私は平日は、ウォーキングマシーンで40分、裸足で歩いてから外来に入ります。そして休日は緑の中をトレッキングしています。本書で全て肯定されたようで嬉しくなりました。「歩くと健康上、いいことが目白押しなのではない。そうではなくて、人類は歩かなくなったから、様々な不具合が起きている」は納得です。
- 人間の幸せは、 動物として快調かどうかにかかっている。
- その生きた心地というものは本来、身体感覚と密接に関わっている。
- 人間の生き物としての設計は、少なくとも 20 万年は変わっていない。
- 「歩けば答えがひらめいた」という経験をしたことがある人は、少なくないはずだ。歩行と思考はつながっている。そのことに、ジョブズも、ザッカーバーグも、気づいていたということではないだろうか。
- 歩行は脳を変化させる。しかも、歩行は創造性だけでなく記憶力にも影響を与える。
- よく歩くことで、この海馬の体積の減少ペースを抑えられるどころか、逆に鍛え抜かれて大きくなることが明らかになったのだ。
- ウォーキングによって増加した海馬の体積は、血液中のBDNF(脳由来神経栄養因子) と呼ばれる物質の増加と相関していた。
- 「15 分以上のウォーキングを週 3 回取り入れると、アルツハイマー病の発症率を 35〜 40%抑えられる
- 歩くことは、既存の枠にはまらない、 発散的な思考力を高めることにこそ効果がある
- 現代人の脳は、むしろ常に強い覚醒・ストレス状態にあり、「そもそも働きすぎている」というのが、宮崎教授が言いたかったことだ。そして、そうした現代人が自然に触れると、人としての本来あるべき姿に戻るのだ──と。逆にいえば、僕たちは普段、どうやって脳を効率よく働かせるか、ということばかりを考えすぎているのかもしれない。実際にはそれよりも、本来はリラックスさせることのほうが求められているのだ。
- 普段、人間は複雑なことを考え、頭が主導権を握っている。しかし山を歩くと全身を使い、身体優位へとシフトすることで、「日ごろ余裕のなかった頭が空っぽになるのです」。それは「脳が働く」というよりは、脳がクリアになることで、思考がすーっと整理されるということなのかもしれない。
- 創造性を高める方法を、本文で紹介した論文たちを基にまとめておこう。 ① 歩きながらアイデアを考える② 週に 3 回、 40 分のウォーキングを習慣化する ③ 定期的に自然の中を歩く
- 「座ることは新しい喫煙である」(Sitting is the new Smoking.)
- なによりショッキングな事実は、長時間の座位が続くと、どんなに運動を増やそうとも、そのリスクを相殺するのは難しいということだ。繰り返すが、「 どんなに運動を増やそうとも」である。
- アメリカでタバコを吸うのは成人の約 19・8%(約4920万人)であるのに対し、肥満はその 2 倍の 41・9%だ。
- 現代社会には 15 億台を超える自動車が存在するが、その稼働率はわずか 5%に過ぎないとも言われている。そのほとんどが遊休資産として、大半の時間、都市という貴重な空間を占拠して過ごしているということだ。
- マスクがいうロボタクシーが普及すれば、車両の稼働率は向上し、その遊休時間や都市の駐車場需要も減少して、都市空間の使い方は大きく変わりうる。
- 自動運転タクシーが普及すれば、必要な自動車の総数は 84%も削減され、駐車場の面積も 71%削減されるという
- 何も考えずに歩けるということは、素晴らしい神経系のなせる見事な技だ。残念なことに、事故や脳卒中を経験しなければ、これらのパターン化された動作や反射について考えることはまずない。
- チンパンジーは歩くのに人間の 2 倍のエネルギーを消費するという。だから長距離は歩けない。裏を返せば、人間がいかに効率的な長距離歩行者として進化してきたかを物語っている。
- 足の骨の数は左右合計でなんと 56 個。全身の骨がおよそ206個だから、その 4 分の 1 を足だけで占めている計算だ。
- アーチ(土踏まず)。走るときには体重の 2 倍の荷重が身体にかかるが、まるでバネのように作動して、その衝撃をアーチと足首だけで 54%も吸収する
- 圧力や振動、足底にかかる力の変化(傾斜など) といった機械的な刺激からの情報を脳に伝え、これに視覚などを融合させた膨大な情報を蓄積することで、僕たちの身体は倒れないようにバランスを取っている。
- 裸足で歩くと足の指が自然と広がり、身体の安定性が向上する
- つま先が狭いこと、靴の形に人間が合わせなければならないということ自体が、本来は不自然なのだ。 それはまさしく「 現代の纏足」
- 靴を履いた場合は、かかとで着地をする傾向が確認されたことだった。一方で、裸足の場合は親指の付け根や足の裏全体で着地することが多かった。
- かかとでの着地をすることの問題点は、足から脚にかけてのバネ機能が十分に活用されないことにある。特に、足裏のアーチがバネのように働き、衝撃を吸収してエネルギーを蓄える機能を果たすが、かかと着地ではこの機能が発揮されにくい。
- 私たち人間は、二本足で常に動き回る生き物です。ソファでテレビを見たり、ゲームをしたりするために生まれてきたわけじゃない
- 僕たちが自然の中を歩き続ける理由──それは座学では決して得られることのない、五感を総動員した学び、そして、苦痛、挫折、幸福のすべてだ。


認知症専門医として毎月1,000人の患者さんを外来診療する長谷川嘉哉。長年の経験と知識、最新の研究結果を元にした「認知症予防」のレポートPDFを無料で差し上げています。