私は、定期的に肋間神経痛の症状が起こります。最初に肋間神経痛になったのは、高校時代でした。自転車通学をしていた時に、冷たい空気を吸ったとたんに、胸に激痛が走ったのです。正直、「死んでしまうのでは?」と不安になるほどの痛みでしたが、痛みはすぐに消失。その後も年に数回は経験しています。今回の記事では、脳神経内科専門医の長谷川嘉哉が肋間神経痛について、その特徴と対処方法をご紹介します。
目次
1.肋間神経痛とは?
肋間神経痛とは以下の特徴を持ちます。
1-1.肋間神経の場所
肋間神経は末梢神経の一つで、木の幹である脊髄から延びる枝のようなものです。つまり、肋間神経は、胸髄という樹の幹から出て、肋骨に沿っている神経です。ちなみに、肋骨は人間にとって大事な心臓や肺を守る重要な骨です。
1-2.鋭い痛みが片側に走る
肋間神経痛の症状は、片側のみが痛みことが多いです。症状は、一瞬電気が走ったような鋭い痛みです。程度によっては、息ができないほどの痛みでありますが、持続時間が一瞬であるため、何とか耐えることができます。症状は、身体を前後や左右に曲げたり、ひねったりすることや、冷たい空気を吸ったことで誘発されます。
1-3.そもそも神経痛とは
人が感じる痛みには、筋肉性、血管性、神経性の3つの痛みがあり、それぞれに特徴があります。筋肉性は、ドーンとした軽い痛みですが、継続する特徴があります。血管性は、痛みの程度は、筋肉性と神経性の中間であり、ズキンズキンとした痛みです。痛みの程度が最も強いのが神経性のいわゆる「神経痛」です。痛みを感じる神経自体の痛みですから、最も激しい痛みとなります。幸い、痛み自体は皮膚の表面で一瞬です。この痛みが長時間継続したら、とても耐えられるものではありません。
2.肋間神経痛の原因は?
肋間神経痛は、脱臼や骨折などの外傷により肋間神経自体が圧迫されたり、椎間板ヘルニアや変形性脊椎症や脊髄腫瘍により胸髄のレベルの圧迫で引き起こされます。その他にも、加齢により胸髄を保護する骨や椎間板、靭帯が弱くなり、神経の通り道が狭くなり、動いた際に肋間神経を刺激することもあります。
なお、原因の如何に関わらず、神経痛は、冬に悪化することが多いものです。寒くなると血管が収縮して血液の循環が悪くなり、筋肉が硬くなります。その結果、神経痛の頻度が増すのです。
3.肋間神経痛が起こった際に否定すべき疾患
胸の一瞬の痛みを、引きこおこす肋間神経痛の症状が出た場合は、患者さんの年齢・症状の頻度などから以下の検査も行います。
3-1.虚血性心疾患
年齢が40歳を超えていれば、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を否定する必要があります。最低でも心電図、胸部XP、血液検査を行いましょう。少しでも疑われる場合は、循環器専門医で、心エコー、さらには心臓の冠動脈造影を行います。なお、虚血性心疾患の予防には以下の記事も参考になさってください。
3-2.胸髄病変
外傷の既往がある場合は、肋骨の骨折の有無、変形性胸椎症もXP検査で行います。胸椎ヘルニアや腫瘍も否定するには、胸部のMRIまで行う必要があります。
3-3.帯状疱疹
帯状疱疹は、水痘・帯状帯状ヘルペスウイルスが神経自体を障害します。初期症状はぴりぴりとした皮膚の痛みであることが多く、必ずしも見た目の皮膚変化は伴いません。また、患者さんによって「痛い」、「痒い」、「痛痒い」など表現方法も様々です。そのため、この段階では診断は不可能です。なお、帯状疱疹であれば時間が経つにつれて徐々に赤みや水疱形成を伴うようになります。帯状疱疹については以下の記事も参考になさってください。
4.何科に受診?
肋間神経痛が頻回におこる場合は、医療機関に受診しましょう。最初は、私が専門である、脳神経内科がお薦めです。虚血性心疾患などの内科的疾患から、脊髄レベルまでの診断が可能だからです。脳神経内科で、肋骨病変や脊髄病変が疑われれば、その段階で整形外科に紹介されることになります。
5.治療は?
肋骨骨折や、胸髄レベルで異常があれば、それらに対する治療を行います。
薬物治療として、痛み止めは全く効果がありません。なにしろ、一瞬のため、薬を飲もうとしたころには、痛みは消失しています。痛み止めは全く間に合わないのです。そのため、頻度が年に数回程度であれば様子観察となります。しかし、週に2〜3回以上の頻度になる場合には、予防的にカルバマゼピン(商品名:テグレトール)を使用します。カルバマゼピンは、神経自体の痛みには、著効することが多いのです。
6.予防方法は
明確な原因がないのに、定期的に肋間神経痛がおこる。できれば、薬も飲みたくない方には、日常生活での対処も重要です。適度な運動を習慣化すると、身体の組織自体の柔軟性が高まり、血液の流れも良くなり、結果として身体が温まり、肋間神経痛を起こしにくくするのです。
7.まとめ
- 肋間神経痛は、片側の胸部に激烈な痛みを生じますが、幸い一瞬であるため何とか耐えられます。
- 原因としては、肋骨の外傷、胸髄の病変がありますが、単純に冷気が原因であることもあります。
- 治療は、原因疾患がある場合は、その治療おこない、薬物治療としては、カルバマゼピンを使用します。