ゆうちょ銀行も不適切販売・高齢者が投資信託を買ってはいけない理由

ゆうちょ銀行も不適切販売・高齢者が投資信託を買ってはいけない理由

私の外来の高齢者の方々は、フィナンシャルプランナー(FP)資格を持つ私の目からすると騙されて投資信託を購入している方がたくさんいます。騙すといえば、悪徳なイメージですが、多くはゆうちょ、銀行、証券会社といった金融機関が取引先です。彼らは、騙す意識もなく、結果的に騙しているため、たちが悪いともいえます。

先日も、新聞で「ゆうちょ銀による高齢者への投資信託の不適切販売」が指摘されていました。そもそも、誰が売ろうと投資信託という商品自体に問題があります。 彼らはそれすら知らずに販売しているのです。

今回の記事では、FP資格を持つ高齢者専門医の長谷川嘉哉が投資信託を購入してはいけない理由をご紹介します。

目次

1.ゆうちょが高齢者に投資信託を不適切販売

以下のようなニュースが流れました。

ゆうちょ銀行が勧誘時の健康確認を怠るなど、不適切な手続きで高齢者に投資信託を販売していたことが2019年6月14日わかった。約230ある直営店のうち約9割の店で発覚しており、社内ルールなどへの抵触は1万5千件以上にのぼるとみられる。

昨年秋以降の社内調査で、高齢者向けの投信販売で不適切な事案が発覚した。複数の関係者によると、社内で定めた書式を使わなかったり、勧誘時に行うべき健康状態などの確認作業を購入の申込時に一緒に行ったりしていたという。ゆうちょ銀は社内アンケート調査を通じ、200以上の直営店でこうした事案があったことを把握している。(日本経済新聞 9/14)

これは利益優先主義で消費者保護意識が希薄だから起きたことです。ゆうちょ銀行というと手堅いイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではないことがわかります。

Aged couple and businessman
お堅そうな会社でも、内実はそうでもないかもしれません

2.投資信託とは?

ゆうちょが不適切な方法を使ってまで売りたかって投資信託とは何でしょうか?

2-1、投資信託とは?

投資信託とは、「投資家から集めたお金を、運用のプロが株式や債券などで投資・運用する商品」です。その運用成果によって、投資家に分配されます。そのため元金が保障されているものではありません。つまり、投資信託を買えば儲かることもあれば、損することもあるのです。その点をあまり伝えずに、「定期預金に預けていても殆ど利息が付かないので、投資信託を買いませんか?」のスタンスで販売されています。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


2-2.運用の結果に関わらず、費用が引かれる

私は投資信託は大嫌いで絶対に購入しません。それは、投資信託には手数料と信託報酬が無条件に引かれるからです。

  • 販売手数料:購入の際にかかる一度だけかかる手数料です。数%から、最近はようやくゼロのものも増えてきました。
  • 信託報酬:商品を保有している間、継続的に発生する手数料です。これは商品の元本が割れていようが引かれます。多いものでは年3%程度の高いものまであります。

この低金利の時代、購入時に手数料が数%引かれ、毎年数%の信託報酬を引かれれば、運用益を出すことは相当に困難です。そのため、運用損になることも多いのです。

2-3.販売者は損しない

投資信託が購入した人が損しようが、得をしようが販売した金融機関は確実に儲かります。だからこそ、不適切であっても販売するのです。私も投資信託を薦めてきた人に、販売手数料と信託報酬のパーセントを聞いたところ、殆どの人が即答できませんでした。彼らは、我々が投資信託を購入してからのことよりも、売ることによる自らの利益しか考えていないです。

3.投資のプロは、投資信託を購入しない

金融のプロや経験豊富な投資家たちの中で、一般的な金融機関で販売している投資信託で自分の資産を運用している人は殆どいません。何もしなくても、販売手数料や信託報酬で運用益が下がるような投資信託には魅力がないのです。彼らは、仕事上で投資信託をお客様に勧めながらも、自らの資産は全く違う方法で運用しているのです。

Retirement Planning infographics
若いうちからの資産形成が重要で、堅実なものを中心に、一部を複数(株現物、金、外貨、債券など)、分散や積立投資をすることをおすすめします

4.トラブル内容の例

当院の患者さんも、投資信託を購入してしまった方がたくさんいらっしゃいます。

4-1.定期を解約して投資信託購入

当院の外来の患者さんの多くは、高齢者であり、なかには早期認知症・認知症の方が大多数です。すでに金銭管理を家族に任せている場合は問題ありませんが、多くの方は、金銭管理にはこだわります。そのため、患者さん自身が財産管理をしており、ゆうちょの方に言われるままに、定期を解約して投資信託を購入してしまうのです。ゆうちょ銀行の不適切販売が9割の店舗で発覚したということは、殆どのゆうちょ銀行に問題があると考えてよいのです。

4-2.ルールに従っていない

日本証券業協会は、高齢者の勧誘・販売においてはガイドラインがあります。その中には、「勧誘の都度、役席者が面談などで健康状態や理解力を確認する」と定めています。ほとんどゆうちょ銀行はこうした業界ルールに違反していたようです。しかし専門医の立場としては、「役席者が面談すれば問題ないの?」と思えてしまいます。これこそ、形式だけになりそうな気がしてしまいます。

4-3.解約すると元本割れ

患者さんの家族によっては、親が1000万円分の投資信託を購入したことを後で知る方もいます。その患者さんにとっては全財産に近い額です。そもそも、全財産を元本が保障されていない投資信託の購入に充てるなど論外です。家族が慌てて解約しようとすると、現状の解約返戻金は700万円で大きく元本割れしてしまうため、解約もできずに放置している状態です。

5.高齢者は、増やすよりも減らさないことを

そもそも、高齢者の場合は、増やすことを考えるよりも減らさないことを考えるべきです。投資は時間をかけるほど、リスク分散ができ、安全性が高まります。高齢者の場合、時間をかけることができないため、リスクのある商品の購入には向かないのです。

6.まとめ

  • ゆうちょ銀行の90%の店舗で、高齢者への投資信託の不適切販売が問題となりました。
  • そもそも、投資信託は販売者は確実に儲かりますが、投資家は元本が保証されない商品です。
  • 高齢者は、増やすことを考えるより、減らさないことが大事です。

長谷川嘉哉監修シリーズ