外来では毎日、「先生お酒は飲んでよいですか?」、「お酒はどのくらいなら良いですか?」、「お酒は飲まない方が良いですか?」という質問を受けます。従来は「酒は百薬の長」ですから、少量なら良いですよと答えていました。しかし最近の報告では、「少量のお酒は体に良い」という根拠も乏しくなっています。今回の記事では、「飲酒は少なければ少ないほど健康に良い」という事実を紹介します。
目次
1.飲酒は癌のリスクを高める
アルコールは、アルコール脱水素酵素(ADH)の働きでアセトアルデヒトに代わります。そして、アルコールにもアセトアルデヒドにも発癌性があります。2015年時点の日本人男性のがんの原因で飲酒は8.3%、女性では3.5%と推定され、男女ともに3番目になります。特に以下の癌では明確に発癌リスクを高めます。残念ながら、それぞれの癌に対する安全な飲酒量は示されていません。癌に対して不安がある方は、禁酒も無難かもしれません。
- 飲酒による発癌リスク増大は、確実・・食道癌、肝臓癌、大腸癌
- 飲酒による発癌リスク増大は、ほぼ確実・・乳癌、胃癌
2.とくに下戸の人は要注意
少量の飲酒で赤くなる体質のアルコール脱水素酵素(ADH)の働きが弱い人は、特に発癌性が高くなります。特に頭頚部や胃の癌のリスクが高くなります。特に、毎日3合以上の大量飲酒をすると、お酒に強い人でも食道癌のリスクは8倍になりますが、弱い人は50倍になります。ちなみに、日本人の4割は、アルコール脱水素酵素(ADH)の働きが弱いとされています。すぐに顔が赤くなる人は禁酒が無難かもしれません。
3.「酒は百薬の長」ではない
従来、虚血性心疾患や脳血管障害に対しては、適量の飲酒が予防になると言われていました。しかし、飲酒と疾患の関係を詳細に分析をすると、「少量のお酒は身体に良いは」は正しくないようです。
日本循環器学会は2023年3月、心筋梗塞などの冠動脈疾患予防の指針を以下に改訂しました。
最近の研究で少量飲酒の予防効果が明確でないことなどから、アルコール摂取量を1日25グラム以下に抑えるか、できるだけ減らすことが望ましい。
つまり、飲まないほうがリスクを減らすことができるのです。
4.アルコールは活性酸素を高める
アルコールは、活性酸素にも悪影響を与えます。人間が罹患する疾患の90%が活性酸素による酸化が原因と言われています。ある意味、老化と一言で片づけられている疾患すべての原因と言えるのです。当院でも、活性酸素を測定していますが、飲酒を習慣化している人は間違いなく、活性酸素が高く出ます。やはり身体にとっては、アルコールを代謝すること自体が負担になっていると思われます。詳しくは、以下の記事を参考になさってください。
5.飲酒習慣は確実に減っている
アルコールについて気にしているのは40歳台以上の飲酒の習慣のある人だけです。それよりも若い人はそもそもアルコールを飲みません。「週に3日以上、飲酒日1日あたり清酒換算で1合以上飲酒する人」を飲酒習慣と定義付けます。令和元年の調査では。40歳以上の方は40%前後の方が飲酒習慣を持ちます。しかし、30~39歳の方は、24.4%、20~29歳の方は、12.7%しか飲酒習慣を持ちません。飲酒自体、古い習慣になっていくようです。
6.まとめ
- 飲酒において、多くの癌のリスクが高まります。特に、顔が赤くなる人はさらにリスクが高くなります。
- 最近の研究では、虚血性心疾患や脳血管障害に対しても、アルコールはできるだけ減らすことが望ましいとされています。
- すべての疾患の原因になる活性酸素の数値も、飲酒により確実に高くなります。