血圧の薬はいつまで飲めばいいの?断薬の可能性は?高齢者医療の専門医が解説

血圧の薬はいつまで飲めばいいの?断薬の可能性は?高齢者医療の専門医が解説

血圧が高い方に、血圧の薬、いわゆる降圧剤を処方するとよく聞かれる質問があります。「いつまで血圧の薬を飲む必要がありますか?」、「死ぬまで飲まないといけないのですか?」です。それに対しては、「基本的には生涯のみ続ける必要があります。しかし、生活習慣、年齢によっては減量や中止できることもあります」とお答えしています。

今回の記事では、総合内科専門医の長谷川嘉哉が、血圧を飲み続ける必要性の解説と、減量・中止できるケースについてご紹介します。

1.なぜ血圧の薬は飲み続けないといけないのか?

なぜ血圧の薬は飲み続けなければいけないのでしょうか?

1-1.大部分は遺伝性によるものだから

高血圧の大部分は遺伝と言われています。若いころは、血圧が低かった方でも、高血圧の素因がある方は、50〜60歳ごろになると血圧が徐々に上がってきます。そのため、血圧の薬がなかった時代は、60歳前後になると、脳卒中で多くの方が亡くなっていたのです。何しろ昭和55年ごろまでは脳卒中による死因が第1位だったのですから(最近は、癌、心疾患、肺炎についで4位)。以下の記事も参照になさってください。

1-2.本来は長生きができない種族だったかもしれない

寿命が延びたこと、脳卒中の死因が減った理由の大部分は、血圧の薬による高血圧対策です。本来は、遺伝的に長生きができない種族が、血圧の薬によって血圧がコントロールされ長生きができるようになったという見方もあります。

1-3.高血圧による突然死は失うものが多すぎる

先日、患者さんの娘さんが50歳代で脳出血で亡くなられました。以前から高血圧を指摘されていたのですが、放置されていたようです。脳出血は、血圧のコントロールで発症頻度を減らすこともできますし、仮に発症しても軽症にすることが可能です。50歳代での突然死は、あまりにも失うものが多すぎます。いくつになっても突然死を避けるためには降圧剤を飲み続ける必要があるのです。

Sphygmomanometer and pills on a sheet of EKG
血圧のコントロールに降圧剤は不可欠です

2.血圧の薬の副作用は?

血圧の薬というと、副作用を機にされる方が多くいらっしゃいます。

2-1.副作用はわずか

私が医師になった30年前の血圧の薬に比べ、副作用は相当軽くなっています。以前は、薬によっては動悸、ほてり、空咳といった副作用がありましたが、現在は殆どありません。私も、日々の外来の中で血圧の薬による副作用を患者さんから訴えられることは殆どありません。

2-2.血圧を下げる薬には多くの種類がある

血圧の薬には、血圧を下げる作用機序によって何種類もあります。仮に、副作用がでても種類を変えることで対応は可能です。必ず、副作用がなく、血圧を下げる薬を選択することが可能です。

2-3.副作用と疾患の天秤

医師が薬を処方する場合は、「服薬しないことによっておこる不利益」と「薬の副作用」を天秤にかけます。血圧の薬を飲まないで発症する、心筋梗塞、脳出血、脳梗塞を考えれば、血圧の薬による副作用は微々たるものです。

2-4.血圧を下げる以外の効果もある

これは副作用といってよいのか分からないのですが、血圧の薬を処方して患者さんが喜ばれる症状があります。それは、「長年の肩こりが取れた」です。血圧の薬は、末梢の血管を広げることで血圧を下げます。その結果、全身の血流が良くなり肩こりがとれるのです。同時に、腎臓の血流も増えることで尿量が増え、「むくみも取れる」ので女性に喜ばれることが多いのです。

Senior woman measures pressure at home
上の血圧が170程度もあれば降圧剤の服用を勧められることが多いでしょう

3.きちんと飲まないと薬が増えることがある、とは

出来れば、減量もしくは中止をしたい血圧の薬。それは医師にとっても同じです。しかし、きちんと飲まないとかえって薬が増えてしまうことがあります。

3-1.血圧が下がらない

医師が処方した血圧の薬を指示通りに服用しない方がいらっしゃいます。結果として、いぜん高血圧が維持されているため、医師はさらに血圧の薬を追加してしまうのです。一般的に、医師は、「患者さんは処方された薬はきちんと飲んでいると」と考えています。きちんと服用したうえで、下がりすぎた場合に減量・中止を検討してもらうべきなのです。

3-2.血圧のコントロール不良が悪循環を生む

服薬不良で血圧のコントロールが不良だと、血管の壁には常に高い圧力がかかってしまいます。その結果、動脈硬化性変化が進行し、より血圧が上がってしまいます。結果、軽い薬でコントロールできる人が、より強い薬が必要になってしまうのです。

