【お薦め本】限りある人生を豊かにする 人生最後のお金の授業

【お薦め本】限りある人生を豊かにする 人生最後のお金の授業

天野隆さんの『限りある人生を豊かにする 人生最後のお金の授業』を読みました。私は医師であると同時に、ファイナンシャルプランナーとしても、多くの方のお金や相続の相談を受けてきました。また、認知症専門医として、人生の最終段階を迎えた患者さんやご家族にも数多く接しています。

そうした経験から感じるのは、人生の最後に「もっとお金を残せばよかった」と後悔する人は、ほとんどいないということです。それよりも多いのは、「もっと自分のために使えばよかった」「元気なうちに家族と旅行をすればよかった」「もっと人のために使えばよかった」という後悔です。

お金は持っているだけでは、人生を豊かにしてくれません。自分や大切な人の幸せのために使われたとき、初めて価値を持つのです。本書は、単なる節約術や相続対策ではなく、「お金を通して、どう生きるか」を考えさせてくれる一冊でした。

目次

第1章 「生き金・普通の金・死に金」を意識する

本書では、お金の使い方を「生き金」「普通の金」「死に金」の3つに分けています。

生き金とは、明確な目的があり、未来の幸せにつながるお金です。家族との旅行、健康を守るための支出、学びへの投資、子や孫の教育、誰かを助けるためのお金などが当てはまります。使った瞬間だけでなく、その後も思い出や成長として残り続けます。

普通の金とは、日々の生活や目先の楽しみのために使うお金です。もちろん、これも必要です。一方、死に金とは、買ったまま使わない物や、契約していることさえ忘れたサブスクリプションなど、目的を失った支出です。考えさせられるのは、「使い切れずに遺産になるだけのお金も、本人の人生から見れば、生かしきれなかったお金かもしれない」という指摘です。

もちろん、配偶者の生活費や子どもへの相続を準備することは大切です。しかし、必要以上に将来を恐れ、元気な時期まで我慢し続けては本末転倒です。年齢を重ねれば、お金はあっても体力の問題で旅行に行けず、食べたい物も食べられなくなります。お金には「使える時期」があります。人生の残り時間を意識し、自分や家族の経験に変えていくことも立派な資産運用なのです。

第2章 相続で争うのは「勘定」よりも「感情」

本書には、「相続人がモメて得をするのは税務署だけ」という印象的な言葉が出てきます。相続争いは、単純に金額の問題だけではありません。「兄ばかり親に大切にされた」「自分だけが介護を背負った」「あのときの、あのひと言が許せない」。こうした長年の感情が、親の死をきっかけに噴き出します。まさに「勘定」と「感情」が絡み合うのです。

実際、相続争いは何億円もの資産家だけに起こるものではありません。むしろ、遺産額が1,000万円から5,000万円程度の家庭で裁判になるケースが多いとされています。限られた財産だからこそ、「少しでも公平に」という思いが強くなり、過去の不満まで持ち出されるのです。

しかし、相続で一度決裂すると、きょうだいの関係はほとんど元には戻りません。その姿を、子どもや孫も見ています。財産を受け取っても、家族を失ってしまえば、それは本当に幸せな相続でしょうか。大切なのは、親が元気なうちから財産の内容や分け方について話しておくことです。そして、農地や会社の株式など、平等に分けることで価値が失われる財産については、「同じ金額にすること」だけが公平ではないと理解する必要があります。


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第3章 お金に振り回されない人は「自分の軸」を持っている

突然、大きなお金を手にすると、人が変わってしまうことがあります。仕事を辞め、生活水準を急に上げ、短期間で使い切ってしまう。将来への不安から、占いや怪しい投資、特殊な健康商品などに次々とお金を注ぎ込む人もいます。こうした人に共通するのは、自分が何のために生き、何を大切にしたいのかという「人生の軸」が定まっていないことです。

お金は、あくまで道具です。目的がはっきりしている人の手にあってこそ、本来の力を発揮します。一方、お金を上手に使える人は「足るを知る」ことができます。他人の家、車、旅行、資産額と比較している限り、「もっと、もっと」という欲望に終わりはありません。しかし、比較する相手を他人ではなく「自分が理想とする生き方」に変えれば、必要なお金も自然に見えてきます。

相続財産を「自分のお金」ではなく、次の世代へつなぐ「お預かり物」と考える姿勢も印象的でした。そう考えられる人は、大金を得ても生活を大きく変えず、仕事や社会との関わりを大切にできます。自分の軸を持つことは、お金を守るためだけではありません。限りある時間を、他人との比較や家族との争いに浪費しないためにも必要なのです。

終わりに 財産よりも、思い出と生き方を残す

本書に、次のような言葉が紹介されています。「財産残して銅メダル、思い出残して銀メダル、生き方残して金メダル」とても深い言葉だと思います。財産を残すことは、決して悪いことではありません。しかし、残された家族が財産を巡って争うようでは、親が願った相続とはいえません。

それよりも、元気なうちに家族と旅行へ行く。孫の学びを応援する。お世話になった人に感謝を伝える。自分の健康や楽しみのためにも、適切にお金を使う。そうして生まれた思い出や生き方は、相続税もかからず、家族の心に長く残ります。

人生の最後に問われるのは、「いくら残したか」ではなく、「そのお金で、どのような人生をつくったか」ではないでしょうか。お金が大切なのか、人生が大切なのか。その答えを考えることこそ、人生最後のお金の授業なのです。

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