最近、アメリカン・エキスプレス(アメックス)より、多くのユーザーに向けて「個人カードによる法人支払いが制限される」という通達がでました。これは特に、歯科クリニックなどの中小法人オーナーにとって非常に大きなインパクトを持つニュースとなりました。というのも、これまで多くの個人事業主や法人オーナーが、個人名義のアメックス・マリオットボンヴォイカードを用いて法人の経費を支払い、その結果として膨大なポイントを獲得していたからです。
目次
1.ボンヴォイカードの圧倒的なメリット
アメックス・マリオットボンヴォイカードは、年会費こそ高め(49,500円 税込)ですが、その分多くの特典がついていることで知られています。主なメリットは以下の通りです。
- マリオットのエリートステータス自動付与:ゴールドエリートが自動で付与され、レイトチェックアウトや客室アップグレードのチャンスがあります。
- 継続ボーナス宿泊特典:年間150万円以上の利用で、無料宿泊1泊分(50,000ポイント相当)が付与されます。
- 高いポイント還元率:マリオット系列ホテルでの利用は最大6%相当のポイントが貯まります。
- 貯まったポイントの航空マイルへの交換:ANAやJALをはじめとした多くの航空会社にポイントをマイルとして移行可能。交換レートも優遇されています。
こうした特典を背景に、法人の仕入れや経費をすべてこのカードで支払い、年間数百万~数千万円を決済することで、数十万ポイントを貯め、家族旅行や海外出張の際にファーストクラスや高級ホテルを利用する…という流れが一部で「裏ワザ」として定着していました。中には、1億円以上を決済し、実質1千万円に相当するメリットを享受する強者までいらっしゃいました。
2.今回の規制は「当然」の帰結か
しかし、法人の支出を個人カードで行い、その恩恵を法人ではなく個人が受け取るというのは、税務上もグレーゾーンであり、クレジットカード会社としても長期的に黙認できる状況ではなかったと言えるでしょう。特に、ポイント原資はカード会社が一定のコストを負担しているため、制度が濫用されれば本来のバランスが崩れます。
今回のように、「個人カードはあくまで個人利用に限定」というルールが改めて徹底されたことは、ある意味で健全化の一歩とも言えます。
3.歯科医院など中小オーナーの嘆きと今後の対応
今回の処置に対して、多くの歯科医師や中小企業オーナーが落胆しているのも事実です。特に、仕入れや器具購入など、月間で数百万円から1千万円を超える規模の支払いをカードで行っていた医院では、ポイント収入が激減するため、心理的ダメージは大きいでしょう。
ただし、これを契機として、以下のような「正しい経費処理のあり方」を見直す好機とも言えます。
- 法人の支払いは法人カードで行う
- 法人カードもポイント還元や特典を意識して選定
- 個人利用と法人利用を明確に区分し、税務上のリスクを回避する
法人用のアメックス・ビジネスカードや、マリオット提携のビジネスカード、法人のラグジュアリーカードも存在しており、今後はそうした選択肢の活用が重要になるでしょう。
4.まとめ:ルールの中で最大限の恩恵を
これまでのような「個人カードによる法人経費支払い」というやり方は、確かにお得でしたが、ルールの隙間をつく方法であり、継続性や透明性には乏しい側面がありました。今後は、制度がより厳格化される中で、正しい枠組みの中で、最大限のメリットを享受する方法を模索していくことが求められます。
アメックス・マリオットボンヴォイカードは、個人旅行やホテルステイの楽しみを提供してくれる素晴らしいカードです。使い方を見直しつつ、これからも旅とライフスタイルを豊かにするパートナーとして活用してもらいたいものです。

認知症専門医として毎月1,000人の患者さんを外来診療する長谷川嘉哉。長年の経験と知識、最新の研究結果を元にした「認知症予防」のレポートPDFを無料で差し上げています。