行政(お役所)に相談する人は、なぜ介護で苦労するのか?

行政(お役所)に相談する人は、なぜ介護で苦労するのか?

認知症専門外来をやっていると、介護で苦労するご家族にいくつかの特徴があることが分かります。その特徴の一つが、「行政(お役所)に相談する」です。私の経験から言って、行政(お役所)に相談するメリットはあまりなく、相談しないことよりもデメリットさえあります。口癖のように「行政(お役所)に相談します」を繰り返されたご家族は、不思議と介護で苦労されているように思えます。今回の記事は、ケアマネ資格をもつ専門医の長谷川嘉哉が、行政(お役所)に相談する人が介護で苦労する理由をご紹介します。

目次

1.行政(お役所)に相談するご家族の特徴とは

すぐに、「行政(お役所)に相談します」とおっしゃるご家族には、以下のような特徴があります。

1-1.思考停止している

行政(お役所)に相談されるご家族は、何度も「私は、介護の事がよく分からないので」と言い訳をします。しかし、介護の事をよくわかっている家族は殆どいません。それでも多くの方は自ら考えることで工夫しているのです。行政(お役所)に相談することは、思考停止の証明でもあるのです。

1-2.自分で調べない

今の時代、調べる気になれば、ネットでも相当の情報を手にすることができます。しかし、行政(お役所)に相談されるご家族は、自ら調べる努力をしません。安易に行政(お役所)に相談するということは、自ら調べない証明でもあるのです。

1-3.依存的気質がある

行政(お役所)に相談されるご家族は、誰かが何とかしてくれると思っています。資本主義は、自ら努力しても、困っている人に対しては手助けをするものです。思考停止して、自ら調べることもない家族を誰かが助けてくれることはありません。行政(お役所)に相談することは、依存性の証明でもあるのです。

Old man see the female doctor
本当に困っているなら自ら切り開くしかありません

2.行政(お役所)が教えてくれる情報は大したものはない理由

そもそも、行政(お役所)の窓口で手に入る情報は大したものではありません。

2-1.基本的には平等の立場

行政(お役所)は平等の立場である必要があります。特定の人にだけ、特別な情報を教えることはできません。そのため、どうしても表面的な情報しか伝えられません。ある意味、ネットで集められる情報を超えることはないのです。

2-2.正しい情報を伝えられない

行政(お役所)には、良い情報も悪い情報も入ってきます。だからと言って、良い情報を伝えることは、特定の介護事業所への利益供与になります。逆に悪い情報を伝えることは、介護事業所への営業妨害につながります。そのため本当に役に立つ情報はなかなか得られません。このように行政(お役所)から、正しい情報を得ることは難しいのです。

2-3.深く関われない

介護に困っているご家族はたくさんいらっしゃいます。そのため、行政(お役所)は特定の人にだけ深く関わることはできないのです。

Frowning woman in office
本音や本当の情報を聞くことはなかなか難しいものです

3.行政(お役所)に相談した結果、どうなる?

私の外来でも、行政(お役所)に積極的に相談した家族は以下のような負のスパイラルに陥って、かえって介護に苦労しています。

3-1.すべての対応がゆっくり

行政(お役所)に相談した方は、一度では終わることなく、何度も相談に行かれます。しかし、何回相談しても、場当たり的で、解決につながりません。結果、解決にもつながらない対応で時間だけ無駄に過ぎていくのです。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


3-2.優秀なケアマネは紹介してもらえない

家族の介護負担は、ケアマネによって大きく変わります。行政(お役所)では、公平性のため優秀なケアを紹介することはできません。ご家族に一覧表を渡し、「選んでください」というだけです。これでは、優秀なケアマネにあたることは、くじ引きのようなものです。私の外来で聞いていただければ、公平性など気にせず、優秀なケアマネをご紹介できるのですが…。

3-3.社協・地域包括への誘導?

何も紹介してくれないならまだ良いのです。しかし言葉巧みに、公務員の天下り先である社会福祉協議会や同じ役所内の地域包括支援センターに紹介されることもあります。これらは民間のようにサービスに対する競争がありませんから、介護で苦労する可能性が高くなるのです。

4.「行政(お役所)に相談しない」という選択肢と対応方法

行政(お役所)に相談しないならどうすれば良いのでしょうか?

4-1.自らの情報を探す

まずは、自分の頭で考え、ネットなどからの情報を真剣に集めましょう。介護の経験のあるご家族の情報などは特に貴重です。知り合いもフルに活用しましょう。同じ、行政(お役所)に相談するにしても、知り合いがいれば「本当の情報」を手に入れることも可能になります。

4-2.優秀なCMを探す

とにかく、優秀なケアマネの探すことが介護を楽にする近道です。そのために、介護経験のある家族からの紹介、主治医の先生からの紹介などを活用しましょう。優秀なケアマネの探し方には、以下の記事も参考になさってください。

4-3.行政(お役所)に頼み込む

実は、当院の初診の方で、「何で当院を知られましたか?」の質問に、「行政(お役所)からの紹介」という方がいらっしゃいます。「行政(お役所)が紹介?」と不思議に思って尋ねると、無理矢理頼み込んで聞き出したのこと。

具体的には、「認知症で本当に困っている。良い医療機関を教えてほしい」、「寝たきりで介護が大変だが、自宅でどうしても見たい」などと、必死に行政(お役所)に頼み込んだそうです。結果、窓口の担当者がこっそりと、当院を紹介してくれたそうです。クレーマーのようになっては営業妨害ですが、人情に訴えかけるのも一つの方法かもしれません。

5.まとめ

  • 安易に困ったら、行政(お役所)に相談という考え方は、介護で苦労します。
  • 行政(お役所)には悪気がなくても、正しい情報を伝えられない事情があるのです
  • 介護負担を減らすには、自らの情報網をフル活用して優秀なケアマネを見つけることが近道です。
長谷川嘉哉監修シリーズ