認知症の講演の際に、必ず聞かれる質問があります。周囲が認知症を疑っても、“本人が受診を拒否した場合は、どのように受診すればよいですか?”です。この場合、いくつか方法があります。
1) 健康診断として受診してもらう
現在の高齢者の方は、“公的”なものに対して、従順な傾向があります。“市の健康診断”とか“○○歳を超えたら、検査が必要”などと言うと、結構受診してくれます。
2) 家族で必死に説得
子供さんたちが、必死に説得する。男性であれば、娘さん。女性であれば、息子さんからの説得が有効です。『そんなに呆けているとは思わないが、すこし物忘れが気になるので受診してくれないかな?早いほど、薬も効果があるそうだよ』というように説得します。通常、認知機能が維持されていれば、子供たちの必死な訴えには、”しぶしぶ”でも従ってくれます。これだけ言っても従ってくれない場合は、認知症はかなり進行していることが多いものです。
3) 強制的に(騙して?!)
先回、紹介したアルツハイマー型認知症の周辺症状が出ているケースや、前頭側頭葉型認知症(=ピック病)が疑われる場合は、誰が説得しても受診してくれません。あの手この手で、嘘をついてでも病院に受診してもらいます。もちろんこの場合は、措置入院ができる精神科の病院となります。配偶者に暴力を振るうケース、灯油を撒いて火をつけようとしたケースなど様々です。
上記の方法も、家族がいればの話です。家族がいなければ、紹介したいずれの方法も使えません。こうなるといわゆる困難事例となります。このような事例が存在することを、多くの医療従事者が気が付いていません(そもそも受診されなのですから・・)。実は、このような困難事例は、地域の民生委員さんたちが苦労しながら、対応してくれているのです。
困難事例の対応をしてくれている民生委員さんには感謝です。