ショートステイが突然閉鎖!介護事業もサバイバル時代に突入した背景

ショートステイが突然閉鎖!介護事業もサバイバル時代に突入した背景

2019年6月26日、近所のショートステイ施設から「今月限りで閉鎖します」と地域のケアマネに連絡がありました。「今月って、あと何日あるの!」と突っ込みたいところでしたが、ケアマネはそれどころではありません。その事業所は、7月も8月も通常の予約を入れていたのです。そのため、ケアマネは他のショートステイを探す必要が出てきたのです。

もちろん、ショートステイはどこも一杯です。他の市町村まで探しても、代替え施設は見つかりません。かなりのケースで、家族にお詫びして自宅での介護をお願いせざるを得ませんでした。

以前から私は、「介護事業は退場すべき事業所には退場いただき、優良な介護事業所に人員を集中させることが、利用者や働く人たちにメリットがある」と提案していましたが、いよいよ実現してきたのです。

今回の記事では、介護事業のサバイバル時代に最も危険な事業所の種類と、危険な事業所の見極め方をご紹介します。

1.介護事業の倒産とは?

倒産とは何でしょうか? そもそも倒産という言葉には明確な定義はないようです。しかし一般的には、「個人や法人などが経済的に破綻して債務を払えなくなり、事業をそのまま続けることが不可能になること」と言われています。法人の場合は、経営破たんともいうそうです。

今回のショートステイ事業所は、あらためて話を聞くと、「従業員への給与の遅配」、「地代家賃の未払い」などがあったようです。文字通り、倒産、もしくは経営破たんであったようです。

Thinking asian woman at the office.
給与の遅配があると従業員の入れ替わりが激しくなります

2.経営破たんした介護事業所

実は、今回のショートステイ以外にも経営破たんした例はあります。

2-1.グループホームチェーンの例

全国的に、急激に成長していたグループホームチェーンがありました。「いずれ上場する」とスタッフにも株を購入させていましたが、資金繰りが悪くなり、他の法人に買い取られました。給料も遅配していましたが、入所している利用者さんがいるため、スタッフは働いていました。現場で働く介護職の良心を逆手に取っているようで怒りを覚えたものです。

2-2.訪問介護の例

比較的事業所が多く、他の事業所でカバーできるため目立ちませんが、相当数が撤退しています。訪問介護は、1日の中でも朝や夕方に利用が集中します。その割に日中の需要は少ない。そのため、スタッフの常勤雇用がしにくいことが一因となっています。

2-3.ショートステイ

ショートステイも、閉鎖したり、有料老人ホームに変わっている施設があります。私は、多くの方からショートステイの経営を薦められましたが、頑なに拒否してきました。それは、デイサービスに比べ、明らかに介護報酬が低いのです。そのため採算をとるためには回転率を上げる必要があります。しかし、ショートステイという性格上、どうしても利用希望日の間に空室ができてしまうのです。つまり理論的に経営が上手いく行くはずがないのです。その上、例えば定員20人のショートステイでは、月にのべ80〜100名の利用者さんがいるため、把握も難しく、スタッフの負担も重くなるのです。

nursing home
いつも空いている施設には理由がありそうです

3.危ない介護事業所は?

実は、介護事業の経営母体でおおよそ危険な事業所は想定できます。

3-1.異業種からの介護事業参入は無責任?

「介護事業は儲かる」とでも思っているのでしょうか? 多くの異業種の方が介護事業に参入しています。彼らは「儲かる」という目的で参入していますから、儲からなければすぐに撤退です。今回の、突然撤退したショートステイ事業所も異業種からの参入でした。


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Big company and big money
介護事業は儲かりそうだと安易に考えて参入した事業者は危険です

3-2.個人事業経営は危険

個人で行っている介護事業は、細やかなサービスという点では魅力的です。しかし、経営者が病気や死亡した場合、突然閉鎖になります。実際、当院の隣の市のデイサービスで、経営者の突然死により突然閉鎖となったケースがあります。

3-3.医療法人・社会福祉法人グループは比較的安全

介護事業の一つ一つは、とても零細であるため、ある程度の規模が必要です。そのためグループとして事業展開している方が、資金・人的な資産が豊富です。具体的には、医療法人グループか社会福祉法人グループであることに注目してください。これらのグループにより提供される介護事業は比較的安全といえます。

4.経営破たんの兆候

利用者さんでも、介護事業の経営破たんの兆候を予想することが出来ます。

4-1.責任者が退職する

各事業所の責任者は、比較的早く経営状況の悪化を知ることが出来ます。そのため、責任者クラスが退職した場合は、注意が必要です。

4-2.利用料金が他に比べ安い

介護サービスを利用する場合、介護報酬以外に実費負担が必要になります。例えば、デイサービスやショートステイの食事代などです。これらは、結構差があるものです。実は、それらの実費負担額が他の事業所に比べ安すぎる場合は注意が必要です。利用者にとっては、安いことは嬉しいことです。しかし経営においては、小さな差が大きな差になってきます。実費負担が安い事業所の経営者は、どこか経営が甘いのです。

4-3.単純に、はやっていない

介護事業と言ってもやはり事業です。そのためには売上が必要です。介護サービスの利用者が定員に比べ、いつも少なければ経営状況は悪いと想像できます。

5.今後、危険な事業所

私は、特に、以下の介護事業は経営破たんが続くと予想しています。

5-1.小規模多機能ホーム

そもそも介護報酬が低すぎるうえに、利用者も増えません。何しろ、在宅で生活する限り、他の介護サービスを利用することで介護負担を軽減することが可能です。そのため、私個人も患者さんに利用はお勧めしていません。詳しくは以下の記事も参考になさってください。

5-2.埋まらない住宅型有料

異業種の方が、投資目的で住宅型有料老人ホームの建物を作り、経営は丸投げ。そんな住宅型有料の多くは、ガラガラです。当院の隣の市にも定員60名程度で、いつも半分以上空いている施設があります。そうなると見学に来た家族も、「空いているには何か理由が?」と思い、ますます埋まりません。家賃が払えなくなった時期に、突然撤退することが予想されます。

5-3.的確な値上げをしないグループホーム

グループホームは、介護報酬の改定毎に単価が減らされています。その中で、適切な事業運営をするには値上げが必須です。当市のグループホームも経営母体がしっかりしている施設ほど、値上げをしています。逆に「経営大丈夫?」と思われるような施設は、値上げをしていないのです。

5-4.供給過剰なデイサービス

デイサービスはどこも供給過剰です。その上、介護報酬も徐々に下がってきています。サービス内容に特徴がなく、他業種から参入したような、個人経営の介護事業所は本当に危険だと思われます。

5-5.経営感覚のない訪問看護

当グループも2000年4月の介護保険施行時より訪問看護ステーションを運営しています。在宅患者さんを維持するためには必須のサービスです。しかし、常に利用者さんを確保するための営業活動も必要です。しかし有資格者には、「営業活動」の概念がない方がいらっしゃることがあります。そのため世の中に必要なサービスですが、経営破たんしてしまうことも多いのです。

6.まとめ

  • 介護事業所も突然経営破たんする時代です。
  • 特に、他業種から参入したような、個人経営の介護事業所には注意が必要です。
  • いずれ、介護事業は医療法人系と社会福祉法人系の2本に集約されると思われます。
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