原因不明の体調不良は亜鉛欠乏が原因!? 認知症の一因でもある可能性を専門医が解説

原因不明の体調不良は亜鉛欠乏が原因!? 認知症の一因でもある可能性を専門医が解説

身体に重要なミネラルというとカルシウム、マグネシウム、鉄などが有名です。しかし、最近の研究では亜鉛も注目されています。亜鉛と健康の関連はあまり聞きなれませんが、欠乏すると感染症、糖尿病、癌など多くの疾患の原因になる可能性が示唆されています。

最近では、私の専門である認知症にも関係があるといわれています。そのため外来でも亜鉛の採血を行うのですが、患者さんはやはり低めの方が多いようです。今回の記事では、認知症専門医の長谷川嘉哉が、原因不明の体調不良である亜鉛欠乏が認知症の一因である可能性を解説します。

1.亜鉛とは?

身体の中では様々な化学反応が起こっています。それらの反応においては、触媒として酵素が必要になります。そんな酵素が人間の体には約5000種類もあると言われており、その中心で亜鉛が働いているのです。その結果亜鉛は、免疫機能を改善したり、身体の酸化から守る働き、有害金属を体外に排泄する働きがあります。

そんな体にとって重要な亜鉛ですが、加齢により亜鉛の吸収が阻害され、そのうえ排泄が促進され不足がちになるのです。

2.亜鉛が欠乏すると?

亜鉛が欠乏すると本当にいろいろな障害が引き起こされます。

2-1.免疫力の低下

2016年に発表されたアメリカの研究論文では、亜鉛が免疫機能を高めることが明らかになりました。1日30㎎の亜鉛を服用してもらうと、免疫力を司るリンパ球の一つ「T細胞」を増やす効果が認められたのです。

2-2.糖尿病の原因にも

亜鉛は、インスリンを作る膵臓では必須です。糖尿病患者さんに亜鉛を加えることで空腹時・食後の血糖の低下、HbA1cの低下をもたらすことが報告されています。

2-3.性ホルモンの低下

亜鉛は、前立腺、精液という男性特有の部位に多く含まれています、亜鉛は性ホルモンの分泌と維持には必須ですので、不足すると男性機能が弱まってしまいます。もちろん性ホルモンの分泌ですから女性にも必須であります。

2-4.皮膚炎・脱毛

亜鉛は皮膚にも多く存在し、たんぱく質の合成に関わっています。亜鉛が不足すると健康な皮膚が保持できなくなり、皮膚炎・掻痒感などの皮膚トラブルが起きやすくなります。また髪の毛や眉毛の生えている肌も皮膚の一部であるため、亜鉛が不足する毛根周囲にトラブルが起きて脱毛になります。特に円形脱毛症では亜鉛不足が多くみられるようです。

2-5.骨粗しょう症

亜鉛は骨の生成に大きく関わっているため、不足すると骨粗しょう症のリスクが高くなります。

2-6.DNAの合成がうまくいかなくなる

私たちの体を作る設計といえるDNAの合成でも亜鉛が重要です。DNAの転写や修復といった重要な作業に関わっているのです。亜鉛は、細胞分裂をするときにジッパーを開けるような作用をするために「ジンク(亜鉛)・フィンガー」とも呼ばれているのです。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


3.認知症との関りは

亜鉛は、神経細胞の異常な興奮を抑制して、抑うつ気分や不安も予防します。またアルツハイマー型認知症では、健常者に比べて亜鉛の減少が見られることが、複数の臨床研究のデータから明らかにされています。

実際、私が認知症患者さんの亜鉛の測定を行うと殆どの方が正常値よりの低い数値がでるようです。亜鉛は、味覚を感じる味蕾の中の味細胞の生成に亜鉛が必要になります。認知症患者さんの多くでは味覚の低下が見られます。もしかすると亜鉛の欠乏が認知症を引き起こし、さらに味覚障害も引き起こしている可能性があるのかもしれません。

4.原因不明の症状では、一度亜鉛の測定を

亜鉛のあまりに多くの疾患との関りには驚きです。通常、医療機関で亜鉛の測定をすることは殆どありません。しかし糖尿病・認知症患者さんや、原因不明の皮膚症状、脱毛、易感染症、食欲低下、性欲の低下、味覚障害が気になる方は一度、亜鉛の測定をお薦めします。

なお、亜鉛の測定は血液検査で行えますが、専用のスピッツが必要ですので、受診前に医療機関に「亜鉛の採血ができるか否か」の確認をしてみてください。

血液検査の結果としては、血性亜鉛として100μg/dLが理想で、75μg/dLは低いと判断します。

5.亜鉛が含まれている食品は

亜鉛はできれば食品で取りたいものです。推奨される1日の亜鉛摂取量は、成人男性で10mg、成人女性で8mgです。しかし、比較的亜鉛が多く含まれているといわれる牡蠣でも100gあたり14.5㎎、うなぎ100gでも2.7㎎、牛の赤身100gでも4.8㎎、豚肉100gでも3.2㎎でも1日量としても十分でありません。そのうえ牡蠣やウナギも毎日食べるわけにはいきません。必然的に不足気味となるようです。

6.プロマックの処方も

そのため薬で不足分を補う必要があります。定期的に医療機関に受診されているならば主治医の先生に胃薬としてポラプレジンク(プロマック®D錠75mg)の処方をお願いしてもよいかもしれません。ポラプレジンク(プロマック®D錠75mg)は、胃の粘膜を保護する作用があり、胃炎や胃潰瘍を改善します。また、鎮痛薬など他の薬による胃の荒れを予防します。1日2錠150㎎が服用しますが、その中に亜鉛が34㎎含有されています。

ポラプレジンク(プロマック®D錠75mg)の処方が難しければ、以下のようなサプリメントもお薦めです。

GoCLN(ゴークリーン) 亜鉛 サプリ 1粒25mg Zinc 自然由来原料100% 60日分 高配合 サプリメント(Amazon紹介ページ

7.まとめ

  • 亜鉛不足は、DNAの合成をはじめ、免疫力、糖尿病、皮膚疾患、性ホルモン、骨粗しょう症、さらには認知症と多くの疾患の原因となっています。
  • 亜鉛は加齢とともに吸収が阻害され、食事として摂取するにも限界があります。
  • 原因不明の症状で悩んでいる場合は、一度血液中の亜鉛を測定して、不足していればサプリメント等での補充も必要です。
error: Content is protected !!
長谷川嘉哉監修シリーズ