが認知症の引き金になる、とは

認知症専門外来では、インフルエンザ自体は治癒しても、それをきっかけに認知症を発症しする患者さんがいらっしゃいます。以下のような原因が考えられます。

4-1.高熱による脱水が血管性認知症のリスクを増やす

脱水は認知機能に悪影響を及ぼします。例えば夏場の熱中症による脱水をきっかけに認知症を発症することもあります。インフルエンザ感染も同様に、高熱による脱水になることで、脳の血管に影響を与え血管性認知症のリスクを高めるのです。

4-2.入院による環境変化がアルツハイマー型認知症!

インフルエンザにより、全身状態が悪化すると食事や水分が摂れなくなることがあります。そうなると、自宅での療養は困難なため、入院による補液・全身管理が必要になります。ある一定の年齢を超えての環境変化は、アルツハイマー型認知症の誘因になることがあるのです。

5.高齢者のインフルエンザ脳症は生命的危険を及ぼす

インフルエンザは、脳梗塞、心筋梗塞、認知症を引き起こすだけでなく、脳症をも引き起こします、通常、インフルエンザ脳症というと小児を思い浮かべますが、10〜35%は成人でも認められます。

その上、死亡例は、0~4歳では6.9%、5~19歳では4.9%ですが、20~59歳では9.7%、60歳以上では15.2%と報告されています。つまり成人例は、小児よりも頻度が少なくても、命に関わるほどの重症例が多いことが分かっています。

6.インフルエンザの予防方法は

インフルエンザは毎年流行するため、ありふれた病気のように感じている人もいるかもしれません。しかし、ご紹介したように合併症も含め怖い病気です。以下のような予防が大事です。

6-1.日常生活でできる予防法

完全な予防法がないため、日常での生活が重要です。

  • 規則的な生活をして、栄養・休養を摂って、抵抗力を高める
  • ウイルスとの接触を避けるために人ごみを避ける
  • ウイルスは、低温、低湿度を好むため、適度な室温、湿度を保つ
  • 外出後は、手洗い、うがいを

6-2.ワクチン接種

インフルエンザワクチンは発症を100%なくすことはできませんが、発症率を下げ、合併症を減らす有効性は証明されています。65歳を超えた高齢者の方には、必ず接種してもらいたいものです。詳しくは、以下の記事も参考になさってください。

7.まとめ

  • インフルエンザは、呼吸器系だけでなく脳梗塞、心筋梗塞、認知症を引き起こします。「
  • インフルエンザ脳症の成人例は、小児よりも頻度が少なくても、命に関わるほどの重症例が多いです。
  • インフルエンザ予防のためには、高齢者には必ず予防接種をするべきです。
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