中国が新しい抗認知症薬の新薬を承認しました。詳細については不明ですが、従来の薬とは異なる作用機序で認知症を改善するため、とても興味深いものです。今回の記事では、月1,000名の認知症患者を診察する専門医長谷川嘉哉が、中国の新薬を紹介するとともに、その発見から得られる認知症の予防方法をご紹介します。
目次
1.今回承認された中国の新薬とは?
認知症の新薬が中国で17年ぶりに認可されました。800人で二重盲検検査をして明らかに差が出たようです。これはOligomannateといって、腸内細菌について着目した薬で、今までの薬とは作用機序が全く異なります。臨床研究では、「Oligomannateが腸内微生物叢の毒素症を修復し、腸内細菌代謝産物の異常な増加を抑制し、末梢神経系および中枢神経系炎症を調節し、アミロイドタンパク質の沈着とタウの過剰リン酸化を減少させ、認知機能を改善すること」が明らかになりました。(出典:AFPBBニュース「緑谷が軽度から中等度のアルツハイマー病に対するOligomannateのNMPA承認を発表」)
以前より、腸内フローラと認知症の関係は明らかになっており、遂に抗認知症薬として薬が開発されたと言えます。以下の記事も参考になさってください。
2.花瓶が割れる原因を改善する薬?
私は以前から、認知症研究は、認知症になった状態、つまり割れた花瓶の破片を研究しているから成果が出ないと感じていました。今回の、「Oligomannateによる腸内微生物叢の毒素症の修復」は、まさに花瓶が割れる原因を改善する薬と言えるのです。その点で画期的な攻認知症薬の誕生なのかもしれません。
3.腸内細菌に育むためには?
中国の新薬が日本に入ってくるのかは不明です。しかし、認知症にならないためには腸内細菌に気を配ることが大事ということがあらためてわかりました。特に腸内細菌を育むには、プロバイオティクスとプレバイオティクスの考えが重要です。簡単に言えば、腸内細菌自体であるプロバイオティクスを摂取するだけでなく、細菌の餌になるプレバイオティクスも同時に摂取する必要があるということです。
4.プロバイオティクスを摂取するためには?
プロバイオティクスとは、「腸内フローラのバランスを改善することで、宿主の健康に有益に働く微生物」と定義されます。まさに、有益な菌自体を言います。
具体的な摂取方法としては、発酵食品としてヨーグルト、納豆、ぬか漬け、キムチ、味噌、チーズなどです。また、適切な量の整腸剤を摂取することもおすすめです。整腸剤には様々な種類の乳酸菌やビフィズス菌が凝縮されているため効果的に「腸内フローラ」を整えます。私も定期的に、整腸剤は服用しています。市販薬としては以下もお薦めです。
*ザ・ガードコーワ整腸錠α3
5.細菌の餌になるプレバイオティクスを摂取するためには?
プロバイオティクスとは、「大腸の特定の細菌を増殖させることにより、宿主に有益に働く食品成分」と定義されています。プロバイオティクスが菌そのものの作用によって腸内環境を改善することに対し、プレバイオティクスは有用な細菌の餌になることで腸内環境を改善するのです。具体的なものをご紹介します。
5-1.オリゴ糖
糖の中でもよく知られている、ブドウ糖は単糖、砂糖の減量になるショ糖は二糖に分類されます。一方、オリゴ糖は、三糖類以上の少糖類を言います。オリゴ糖には以下の特徴があります。
- 消化されにくいため腸まで届いて善玉菌の餌になる
- 熱に強いため、加熱処理をしても分解されない
- 砂糖よりも虫歯になりにくい
オリゴ糖を多く含む食品には、野菜類(玉ねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガス)、果物(バナナ)、豆類がありますが、以下も手軽でお勧めです。
*オリゴの王様
5-2.植物繊維でも水溶性が有効
植物繊維には、水に溶ける「水溶性」と、水に溶けない「不溶性」があります。便を柔らかくしたいときには、「水溶性」。便の量を増やして腸を動かしたいときは「不溶性」が効果的です。腸の善玉菌を増やすため効果的なものは、「水溶性」の植物繊維です。
- 水溶性食物繊維を多く含む食品:野菜類(ごぼう、にんじん、芽キャベツ、おくら、ブロッコリー、ほうれん草)、豆類(納豆)、いも類(さといも、こんにゃく)、海藻・きのこ類
6.日本食が認知症を原因から予防する?
腸内細菌を育む食生活を考えると、ご飯は、玄米、もしくは五穀米にして、味噌汁を飲み、野菜をしっかり食べ、納豆やぬか漬けをご飯のお供にする。これは、典型的な日本食です。もしかすると、多くの研究者が多くの研究に取り組んでいますが、日本食こそが、認知症を原因から改善するのかもしれません。皆さんの食生活でも積極的にとるようになさってください。
7.まとめ
- 中国で認可された抗認知症薬は、「腸内微生物叢の毒素症の修復」をはかる作用機序です。
- この作用機序は、認知症の原因を改善するものと言えます。
- この薬以上に、日本食こそが、認知症を原因から改善するのかもしれません。