4.血圧の薬が減量中止できるケース

高血圧は、上の血圧が140mmHg 以上、または下の血圧が90mmHg以上、あるいは両方を満たす場合に診断されます。つまり、同じ高血圧でも、上の血圧が140の人もいれば、180の人もいます。140を少し超えた程度の患者さんであれば、以下の習慣で改善する方もいらっしゃいます。逆に、上の血圧が180を超えるような患者さんは、服薬せずに改善することは殆どありません。

4-1.体重の減量

肥満者は正常体重者と比べ、約2~3倍多く高血圧症になります。体重が増えることで、酸素消費量が増えてしまい、心拍出量、循環血流量が増えることで血圧が上がります。適切な体重を維持することが、高血圧予防につながります。自分の体重が適正か否かは、BMI値25未満が1つの目安です。

*BMI=体重(kg)÷(身長(m)の2乗)

4-2.運動療法

運動によって、血管の内側の細胞の機能が改善し、血圧が下がります。軽度の高血圧患者さんであれば、1日8000歩程度の身体活動を3か月実施して血圧が正常化したという報告もされています。

但し、血圧が180以上のような重度の方は、主治医に相談してから運動を始めてください。

4-3.禁煙

煙草は、それだけで動脈硬化を進める原因になります。さらに、煙草を1本吸うと、15分間以上血圧を上昇させ、さらに動脈硬化を進行させてしまいます。血圧の薬を飲みたくない、減らしたいという前に禁煙は必須です。

4-4.適度な飲酒

飲酒量が増えるほど、血圧が高くなることがわかっています。確かに、飲酒後の血圧は一時的に低下しますが、飲酒が続くと血管が収縮し、結果的に血圧は上昇します。1日あたりの飲酒量が日本酒1.3合以上の人は、飲まない人に比べて、血圧が高くなることが報告されています。

同時に、飲酒制限は血圧の低下に効果があることも明らかにされています。この降圧効果は、血圧が高い人ほど大きくなることが判明しています。

過度な飲酒は、血圧を上げるだけでなく、降圧薬が効きにくい治療抵抗性高血圧の原因にもなるのです。

5.実際に高血圧の薬が減量できたケース

実際の外来で、高血圧の薬が減量・中止できた例を紹介します。

5-1.退職で改善

サラリーマンの方が、退職を機に悠々自適な生活をされるようになると、血圧が下がる方が結構いらっしゃいます。さすがに、薬が要らなくなるまでは下がりませんが、減量できる方が多いです。やはり、現役中の仕事のストレスは血圧に影響を与えていたようです。

5-2.超高齢なり自然経過で血圧低下

当院も開院して20年になります。当初は、血圧の薬を何種類も組み合わせて血圧を正常化していた患者さんが、90歳を超えて超高齢者になられる方がいらっしゃいます。そうなると減量どころか、中止が可能になることが多いようです。さすがに、心臓自体も弱ってきて、血圧の薬が不要になるようです。

ここでいえることは、超高齢者の患者さんは、長年血圧のコントロールをしてきたから、長生きができができたということです。

6.素人さんの言葉に注意

血圧に関しては、素人さんの中途半端な情報に注意をしてください。

6-1.経営者仲間のアドバイスで脳出血

私の患者さんで、40歳代で脳出血になった男性患者さんがいらっしゃいます。彼の出血部位は、被殻といって高血圧性脳出血の典型です。そのことを彼に説明すると、「実は、私は、血圧の薬を飲んでいました。しかし、経営者仲間が『血圧の薬なんか飲んだらかえって身体に悪い』というのでそれを真に受けて薬を中断。脳出血をおこしてしまいました。」とのこと。素人の間違った知識が、他人に一生残る後遺症を負わせてしまったのです。

6-2.専門医と隣のおばさんのどちらを信じる?

血圧の薬を飲んでいる患者さんから、「ある人に聞いたんだけれど、血圧の薬は飲まないほうが良いのですか?」という質問を受けます。そんな時には、「ある人とは、どなたですか?」と聞き返します。そうすると、「隣のおばさんです」との答え。私が、「医師になって30年の脳神経内科専門医の言葉と、隣のおばさんの言葉とどちらを信じますか?」と聞き返すと、「言われてみれば、先生です」と答えます。ここまで言わないと、我々医師の言葉よりも隣のおばさんの言葉を信じてしまう患者さんが多いのです。

6-3.講演後の後悔の言葉

紹介した6-1、6-2の話は、講演でもよくお話しさせていただいています。そうすると、講演後に、「実は、私の主人も血圧の薬を勝手にやめて、脳出血をおこしてしまいました」などという後悔の言葉を何人もの方から聞きます。是非、多くの方に血圧の薬に対する正しい情報を共有してもらいたいものです。

7.まとめ

  • 血圧の薬は、基本的には生涯のみ続ける必要があります。
  • 但し、生活習慣の改善で減量・中止ができる事もあります。
  • 血圧の薬の、自己判断での中止は、取り返しのつかないことにもつながりますのでやめてください。
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