いかにも出版社が売るためにつけた題名です。正直、題名はとても不快でした。しかし著者の先生は、とても真面目で素敵な先生であることが行間からにじみ出ています。きっと患者さんは満足されていることが想像できます。しかし出版社は本が売れなければ困ります。そのためにつけられた題名だと思います。内容はとても魅力的です。題名を気にされずに一読をお薦めします。
- 医療の業界には医師頭(イシアタマ) という言葉がある。カスタマーには多様なニーズがあり、売り手はそれに応えるが、医師はイシアタマで固定化した思考しかしないため、ペイシェント(患者) に自分の「常識」を押し付けてしまう。そこにコミュニケーションの 齟齬 が生まれる。
- 開業医と勤務医では診る患者の数がまったく異なる。比べ物にならない。
- 内科医と小児科医の両方を極めた人などこの世にいないはずだ。
- 本当に腕のいい小児科医は聴診器一本とコミュニケーションの力があれば十分である。
- ひな型にあるチェック項目をしっかり埋めていけば、ついうっかり悪い病気を見逃す可能性が大きく減る。
- 処方に 匙加減が必要になるのは、患者が定型的な経過を取らないときや、最初から診断が明確でないケースに限られる。
- カルテの変化に医者はついていかなければならない。将来は、患者の診療録をサマリー(要約) の形でデジタル形式によって患者に渡すことができるかもしれない。新しい形のカルテは、きっと患者家族にも恩恵をもたらすとぼくは期待している。
- クリニックを1回受診しただけでマイコプラズマ肺炎を診断するのは不可能である。「乾いた咳がしつこく続く」から疑う病気なのだから、繰り返し診察しないと分かりようがない。
- 年齢的に、ぼくより上の世代は「お医者様」の人たちである。一方、ぼくより下の世代は「患者様」の医師たちである。はっきり言って、「お医者様」の傲慢さはなかなかのものである。
- 医師が「診断は今は分からない」と言うことは、その医者が自分の技量を正確に把握している証拠でもある。
- 「分からない」と正直に言う医師は信用できる
- 「○○という薬をください」と言われると、開業医は正直言って 萎える。クリニックは街のドラッグストアではない。医師が診察する場所なのだ。
- 風邪に抗生剤は有害無益
- 日本国民の約半数が「風邪に抗生剤は無効」と知っているそうだ。逆に言えば、半数は知らないということだ。この責任は医師にある。
- いかに抗生剤が不要であるかを説明するのは時間もかかるし、骨も折れる。
- 患者が命を預けられる医者は、内科系なら 10 年以上、外科系なら 15 年以上の医者ではないだろうか。
- 当然と言えば当然だが、開業医はベテランの医者がやる仕事である。
- つまり開業医は、それまでの自分の経験と知恵を売り物にしている仕事と言える。
- 1日の仕事に占める臨床の割合は、大学病院 30%、一般病院 90%、開業医100%といったところだろう。
- 開業医の仕事は「医療」が大半だとしても、「家族を支える」という一面も重要である。
- そういう意味から言っても大ベテランの開業医は悪くない。人生経験の豊富な医師は、家族の問題を解決する経験知がある。
- 「医療」のこと以外でも疑問は何でもかかりつけ医にぶつけて、医師を育ててほしい。そうやって真の開業医は誕生していく
- 女性医師の方が、男性医師よりも、治療を行ったときに患者の死亡率が低いというデータがある。
- 女性は概してコミュニケーションの能力に長けている。
- 臨床ではパターン認識が重要との考え方があると述べた。男性の方が自分の経験に固執しパターンにこだわる傾向があるのではないだろうか。一方、女性医師の態度は柔軟な傾向がある。ここに違いがありそうだ。
- 医者は医療を先輩から教わることはあっても、コストを取るということを教わることはまったくなかった。
- 子どもが離乳食を始める前に、血液検査で食物アレルギーの有無を調べる必要があると思っている親がいる。これは基本的に間違い。採血しても食物アレルギーの予測はつかない。こうした検査を積極的にやっている医者に問題があると言わざるを得ない。痛いだけで意味なしの検査は、子どもにとって迷惑でしかない。
- 人生100年時代(が本当かどうか別として) に、 60 歳代で引退するなんて早すぎるし、地域の患者に対してやるべきことがまだまだあると友人は諭してくれた。
- 日本人男性の平均健康寿命は、 72・68歳なのだそうである。せめてそこまでは働いて地域に恩返しをしなくてはいけないのかもしれない。