日々生きていると「老い」は当たり前のものと感じてしまいます。しかし、この本を読んで最初に前提が覆されます。多くの生物の中で、「長い老後もヨボヨボな状態も、ヒト以外の生物にはほとんど見られない」ということです。このことに気が付いてしまえば、何となく人にしかない「老い」とも上手に付き合えるような気がするから不思議です。一読をお薦めします。
- 「生物はなぜ死ぬのか」ではなく、死ぬものだけが進化できて、今存在している
- 別の言い方をすれば、死ぬことは「他者を生かす」という意味
- 全ての生き物は、偶然、勝手に、利己的に生まれますが、死ぬときには、結果として他を利するかたちで、公共的に死んでいく
- 「老い」は「死」とは違い、 全ての生物に共通した絶対的なものではない
- 「老い」のおかげで人類の寿命が延び、今の文明社会が築かれた
- ヒトとバナナの遺伝子は、ざっくり 50%同じです。これは、かなり昔に共通のご先祖様から分かれたことを意味し
- チンパンジーとヒトは、見た目はずいぶん違いますが、遺伝子はなんと 98・5%が同じです。
- 進化のプログラムとは、簡単に言うと「変化と選択」の繰り返し
- 2つの革命的な出来事がRNAワールド〔焼きそばワールド〕に起こりました。 1つ目は、新しい登場人物「リボソーム」の誕生です。リボソームはタンパク質を作る装置で、全ての生物、全ての細胞が持っている最も基本的な細胞内の小器官
- もう一つの革命的変化は、DNAの登場です。 DNAとRNAはほぼ同じ構造ですが、RNAに比べてDNAは反応性が低く安定で、壊れにくい
- 壊れにくいDNAは情報のストック、そこから逆に写しとられて作られるRNAがタンパク質を作るシステムが完成
- 「分解=死」は進化に必須でした。これがないと、多様な新しいものが作れなかったの
- 新しいものが作れなければ、変わりやすい地球環境の中では、何も生き残れずに全て絶滅
- 産卵・放精後の生理的な変化として、急激な脳の萎縮が観察されます。これにより、そこから出るホルモンが低下し器官の制御が壊れ、「突然死」しているようです。ヒトにたとえて言うなら、急速に認知症になるようなもの
- ゾウの長生きの理由は、傷ついたDNAを持つ細胞を修復して生かすのではなく、容赦なく殺して排除する能力に長けているため
- 老化誘導のスイッチが押されるきっかけは、DNAが壊れること
- オートファジーというのは食べ物が少なくなると細胞の中の自身のタンパク質などを分解して栄養を補うリサイクル機構
- 日本人の平均寿命は最近100年間、毎年平均0・3歳ずつ延びており、大正時代に比べてほぼ2倍
- ヒトはなぜ、がん化のリスクを背負いながら、 55 歳以降の約 30 年間も生きられるのでしょうか。ゾウのように 遺伝子がたくさんあるわけでもありません。一つの理由は、強力な免疫機構のおかげ
- 免疫機構を強固にした要因の一つは、十分な栄養のおかげだと言われています。栄養状態は心臓や他の臓器の機能にもプラスに働くので、やはり寿命延長に重要な要因
- ヒト以外で老後があるシャチとゴンドウクジラも、実は群れにいるおばあちゃんが子育てに協力する
- ヒトは誰からか生きるすべを教わらないと、一瞬にして原始時代に戻ってしまいます。「ヒト」は教育で「人」になる
- 「老い」は死を意識させ、公共性を目覚めさせる
- 生物学的に表現すると「なぜヒトだけが老いるのか」ではなく、老いた人がいる社会が選択されて生き残ってきた
- シニアの最大のミッションとして、絶対に阻止しなければならないのは、次世代が使う環境を破壊し、資源を枯渇させること
- 老年的超越は、すでに十分に生きて病気や困難も乗り越えて「いつ死んでも悔いはない」という心理的な安定感、「生の満腹感」