国民負担増でも医師の特権税制?

国民負担増でも医師の特権税制?

日本の医療費は、年々上昇し続けています。高齢化や医療の高度化により医療費が膨張する一方、その負担を支えているのは最終的には国民全体の税金と保険料です。しかし、その医療費を支える国民の多くが知らないまま、「医師・歯科医だけが利用できる特別な税制」が存在します。それが医師優遇税制(概算経費制度)です。

目次

1.どれほど優遇されているのか?数字で解説

概算経費制度では、医師が実際に使った経費ではなく、売上の一定割合を自動的に経費として認めてもらえる”という非常に特殊な仕組みを認めています。実際の概算経費率は以下の通りです。

概算経費率の一覧(医師・歯科医のみ)

2.実際の数字を使うと、“優遇”はより鮮明に

たとえば、あるクリニックの年間の社会保険診療報酬(実質の売上)が 5,000万円 だとしましょう。

実際の経費は下記の通りだったとします。

  • 実際の経費:2,000万円(40%)

しかし、概算経費制度では、

  • 概算経費:3,340万円(66.8%)

まで認められます。

つまり、実際にはかかっていない「1,340万円」の経費が追加で認められ、そこには一切課税されません。

これは一般の事業者では到底あり得ない、極めて手厚い優遇制度です。

3.なぜこれが問題なのか?

3-1.実態以上の経費が認められ、課税所得が大幅に圧縮される

本来なら課税されるべき1,340万円分が“存在しない経費”として扱われ、税金が大幅に軽減されます。医療費は国民が負担し、そのうえ医師のみ税でも優遇される構造は、公平な制度とはいえません。

3-2.国民の多くが制度の存在を知らない

医師・歯科医以外ではまず知る機会がなく、制度の説明性・透明性が欠けています。
公共性の高い医療という領域で、特定の職種だけが特権を持つことには疑問が残ります。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


3-3. 医療の地域格差・経営格差を広げる

概算経費は「売上規模」だけで適用の可否が決まります。

  • 小規模クリニック → 対象で大きな優遇
  • 中大規模クリニック → 対象外で優遇なし

医療の質や地域ニーズとは無関係に優遇が偏るため、制度が医療資源の配置に悪影響を及ぼす可能性があります。

4.“即時停止”を提案する理由

国民に説明ができる制度ではない

「実際より多くの経費を医師だけが計上できる」ことは国民に説明できません。制度の公平性・透明性の観点から正当化が困難です。

医療費抑制という国の方向性と逆行する

診療報酬削減や医療効率化を進めている一方で、医師だけを税制で優遇するのは政策として矛盾しています。

医療提供体制のバランスが崩れる

本来支援されるべき基準(地域の医療必要度、診療体制、医療資源量)ではなく、売上規模だけで優遇が決まる制度は、医療の構造を歪める恐れがあります。

5.結論:医師優遇税制(概算経費)は“役割を終えた特例”

社会保障費が膨張し続ける今、国民全体が医療費を負担する中で、特定の職業だけが特権的に優遇される制度は持続可能ではありません。医療は公共性の極めて高い仕事だからこそ、医師だけが得をする制度は見直すべきです。

 

長谷川嘉哉監修シリーズ