花粉症に小青竜湯!医師長谷川が自信をもってお勧めする効果と使い方

花粉症に小青竜湯!医師長谷川が自信をもってお勧めする効果と使い方

花粉症の季節になりました。流れるような鼻水、鼻詰まりは気分も良くありません。集中力も落ちて、勉強や仕事に支障が出ることもあります。薬を飲めばよいのですが、どこか薬には抵抗がある。そんな時にお勧めなのが漢方薬です。

漢方薬というとあまり効かないと思われがちですが、体質が合うと目を見張るような効果があります。私は、季節になると小青竜湯(しょうせいりゅうとう)を毎日服用して、ひどくなると抗ヒスタミン薬を服用するようにしています。これで、アレルギー性鼻炎はほぼコントロールできています。今回の記事では、総合内科専門医の長谷川嘉哉が小青竜湯についてご紹介します。ぜひ多くの方にも小青竜湯の恩恵を受けてもらいたいものです。

Sanbu-sugi Cedar
スギやヒノキの花粉が排気ガスの成分などと結びついてアレルギー物質になると考えられています

目次

1.小青竜湯の効果効能

「小青竜湯」は、くしゃみ、鼻水を伴うかぜや鼻炎、薄い水のようなたんを伴ったせきや、ゼーゼーと喘音がしたり、ゴロゴロとたんのつまった音を伴う気管支炎、気管支ぜんそく等に使われます。

報告では、花粉症の7割の人に有効とされています。その中でも鼻汁、くしゃみ、水様の痰などを伴う人には特に有効です。

小青竜湯の構成生薬は8種類が含まれています。薬理的に重要な役割をする「麻黄(マオウ)」には、交感神経刺激薬のエフェドリン類が含まれます。この成分は、西洋医学の気管支拡張薬と同様の作用を示し、咳やゼイゼイする喘鳴をおさえます。そのほか、おだやかな発汗・発散作用のある「桂皮(ケイヒ)」、痛みをやわらげる「芍薬(シャクヤク)」、咳やアレルギー症状をおさえる「半夏(ハンゲ)」「五味子(ゴミシ)」「細辛(サイシン)」などが含まれます。それ以外にも、「甘草(カンゾウ)」「乾姜(カンキョウ)」が含まれ、これらがいっしょに働くことで、効果を発揮します。

Sneezing woman
クシャミ、鼻水、目の痒みなどでお困りになる方が大勢います

2.小青竜湯の作用機序

漢方では、「症状緩和」よりも「体全体にはたらきかける」というところを重要視しています。小青竜湯は水分代謝を良くして体全体の調子を整えながら、鼻炎を改善していきます。

漢方では、体の中の余分な「水(すい)」が鼻炎の原因のひとつであると考えます。「水(すい)」とは体に必要なすべての水分のことで、体をうるおすものです。「水(すい)」は、体のさまざまな排泄経路から外に出されますが、その排泄がうまくいかない人では余分な「水(すい)」が体にたまっていきます。余分な「水(すい)」は体を冷やし、体を守る力を低下させるため、体内にアレルゲンが入りやすくなってしまうのです。

アレルゲンの刺激が体表をふさいで毛穴が閉じると、水分が十分に発散できなくなり、体の「水(すい)」がさらに増えてしまいます。すると、「水(すい)」はほかの通路から外に出ようとします。これが鼻からあふれたものが鼻水、たまったものが鼻づまりです。また、余分な「水(すい)」は「気」の流れをさまたげます。すると、「気」を動かそうとしてくしゃみが出ます。

気:目に見えないが人の体を支えるすべての原動力のようなもの

*水:飲食物中の水分を消化吸収によって人の体に必要な形にして体をうるおすもの

3.小青竜湯の処方例

小青竜湯は単独もしくは抗ヒスタミン薬と組み合わせて使用します。なお、抗ヒスタミン薬などの選択については以下の記事も参考になさってください。

3-1.小青竜湯単独

小青竜湯を単独で服用します。比較的症状が強い方は、症状が出る前からの服薬がお勧めです。ただし、小青竜湯は即効性もありますので、症状が出てからの服薬でも軽度の方であれば効果があります。

