先回紹介した、西川善文さんのラストバンカーの中で取り上げられていた案件で、個人的に関心を持ったものに安宅産業の処理があります。
最終的には、伊藤忠商事と吸収・合併で解決した案件です。
安宅産業は、海外取引の不良債権、国内の不良債権、不動産の含み損と破綻すれば、日本経済も焦土になるとまで言われた案件であったようです。
これだけの影響をもつ結果に至った経営陣は、経営責任を免れる分けにはいきません。
しかしそんな中、安宅産業には安宅コレクションというものがあったのです。
安宅コレクションとは安宅産業の創業家二代目の安宅英一会長が、能力を発揮し評価の高い古美術の数々を集めたものです。
その総数、国宝2点を含む約1000点に及びます。
うち韓国陶磁が80%(中国陶磁は15%)と韓国陶磁収蔵としては世界一とされています。
安宅英一氏は、安宅社内に美術品部という部門を設けて社業としてコレクションを集めていたため、公私混同という批判が付きまといます。
しかし、その体系的収集は世界にも類を見ないために世界的にも評価されているのです。
何を持って、正義とするかは判断基準によるもののです。
会社をつぶしたことは、非難されるべきものです。
もちろん公私混同も許されることではないかもしれません。
しかし芸術の視点からは、十分評価されるのではないでしょうか?
安宅産業の経営破綻後は、所有権を住友銀行が引き継ぎ、貴重で体系的なコレクションの散逸を惜しむ各方面の意見により、住友銀行を中心とした住友グループ各社の協力のもと、965件、約1000点が大阪市に一括寄付され、その後大阪市立東洋陶磁美術館として設立されたのです。
芸術の世界は、ビジネスよりもはるかに長いスパンで歴史上引き継がれてきたものです。
時には、近視眼的な経営などを無視した狂人によって守り、後世に引き継がれていくものもあるのではないでしょうか?
いずれにせよ、一度、大阪市立東洋陶磁美術館を訪れたいと思います。