言葉に騙されてはいけない!低温やけどの重症度は低くない

言葉に騙されてはいけない!低温やけどの重症度は低くない

高齢者の多い私の外来では、毎年冬場になると、「低温やけど」の患者さんが増えます。ご家族も、「低温やけどをしてしまいました」と軽く報告をしてくれます。しかし「低温やけど」は「低温」という言葉から軽く考えがちですが、重症度はとても高いものです。そのため高齢者や基礎疾患のある患者さんには特に注意が必要です。今回の記事では、認定内科専門医の長谷川嘉哉が、低温やけどについてご紹介します。

目次

1.低温やけどとは?

やけどの中で、約40度から50度の低い温度で生じるものを「低温やけど」といいます。本来この程度の温度では問題はありません。それどころか触って気持ち良いと感じるぐらいです。

しかし、この程度の温度でも長時間接触することで「低温やけど」は起こります。自覚症状も表れにくいため、知らないうちに皮膚の奥まで損傷してしまいます。ある意味、高温で短時間作用するよりも重症化しやすいため治りにくい特徴があります。

2.低温でも損傷レベルは最も重い

通常のやけどは損傷の程度によって、以下のⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分類されますが、低温やけどは殆どがⅢ度となります。つまり「低温」といっても、最も重症であり、治療期間も長く、傷跡も残ってしまうのです。

Ⅰ度 Ⅱ度(浅い) Ⅱ度(深い) Ⅲ度
損傷レベル 表皮より浅い 表皮真皮の浅い層 表皮真皮の深い層 皮膚全層・皮下組織
他覚症状 赤み(充血、発赤) 水ぶくれ 水ぶくれ 乾燥(黒色、白色)
自覚症状 痛み、熱感 強い痛み 弱い痛み 無痛
治療期間 数日 1~2週間 3~4週間 1カ月以上
傷跡 残らない 残らない 残る 残る

3.低温やけどの原因は?

低温やけどの原因の大部分は以下になります。

3-1.あんか、湯たんぽ、電気毛布

寒い地域の方は、寝るときに布団の中を温める習慣があるようです。私の開業する岐阜県土岐市も冬になると、特に高齢の患者さんは、習慣として、あんか、湯たんぽ、電気毛布を使われます。その結果、毎年数人の方が低温やけどになってしまいます。

3-2.貼るカイロ

最近は、背中や腰に、暖める目的で使われる方が多いのが貼るカイロです。さすがに皮膚に直接貼る方はいませんが、シャツが薄かったりすると低温やけどを引き起こします。

3-3.電気ストーブ

直接、暖を取ろうとして、電気ストーブに近づきすぎて、足先や膝に低温やけどを起こします。

4.特に気を付ける人は?

以下の方は、特に「低温やけど」に注意が必要です。

4-1.運動障害

脳血管障害や廃用症候群の方は、熱くても動かすことができないので注意が必要です。どうしても布団が冷たいと感じる場合は就寝前に温めておき、床に入ってからは電気毛布に電源を切るなり、湯たんぽは外に出しておく必要があります。


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4-2.認知症

認知症の患者さんは、暑さには鈍感でも、執拗に寒さを訴え、電気ストーブを抱え込んでしまう方が多くみられます。やけどなどの痛みにも鈍感で「低温やけど」を相当悪化させてしまう方も多くいらっしゃいます。認知症患者さんの暖房器具については、周囲が管理する必要があります。

4-3.糖尿病

糖尿病患者さんの中でも、末梢神経障害を伴った患者さんには注意が必要です。基本的に糖尿病の患者さんの場合は、低温やけどの原因になるような、暖を取る方法は避けることがお薦めです。

5.低温やけどになったら

低温やけどになったら、以下の対応が大事です

5-1.とにかく冷やす

やけどの治療の基本は、とにかく冷やすことです。最低でも10分は冷やしましょう。そのあとに、自己判断で勝手に薬を塗ることも止めてください。民間療法でアロエ、みそ、はちみつ、大根おろし、ジャガイモのしぼり汁と言ったものがありますが、いずれも感染を悪化させる可能性があるので絶対やめてください。

5-2.冷やし方に注意

低温やけどのように重度の場合は、強い流水をかけると皮膚がはがれてしまうことがあるので注意が必要です。蛇口から直接でなく、シャワーを周囲から優しくかけてください。

5-3.基本は皮膚科受診

水ぶくれができていたり、皮膚が黒くなっている場合は、重症度がⅡからⅢ度です。必ず、皮膚科を受診するようにしてください。

6.まとめ

  • 低温やけどは、低温という言葉から軽く考えてしまうが、重症です。
  • 運動障害・認知症・糖尿病の患者さんは特に注意が必要です。
  • 低温やけどは、できるだけ皮膚科に受診することをお勧めします。
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