認知症治療薬 標的はアミロイドβだけでなくタウにも期待

認知症治療薬 標的はアミロイドβだけでなくタウにも期待

一般的に、アルツハイマー型認知症は、発症前から患者の脳内に「アミロイドβ」というたんぱく質が蓄積するとされています。最新の治療薬である、エーザイとバイオジェンの「レカネマブ(製品名レケンビ)」や米イーライ・リリーの「ドナネマブ(製品名ケサンラ)」は「アミロイドβ」を標的にした医薬品です。脳内にたまった「アミロイドβ」にくっつき、取り除くことで進行を抑えます。対象は、初期の患者さんが対象となるため、当院の認知症専門外来を受診される方でかなり限られます。何しろMMSE 21点以下はレカネマブ投与の対象外ですから。

薬の作用機序は画期的ですが、個人的にはあまり期待していません。何しろ「レカネマブ」という薬自体、アルツハイマー認知症の治験では十分な効果がなかったため、データを見直して「軽度の人なら効果ある」という結論を強引に導き出して今回の承認を得たのです。

ただし認知症に対する研究が進んでいることは事実です。私は、「アミロイドβ」でなく「タウ」を対象とした治療薬については期待を持っています。今回の記事では、認知症の新薬として「タウ」を対象とした新薬について解説します。

目次

1.タウとは?

アルツハイマー型認知症では、発症前から患者の脳内に「アミロイドβ」が蓄積、その後タウが蓄積し、徐々に脳神経細胞が破壊されます。アミロイドβが神経細胞の外側にたまるのに対して、タウは細胞の内側に蓄積します。タウは神経細胞の死亡、ひいては認知症に直接関わっている可能性があります。そのためタウの蓄積を防ぐことで認知機能の悪化抑制や改善効果が期待されるのです。

2.タウへのアプローチが根本治療?

タウについては以前から知られていたのですが、治療薬の開発のハードルが高かったようです。しかし、最近では、核酸医薬というとして治療薬が開発されています。従来の抗体医薬では届かない細胞内にも作用するため根本治療です。そのため、ある程度進行した患者さんにも期待が持てるのです。


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3.アミロイドとタウの2大病理の制圧は効果的?

認知症の発症には、発症前10~20年かけてアミロイドβが蓄積します。その後、タウが蓄積して認知症が発症進行すると考えられます。ならば2種類の作用機序の薬を併用すれば、アミロイドβの蓄積を防ぎ、さらにタウが除去することで認知症を制圧する可能性も出てくるのです。

4.まとめ

  • 認知症の治療としてアミロイドβの除去だけでは不十分ですし、軽症例しか期待はできません。
  • 認知症の治療としてタウも除去できれば、根本治療となりえて進行例にも期待できます。
  • 2種類の薬が併用できれば、認知症の制圧の期待も高まります。
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