MCI(軽度認知障害)に保険はいらない理由をFP資格をもつ専門医が解説

MCI(軽度認知障害)に保険はいらない理由をFP資格をもつ専門医が解説

最近、各保険会社が新しい商品開発に積極的です。特に認知症については、今後も患者数も増加しつづける見込みですので有望な市場なのでしょう。そのため、認知症に特化した商品や、最近では、MCI(軽度認知障害)にまでその幅を広げています。しかし、その内容は本当に、「この商品が必要?」と思われるものも少なくありません。

今回の記事では、ファイナンシャルプランナー資格をもつ脳神経内科専門医の長谷川が、MCI(早期認知症)に保険商品が必要でない理由についてご紹介します。

目次

1.MCI(早期認知症)を保証する保険とは?

MCIをカバーする保険商品として、

  • 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社が、2018 年 10 月に業界初をうたって発売開始した、MCI(軽度認知障害)を保障する健康応援型商品「リンククロス 笑顔をまもる認知症保険」
  • 明治安田生命が発売する、セカンドライフ世代の健康維持のために一人ひとりが行動を起こす手助けをするというセールスコピーの『認知症ケア MCIプラス』

などがあります。

2.MCI(軽度認知障害)とは?

そもそも、MCI(軽度認知障害)とはどのような疾患なのでしょうか?

2-1.正常でもなく病気でもないMCI

MCIとは健常者と認知症の中間の段階を言います。日常生活も自立していて、第三者から見ても特に異常を感じることはありません。しかし、放置すると約5年で半数以上が認知症に進行すると言われています。

2-2.「ちょっと変」が特徴的なMCI

MCI患者さんを一言で言い表すと、「ちょっと変」です。「凄く変」ではないのです。殆ど正常に生活をしているのに、時々変なことをしてしまいます。代表的なものとしては、車の運転です。日常、普通に運転はできているのです。しかし、突然アクセルとブレーキを踏み間違えたり、高速道路を逆走してしまうことがあります。これがおきると、被害は甚大なものになってしまいます。「ちょっと変」を見逃さないようにしましょう。

Thinking middle aged asian businessman.
深刻なほどではないが、「ちょっと変」なことがあります

2-3.最近ではMCIの受診も増えている

昔は、MCIの段階で受診される方は少ないものでした。しかし、「認知症も早期受診が大事」という啓蒙のおかげもあるようで、最近では当院の認知症専門外来を受診される方も増えています。MCIの段階で抗認知症薬を使用すると、高頻度で認知症への進行を抑制することが出来ます。

3.MCIの診断方法とその精度は?

MCIの診断について解説します。民間保険の給付を受けるには、医師から「MCIである」との診断が必要でもあります。

3-1.診断が難しく、時間がかかる

実は、MCIの診断はとても難しく、時間もかかります。通常の認知症の検査では正常であるため、さらに詳細な検査が必要になり、検査だけでも1時間近くを要します。そのため地域の基幹病院で「年齢相応で問題がない範囲」との診断が降りたのちに、当院を受診をして、MCIだったケースが相当数あります。それだけ診断は難しいのです。

3-2.MCIスクリーニング検査は当てにならない

保険のパンフレットには、「MCIスクリーニング検査は、わずかな血液からMCIのリスクを判定可能」と書かれています。当院でもMCIスクリーニング検査を行っていましたが、臨床検査でMCIと診断が降りた方にも、この検査方法では正常であったり、認知症が相当進行しても異常値を示さないことが多くありました。あまりにも検査の感度が低すぎるため、現在は使っていません。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


3-3.加入してもMCIとしての給付がされない可能性が高い

診断も難しく、検査の感度も低いとなるとMCIと診断されない可能性が高いのです。つまり、せっかくMCIも網羅した保険に加入しても、保険給付されにくいことは容易に想像がつきます。

4.MCIに保険は不要?

Senior man in a wheelchair
介護状態をサポートしてくれる保険とはどのようなものでしょうか

せっかく加入しても診断の難しいMCI。そもそもMCIに保険は不要なのです。

4-1.MCIはそれほど困らない

MCIの段階では、本人も家族もそれほど困りません。医療費もそれほどかかるわけでもありませんし、介護も必要な段階ではありません。そもそも、MCIの段階では介護保険も認定されないレベルなのです。(要支援レベルが認定されることはありますが…)

4-2.そもそも認知症保険でさえ不要

介護が必要な状態は認知症だけではありません。脳血管障害、骨折、加齢などによる運動障害も含まれるのです。つまり、そもそも認知症に特化する保険では、すべての介護状態には対応できないのです。以下の記事も参照なさってください。

4-3.通常の民間介護保険の方がお勧め。その基準は

認知症が不安なのは、介護生活になり費用負担が必要になることです。その不安を解消するには、認知症に特化しない、民間の介護保険への加入がお勧めです。ただし、保険会社によって、給付される介護度が異なります。介護度が3にならないと給付されない保険はお勧めではありません。最低でも介護度2、理想は介護度1で給付される保険がお勧めです。詳しくは以下の記事も参照なさってください。

 

5.まとめ

  • MCIは診断も検査も難しいため、正確な診断がされないことが多いのです。
  • したがって、MCIを網羅した保険に加入しても給付を受けられない可能性が高いのです。
  • 将来への不安解消には、認知症に特化した保険よりも、民間の介護保険がお勧めです。

 

長谷川嘉哉監修シリーズ