メトホルミン(商品名メトグルコ)は単なる糖尿病薬ではない・・老化をも改善して、寿命も伸ばす?

メトホルミン(商品名メトグルコ)は単なる糖尿病薬ではない・・老化をも改善して、寿命も伸ばす?

糖尿病治療で60年以上使われているメトホルミン塩酸塩錠(商品名:メトグルコ)という薬があります。通常、薬というと多くの費用を投入した新薬の方が、優れていると思われがちです。しかし、メトホルミンは時代を経るごとに、糖尿病に対しての評価だけではなく、多くの新しい効果が報告なされています。その効果は、抗がん作用、抗老化作用、さらには寿命までも伸ばしてしまうのです。

今回の記事では、認知症専門医であり、自身が血糖値スパイクをもつ長谷川嘉哉が、メトホルミンの優れた効果についてご紹介します。

目次

1.メトホルミンとは?

メトホルミンは、糖尿病の薬です。肝臓で働いて、糖を分解して、体内に糖が放出されることを抑えます。さらに、腸管でブドウ糖の吸収を抑える働きがあります。その結果、血糖が上がりにくくなり、インスリンの分泌も抑制されます。インスリンは、脂肪を合成する働きもあるため、インスリンの分泌を抑制することで、脂肪の合成を抑え、結果として肥満も軽減させます。

なお日本では、高齢者や肝・腎障害のある方が、メトホルミンを服用すると、乳酸アシドーシスの危険があるため、処方されない時期がありました。しかし、その頻度は極めて低く、それ以上に得られる効果があるため、最近では積極的に糖尿病の第一選択薬として使われています。ただし、高齢者、軽度の腎機能障害、軽度~中等度の肝機能障害の患者さんの場合は、慎重に投与します。

2.糖尿病治療としても第一選択

メトホルミンは、糖尿病の治療としても以下の理由で第一選択になります。

2-1.薬価が低い

日本は、健康保険制度が充実しているため、薬の値段はあまり気にされませんが、世界的には、とても重要なことです。現在、先発品のメトホルミンは、500mgが先発品で14.4円、後発品が10.1円と極めて安価です。通常、500㎎を1日2回服用することが多いため、1日の薬価も20-30円で収まってしまうのです。

2-2.膵外作用が優れている

メトホルミンは、膵臓に作用して、インスリンの分泌を刺激する作用がありません。膵臓以外の幅広い作用機序で、血糖を下げる働きに優れているのです。結果、長期に使用しても膵臓を疲弊させる副作用も回避できるのです。

2-3.低血糖が起こりにくく、体重も増やさない

膵臓に作用して、インスリンに分泌を刺激しないため、低血糖の副作用も起こしにくく、さらに、体重を増加させることもありません。逆に、体重を減らす効果も認められているほどです。

3.抗がん作用

そもそも、糖尿病患者さんは、がんの発症リスクが高いことが知られていますが、メトホルミンは、糖尿病だけでなく、がんの発生を抑えるという報告例も多くされています。

特にすい臓がんについては、メトホルミンを服用している患者さんは、服用していない患者さんに比べ、62%リスクが低下したとの報告があります。同様の報告は、肺がん、大腸がん、乳がんでも抗がん効果の研究結果が報告されています。この理由の一つとしては、血中のインスリンの濃度を減らすことで、がん細胞の増殖が抑えられると考えられています。

4.心血管系のリスクを減らす

メトホルミンには、血管にダメージを与える活性酸素を減らす、抗酸化作用もあると考えられています。その結果、英国で行われた大規模研究「UKPDS」では、メトホルミンが他の治療薬に比べ、糖尿業患者さんの動脈硬化を予防して、心血管疾患の発症リスクを減らすことが確かめられました。


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5.認知症のリスクを減らす

メトホルミンには、神経保護効果の可能性も報告されています。通常、糖尿病患者さんは、認知機能障害や認知症のリスクが高くなることが分かっています。しかし、Samaras Kらは、「メトホルミン服用の糖尿病患者は、メトホルミン非服用患者よりも認知機能の低下が遅く、認知症の発症リスクが低かった。」ことを報告しています。

6.健康な人よりも、寿命を延ばす

それぞれの病気を予防・改善するメトホルムですが、結果として、寿命をのばすことが報告されています。

米国立老化研究所は、「メトホルミンを投与したマウスは、そうでないマウスに比べ、寿命が5%延びること」を報告しています。バルジライらの研究チームは、78000人の糖尿病患者と、78000人の糖尿病でない人を対象にした研究で、メトホルミンを投与されて70歳代の糖尿病患者さんは、糖尿病でない人に比べ、死亡率が15%減少したと報告しています。糖尿病のない健康な人に比べ、糖尿病があってメトホルミンを服用している人の方が寿命が延びていることは驚きです。

7.老化を抑えるLIFESPAN(ライフスパン)でも紹介

最近、ベストセラーになっている、「老化は疾患!LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界」の中でも、著者自身が、老化を予防するために、メトホルミン 1 グラムを毎朝摂取していることが紹介されています。詳しくは、以下の記事も参考になさってください。

8.いかにメトホルミンを処方してもらうか?

紹介したようにメリットの多いメトホルミンは、健康な人でも服用したくなります。しかし、メトホルミンはあくまで医師が診察したうえで、疾患に対して処方できる保険薬です。予防や健康維持のための処方は認められていません。

ただし、血糖が高い方や、すでに糖尿病治療を受けている方は、一度主治医に「メトホルミンの処方・追加」を相談してみてください。もちろん、処方の可否の判断は、医師が行います。

現在、怪しげなネットではメトホルミンの購入が可能です。しかし、副作用のない薬はありません。特に、効果のある薬は、同じだけの副作用が起こる可能性があります。絶対、医師の診断もなくメトホルミンを服用することはやめてください。

9.まとめ

  • メトホルムは、糖尿病の薬として、安価で、インスリンを増やさずに血糖を下げるため、第一選択薬の一つです。
  • 糖尿病以外にも、抗がん作用、心血管系リスクの軽減、認知症の予防、寿命を延ばす働きが知られています。
  • ただし、怪しげなサイトで、医師の診断もなく、メトホルムを服用することは絶対にやめてください。

 

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