【お薦め本の紹介】2030―2040年 医療の真実-下町病院長だから見える医療の末路

【お薦め本の紹介】2030―2040年 医療の真実-下町病院長だから見える医療の末路

下町の病院長が“現場の目線”でこれからの日本の医療と介護の行方を語る一冊です。2040年には高齢者が過去最多となり、誰もが医療や介護を受けにくくなる現実が目前に迫っています。知られざる病気の実態や家族の葛藤、そして地域医療を支える現場の苦労が、丁寧に描かれています。制度の限界を批判するだけでなく、「どうすれば安心して老いを迎えられるのか」を一緒に考えさせてくれる、希望と警鐘の両面を持つ医療ノンフィクションです。

  • 団塊ジュニアが 65 歳以上、団塊世代は 90 代になって高齢者人口がピークに達する2040年には、国民皆保険制度がなかった時代のように、満足な医療が受けられず死んでいく人たちが続出する国に戻る
  • 有料老人ホームのゴミ屋敷に住んでいるのは、あなたかもしれない。このままでは、お金があっても、ほとんどの人が医療・介護に簡単にアクセスできなくなる時代が来ることはあきらかだ。
  • 最も数が少ないはずの前頭側頭型認知症は認知症患者の100人に1人とはいっても、私の認知症専門外来でさえ、ほかのタイプの認知症の患者 20 人を診るのと同じくらい対処が大変で、ものすごい破壊力を持っている。
  • 前頭側頭型認知症は、診断も治療も難しい。私は、街の奇怪な変わり者、暴言・暴力でうとまれている高齢者は、かなりの割合で前頭側頭型認知症が原因ではないかとみている。
  • 今後、認知症の専門医はそれほど増えずに認知症の人ばかりが増えるのだから、同様の事件は多発するだろう。
  • 日本全国を探しても、前頭側頭型認知症をはじめ、アルツハイマー型認知症以外の認知症の診断や治療ができる医師は限られている。
  • レビー小体型認知症の患者は、向精神薬などの薬が効きやすく、そのために動けなくなっていることもある。
  • レビー小体型認知症の場合も、きちんと診断されず、うつ病や躁うつ病などと診断され薬漬けにされると、症状が悪化して別人のようにされてしまうことがあるのだ。
  • 高住や有料老人ホームに入るお金がある人はまだましだが、年金収入が月 10 万円以下の人はさらに悲惨だ。
  • 老人ホームまがいの無届け(未届け) 施設が、一部の高齢者の受け皿になっていることも事実なのだ。
  • 経営している側も、安価な料金で高齢者を受け入れているわけだから、こんな金額で念入りなケアなどできるわけないと分かっているだろうと居直っている。苦情も被害届けも出ないから、必要悪として八方丸く収まる。
  • 劣悪な未届け老人ホームのようなものを利用するしかない。三食ちゃんと出てるのか、定期的に入浴もさせているのか分からなくても、月3万~5万円くらいしか年金をもらっていない人は、とにかく入れてもらえるところに入るしかない。そこに付け込む輩が出てくるのは、世の常人の常というものだ。
  • 介護付き有料老人ホームは、年金収入が月 20 万円程度はあるか、貯金や土地をたくさん持っている資産家、あるいは息子や娘の手厚い援助が受けられる人しか入れない。
  • 75 ~ 79 歳の要介護認定率は 11・9%だが、 85 歳以上では 57・7%。長生きすればするほど要介護状態になるリスクも高まる。
  • ホームヘルパーの平均年齢は 50・1歳で、 30 歳未満のヘルパーは6・1%しかいない。 54・1%が 50 歳以上で、 65 歳以上も 12・6%、 75 歳以上のヘルパーもいる。
  • 全国の介護福祉士養成施設の2023年度の入学定員は1万2089人だったが、入学したのはその約半分の6197人で、過去最低を更新した。
  • そのうち日本人の新卒者は3930人で、1802人は外国人留学生だ。
  • このままいくと、誰にも頼れず、高齢者施設にも入れず、在宅医療・介護といっても、ホームヘルパーなどが不足して満足なケアが受けられず、適切なリハビリを受けられず動けなくなる廃用症候群で寝たきりになり、ゴミだらけになった家で痛みや息苦しさに苦しみながら、自宅のベッドのうえで死を待つだけのような生活を送る人が増えるということだ。
  • 85 歳以上に限定してみると、2020年時点の施設入所率は女性が 26・1%、男性が 13・3%で、2035年まで男女ともほぼ横ばいと推計されているのに対し、在宅一人暮らしの割合は、女性は2035年まで、男性は2050年まで増え続ける。
  • 残念ながら、診療報酬をコロコロ変える厚生労働省には、 50 年先のビジョンどころか、5年先、 10 年先のビジョンさえないとしか思えない。
  • 医療制度の罪は主に5つあり、これらが絡み合って医療崩壊を加速させている。1つ目は、病院経営への民間企業の参入を阻む、がんじがらめの法律だ。2つ目は、データに基づかずに思い付きで進められているとしか思えない医療政策。3つ目は、弊害のある投薬が野放しになっていること。4つ目は、悪徳病院も質の高い医療を提供する病院も一緒くたになっていること。そして、5つ目は、病院より診療所の開業医を優遇している政策だ。
  • 日本の民間中小病院の多くは家族・一族の経営で、借金に対し個人保証、連帯保証を入れている。倒産すれば経営者本人だけではなく、家族の生活まで脅かされ、次の世代まで影響がある。
  • 法律の壁が株式会社による病院経営への参入とM&Aを阻んでおり、医療業界では今のところ介護業界のような再編は進んでいない。
  • 厚生労働省の役人の天下り先の国立病院は、税金の投入で赤字が補塡されるので、診療報酬改定で損失が出ても何も困らない。
  • 日本では未だに抗生物質をよく出す医師の評判がよくなることが多いようだが、本来は、薬を出さない医師を評価すべきだ。
  • グループ診療ではなく1人で診療している医師にその傾向が強く、 60 歳以上の医師は、 45 歳未満に比べて約2倍、抗生物質を処方している割合が高かったという。
  • 診療経験が少ない医師やフリーランスの医師が、例えば訪問診療医になった場合には、何をしているのか分からないブラックボックスの状態だ。
  • 医薬分業は、医師が薬で儲けるのを阻止できたかもしれないが、単に大手の薬局を儲けさせるだけだった可能性もある。
  • 2019年5月には、健康保険組合の連合組織の健保連が、花粉症治療薬や湿布薬、ビタミン剤など、市販薬が広く流通している薬品を保険適用からの除外や自己負担率の引き上げを検討すべきであると保険給付範囲の見直しを提言した。
  • これらの薬を保険適用から除外することで、医療費が約600億円削減されるとの試算だ。
  • 日本人は誰でも死ぬということを忘れてしまったのか、 90 代の高齢者が死亡しても医療機関や介護施設に損害賠償を要求するような訴訟を起こす。
  • 日本人は、病院に行けばどんな病気も治してもらえ、医療にかかれば無限に生き続けられるという幻想を持っているとしか思えない。
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