家族を苦しめ、時に家族関係までもを崩壊させるものに、
幻覚・妄想・暴言といった周辺症状があります。
不思議と、これらの周辺症状は、
もっとも患者さんのお世話をしている人、
多くは長男のお嫁さんなどが標的になります。
もっとも尽くしている人たちに対して、
被害妄想で泥棒扱いしたり、
暴言を吐いたりするわけですからとても悲しくなります。
そんな割の合わないお話が日経の記事に紹介されていました。
“ともに1950年代に封切られた小津安二郎監督の映画「麦秋」や「東京物語」で、長男の妻の役を演じていたのは三宅邦子さんである。医師である夫を陰ながら支え、夫の両親には優しさといたわりをもって接して、自分の子は厳しくしつけていた姿が印象的だった。
実は、先週あった認知症男性の鉄道事故を巡る損害賠償請求訴訟の最高裁判決にも、長男の妻の苦労が記されている。男性は愛知県に、長男は横浜市に住まいがあった。男性の症状が進み、その妻も高齢であるため、02年以降、長男の妻が1人で男性宅の近くに引っ越し、デイサービス利用時以外の介護を担った。判決には、徘徊させない工夫や粗相の後始末など献身的な日々がつづられ、胸を打つ。それは、07年末の事故直前まで続いた。
亡くなった男性には4人の子がいたが、長男とその妻以外は介護に関わった形跡はない。いろいろな事情があったのだろう。江戸のお白州なら人情味ある奉行が「単身赴任」までした妻を大いにねぎらったかもしれないが、権利や義務の考量に専心する現代の裁判所の仕事ではない。代わって無私の5年余に頭を下げたい。”
認知症の外来では、「単身赴任」までした妻のような方が、たくさんいらっしゃいます。
認知症の元家族として、そんな方々への気配りも忘れないようにしたいものです。