令和7年12月20日、私が所属するNPO法人PAL研究会にて、トラスコ中山 代表取締役社長の 中山哲也 氏をお迎えし、『教科書にない経営』というテーマでご講演をいただきました。結論から言えば、「ここまで徹底して考え抜いた経営があるのか」と、頭を殴られるような2時間でした。
目次
1.常識を疑うところから、すべてが始まる
講演冒頭から印象的だったのは、「マスコミの偏向報道」や「数字だけを追う経営」への鋭い問題提起でした。たとえば「お米10kgが高い」という報道一つとっても、背景を考えずに受け取ることの危うさを指摘されました。
2.勉強よりも、考える力。
この一言が、講演全体を貫く思想だったように思います。
■ “持つ経営”が競争力を生む
トラスコ中山の代名詞とも言えるのが「在庫」です。在庫は悪ではなく、「成長の証」。即納率(在庫出荷率)を最大の経営指標とし、経営指標が顧客に響かないことを熟知したうえで、“お客様価値”を最優先に置く姿勢は圧巻でした。
同業ライバルがすべてお客様になり、モノタロウが最大の顧客になる──これは偶然ではなく、在庫があるからこそ提供できるサービスの帰結です。
減価償却を愛し、「借りるより買う」「家主は家賃を待ってくれないが、銀行は返済を待ってくれる」という言葉に象徴されるように、持つことでリスクヘッジを行う思想は、医療法人経営にも大いに通じるものがありました。
■ 人を安く使わない。人生を尊重する
正規雇用原則、男女問わず新入社員は物流センターでの現場研修、希望者には配送業務も経験させる。育児休業3年、独自の健康保険組合設立、給与明細への時給表示、退職金の年度払い、有休積立上限撤廃──これらは福利厚生の話ではなく、人の人生を尊重する経営哲学そのものです。
「人の人生のいいとこどりはしない」という言葉は、強く心に残りました。
■ やめる経営、止める勇気
手形、請求書、物品受領書、取引先懇親会、売り出しセール、ISO14001……
“やること”よりも“やめること”を決め続けることで、会社はシンプルに、そして強くなる。悪いところをなくし続ける──それが会社を良くする唯一の方法だと断言されました。
■ 多数決に成功はない
多数決は無責任を生む。誰もが思いつき、誰もが進む道に成功はない。
だからこそ経営者に必要なのは独創力であり、「知識は有限、知恵は無限」という言葉が、何度も頭の中で反芻されました。
OJS(オープン・ジャッジ・システム)による昇格判断、顔写真入り名簿や座席表など、「見える化」によって人物を知り、組織の質を高める仕組みも実に合理的です。
3.リアルの価値を再確認した一日
コロナ以降、情報収集はオンラインが主流になりました。しかし今回、100名規模のリアル講演、そして20名ほどの密な懇親会を通じて、人と人が直接会う価値を改めて実感しました。空気感、熱量、雑談の中にこそ、本質的な学びがあります。
4.成功する経営者の“気質”
私は以前から、成功する経営者には
①ADHD気質
②自閉気質
③アスペルガー気質
のいずれか(あるいは複合)があると提言しています。
中山社長は、まさにその典型でした。常識に媚びず、気づいたことを徹底的に突き詰め、不合理を積み重ねて合理的な環境を作る──これは“才能”ではなく、“気質”なのだと再確認しました。
5.経営とは、運命を変える作業
些細な投資の積み重ねが運命を変える。
徹底的に考え抜けば、それほど失敗はしない。
経営者の真の労働時間が、業績と連動する。
中山社長の言葉は、どれも耳に痛く、そして希望に満ちていました。
知恵を絞りまくって、運命を変える。
その覚悟を、改めて胸に刻んだ一日でした。

認知症専門医として毎月1,000人の患者さんを外来診療する長谷川嘉哉。長年の経験と知識、最新の研究結果を元にした「認知症予防」のレポートPDFを無料で差し上げています。