3-2.小青竜湯に抗ヒスタミン薬を追加する

私はこの方法です。通常は小青竜湯単独の服薬ですが、症状が強くなってきたら頓服で抗ヒスタミン剤を併用します。

*頓服(とんぷく):食後など決まった時間ではなく、発作時や症状のひどいときなどに薬を飲むことです。


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3-3.抗ヒスタミン薬に小青竜湯を追加する

花粉症の症状がとにかく強く、西洋薬であろうが漢方であろうがとにかく症状を抑えたい方は、抗ヒスタミン薬から服薬を開始します。その後、症状がコントロールできなくなった場合に小青竜湯を追加します。最初から抗ヒスタミン薬と小青竜湯を併用することも可能です。

4.小青竜湯は、お湯に溶いてがお勧め

漢方薬は服薬方法に少し注意が必要です。用法・用量は「通常、成人1日9gを2-3回に分割し、食前又は食間に服薬」とあります。ちなみに、食前服用とは食事の30分前、食間服用とは食後2時間以上経ってから次の食事の間とされています。

小青竜湯は1回の服薬量が多いため、お湯に溶いて飲むことがお勧めです。漢方薬の中には、小青竜湯だけでなく「葛根湯」(かっこんとう)や「小柴胡湯」(しょうさいことう)などのように「湯」の付くものがあります。これらのエキス剤は、お湯に溶かして飲んだ方が効果が大きいとされています。さらに漢方薬は、立ちのぼる蒸気に含まれる成分が鼻や口腔粘膜から素早く吸収される効果も期待されるのです。

5.小青竜湯が合う人

特に小青竜湯がお勧めな方がいらっしゃいます。

5-1.抗ヒスタミン薬で眠気が出る

花粉症に用いられる西洋薬としては、抗アレルギー剤があります。代表的なものは抗ヒスタミン剤で、鼻水や鼻閉感を取ってくれます。しかし、副作用に「眠気」があり、睡眠薬代わりに使っている方もおいでだと思います。

最近の、抗ヒスタミン薬はかなり副作用が軽減されていますが、どんなに弱い抗ヒスタミン剤でも、「眠気」が出る患者さんもいらっしゃいます。しかし、小青竜湯では「眠気」という副作用がないので、抗ヒスタミン剤に弱い方には、特に小青竜湯をお薦めします。

5-2.何となく薬は飲みたくない

花粉症はつらいが、薬を継続して飲むことには抵抗がある方です。実は、薬に警戒心を持たれる方は結構みえます。そんな方には、ぜひ小青竜湯をお勧めします。漢方薬でありながら、抗ヒスタミン薬に負けない効果がありますので、一度トライしてみてください。

6.副作用

小青竜湯は殆ど副作用はありません。但し、人によっては、胃の不快感や食欲不振、吐き気などを訴えます。また、動悸や不眠、発汗過多などもまれにみられます。症状が強い場合は、服薬を中止しましょう。大部分は、中止することで自然に改善します。

添付文書には、「偽アルドステロン症」といって、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫を生じたり血圧が上がってくることが記載されています。しかし、小青竜湯は、長期服用することはありませんので、殆ど心配ありません。

7.処方薬と市販薬の違い。満了処方とは

同じ小青竜湯でも、薬局で売っている漢方薬は、内容成分は同じですが、医師が処方する薬に比べ内容量が少なくなっているものがあります。市販の小青竜湯に含まれる生薬成分は、医療用の成分の2/3のものが多いようです。ちなみに医療用と同じ量の生薬を使っているものを、「満量処方」といいいます。少しでも花粉症を改善したい人は、市販で購入するなら「満量処方」がお勧めです。(販売価格は、満量処方のほうが高いことが多いようです。)

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8.まとめ

  • 花粉症の治療に、小青竜湯は効果的です。
  • 漢方薬ですから何となく薬は飲みたくない人にもお勧めです。
  • 症状の強い方は、抗ヒスタミン薬との併用も効果的です。
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