正しい介護認定が介護の基本・区分変更申請が大事な理由を専門医が解説

正しい介護認定が介護の基本・区分変更申請が大事な理由を専門医が解説

介護保険サービスを利用するためには、最初に介護度の認定が必要です。認定後は、その段階に応じた介護サービスの利用が可能となります。通常は、半年から3年毎に再調査が行われ、そのときの介護度が認定されていきます。しかし、認定期間中でも状態が悪化して、より介護の必要性が高まった場合は、介護度の変更が可能です。このような、介護度の途中変更を、区分変更申請と言います。

今回の記事では、ケアマネ資格をもつ認知症専門医の長谷川嘉哉が、患者さんや家族のためには、介護度の区分変更申請が必要な理由を解説します。

目次

1.区分変更申請とは?

介護をしていると、介護認定を受けた時に比べて、認知症が進行したり、運動機能が低下することがあります。「もっと介護サービスを受けたい」、「施設入所も考えたい」、「今の介護度では低すぎないか?」と思われることはよくあることです。しかし、介護保険証をみると、介護認定有効期間が切れるのは、まだ随分先。そういったことが良くあります。

そんなときの制度が、区分変更申請です。介護認定有効期間中であっても、申請をすることで介護度の変更が可能となります。

Nursing care level in Japan by wooden blocks
要介護1や3の認定には壁があると言われますが、黙っていても変更されません

2.どんな時に区分変更申請を考えるか

通常は、区分変更申請は以下のような時に考えます。

2-1.状態が悪化した場合

介護認定は、身体介護と認知症介護の度合いで認定します。従って、足腰が弱って運動機能が低下して身体介護が必要になった時。認知症が進行して、目が離せなくなったなど認知症介護が必要になった場合には、区分変更申請を考えます。

2-2.介護認定に不服の場合

介護認定の調査を受けた場合に、その介護度が明らかに低く出ることが結構あります。そんな時には、本当は「審査請求(不服申立て)」をすることがルールです。しかし、審査請求(不服申立て)とは、ある意味、「お上にたてつく」ことになります。実際、市町村も良い顔をしません。そこで、現場ではいったん介護度を承ってから、すぐに区分変更申請を行います。そうすると、本当は何も変わっていないのですが、2/3程度のケースでは介護度が上がるのです。以下の記事も参考になさってください。

2-3.入院を機に

入院を機に認知機能や身体機能が悪化することは多々あります。状態がある程度落ち着いて、退院が決まれば、早急に区分変更を行いましょう。但し、入院直後のように状態が安定していない状態では、介護認定自体が不可能ですから、状態の安定を待ちましょう。

3.積極的に区分変更申請を勧める理由

私は、ご家族に強く区分変更申請を勧めなかったことで後悔したことが何度もあります。私の経験からすると、常に介護度は正しいものをつけておくべきです。その理由は、以下になります。

3-1.介護者の突然の病気やケガ

ご家族によっては、「現状のサービスで満足しているので、状態が悪くなっても区分変更申請は不要」と言われる方もいらっしゃいます。しかし、介護者の突然の病気やケガで、介護環境が変わることがあります。例えば、運動機能が低下し本当は介護度3レベルなのに、介護度が1のままであったとします。そんな時に、介護者が病気で倒れて、介護ができなくなった。そんな時に、正しい介護度の3がついていれば、特養も対象になりますが、介護度が1では入所施設が限られます。そうなると、改めて区分変更申請が必要になります。その時には、そんな時間的余裕はありません。患者さんの実態よりも低い介護度しかついていないと、突然の介護環境の変化に対応することができないのです。

3-2.介護は先手を打った対応が大事

介護者の病気やケガ以外にも、要介護者の状態がさらに悪化する可能性もあるのです。そのために、正しい介護度をつけて、ときには入所の申し込みをしておく。そんな、先手を打った対応が必要です。不思議と利用者さんを診ていると、先手を打って上手に介護をされるご家族と、後手に回って介護に苦労されるご家族に分かれているものです。

4.区分変更の方法

手続きは、決して難しいものではありません。区分変更手続きは原則として本人、親族が市町村の役所の介護保険課で行います。市町村によって必要書類が異なりますので、確認してから出かけましょう。ケアマネが代行してくれるケースも多いので、相談してみましょう。


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ただし、区分変更をして、必ず介護度が上がるわけではありません。認定調査の際には必ず家族が同席して、困っている点をキチンと調査員に伝えることが大事です。時には、メモに書いて渡してあげると親切です。

5.区分変更、誰が切り出すの?

介護保険の区分変更に主治医の意見書が必須です。そのため、区分変更に際して、意見書作成を主治医にお願いする必要があります。以下の3パターンになります。

5-1.家族から

当たり前ですが、ご家族からの依頼が最も多くなります。介護負担が重くなってきて、「本当にこの介護度?」、「もっと重い介護度では?」、「介護度が上がれば入所もできるのに?」といった疑問が出てきます。しかし、中には介護度の変更ができる事を知らずに我慢されている方もいらっしゃいます。

5-2.主治医が提案

困っているご家族に対して、主治医が「区分変更」を提案してあげられるとスマートです。しかし、残念ながら多くの医師は介護保険の知識が乏しく、自ら「区分変更」の提案することは少ないようです。逆に、「区分変更」をお願いすると、「現在の介護度が適正です」と言い切ってしまう医師もいるので困ったものです。

5-3.ケアマネからお願い

「家族もどうしてよいか分からない」、「主治医も理解してくれない」、そんな時に、頼りになるのはケアマネです。正直、患者さんの状態と、正しい介護度を最も理解しているのはケアマネです。ケアマネに相談して、時には主治医に手紙なり、診察に同伴してもらって「区分変更」をお願いしてもらえれば、さすがに主治医も対応してくれるものです。それでも対応してくれないような医師は、そもそも主治医の変更も考えるべきです

6.区分変更申請を拒むもの

ご紹介したように区分変更をとても大事な制度です。しかし、残念ながら区分変更申請に抵抗する人も5で紹介した人と同じなのです。

6-1.家族自身

それほど、強い意志でなく、「何となく面倒くさい」程度で、区分変更をされないご家族もいらっしゃいます。多くの場合は、その後介護環境に変化があった場合に正しい介護度がついていないことで困る方が多いようです。

6-2.医師

医師は、一枚でも診断書を書きたくないようです。私自身は、毎月60〜70枚の主治医の意見書を書いていますので、数枚増えても気になりません。しかし、多くの医師は、主治医の意見書が10枚を超えると、ストレスを感じてしまうようです。そうなると、「区分変更届」にも素直に応じてくれないようです。

6-3.ケアマネ

本来は、積極的に気が付いて区分変更を提案してくれるべきケアマネが、逆に抵抗勢力になることもあります。「介護度が上がると介護サービスの1割負担の額が上がる」、「もう数か月で介護度の有効期限が来るからもう少し待ちませんか?」、「区分変更しても介護度が変わらないかも?」といった理由で、積極的に動いてくれないことがあります。しかし、正し介護度をつけることは、安心した介護生活を送るためも必須です。あまりに動きの悪いケアマネは変更も考えましょう。以下の記事も参考になさってください。

7.まとめ

  • 要介護者の認知機能や運動機能が低下した場合は、介護度の有効期限内でも区分変更が可能です。
  • 区分変更の際には、家族やケアマネから主治医に意見書をお願いしましょう。
  • 安心した介護生活を送るには、常に正しい介護度をつけておくことが大事です。
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