ショートステイのロング利用をお薦めしない理由を高齢者専門医が解説

ショートステイのロング利用をお薦めしない理由を高齢者専門医が解説

在宅生活を維持するためには、ショートステイの利用は必須です。いつ終わるとも知れない介護をするご家族にとって、月に数日でも、要介護者を預かってもらえれば、精神的にも肉体的にも休まることができます。

実は最近、ショートステイのロング利用をされる方が、多くみられます。ご家族にしてみれば、長期に預かってもらえることは、とてもありがたいことです。しかし、専門医の視点で見ると、ショートステイのロング利用はお薦めではありません。なぜなら、ショートステイは名前の通り、「ショート」の利用が原則です。ロング利用をするならば、施設入所をした方が、要介護者さんのためにもなるのです。

今回の記事では、高齢者医療専門医の長谷川嘉哉が、ショートステイのロング利用をお薦めしない理由を解説します。

1.ショートステイのロング利用とは?

介護保険の在宅サービスの一つであるショートステイとは、多くは数日から1〜2週間の短期間だけ施設に入所して、食事・入浴などの介護をうけるサービスです。ならばショートステイのロング利用とは何でしょうか?

1-1.原則、生活の拠点としての利用は認められない

ロング利用とは本来定まっているショートステイの日数を超えて利用し続けることです。

ショートステイは、原則、短期的な利用を目的としたサービスです。そのため、特養や有料老人ホームのように生活の拠点としての利用は原則認められていません。しかし、介護者の事情など、やむを得ない理由がある場合は、長期的な利用が可能です。但し、このような利用者が増えると、本来の目的に沿った利用が制限されてしまいます。

1-2.ショートステイのロング利用には制限がある

ショートステイをロング利用には条件が2つあります。一つは、介護認定期間の半分を超えられないというものです。多くの認定期間は1年です。したがって、半年までは利用は可能です。二つ目は、連続して利用する場合30日を超えてはいけません。この場合、31日目に自宅に帰ったり、自費扱いにして対応していることが多いようです。

1-3.申請で制限以上の利用も可能な市町村もある

やむを得ない理由がある場合は、届出書によって制限期間を超えての利用が可能です。届出書は、ケアマネから市町村への提出になります。但し、市町村によって対応が異なり、「いかなる延長も認めない市町村」や「提出すれば殆ど認められる市町村」などと差があります。

2.ショートステイのロング利用は事業者のメリットが大きい

実は、ショートステイのロングステイは、事業者側のメリットが大きいのです。そもそも、ショートステイは単価が安く、利用率が80%でも赤字になってしまいます。

その上、ショートステイの場合、利用予定者さんの突然の入院などで部屋が空くこともあります。さらに、利用日にも無駄が出ます。例えば、ある方が月曜日から水曜日を利用、別の人が金曜日から日曜日を利用されると、木曜日が空いてしまうのです。

単価が安く、利用率も上げにくければ経営は厳しくなり、岐阜県土岐市でもショートステイの1件は廃業、1件は有料老人ホームに代わってしまいました。

その点、ロング利用の方は、確実に長期間ベッドを埋めてくれます。あるショートステイ経営者は、「本心は、全員ロング利用に変えたい」とまで言っていたほどです。

3.ショートステイのロング利用のデメリット

事業所にとってはメリットの多いショートステイのロング利用ですが、利用者さんにはデメリットが多いのです。

3-1.放置されることが多い

ショートステイは、原則が短期利用です。そのため、リハビリなどは全く期待できませんし、レクリエーションなども殆どありません。ショートステイの中でも20名定員程度の単独であれば、まだ目を配ってもらえますが、老健や特養に併設されているショートステイでは、メインは入居者さんですから放置される可能性はより高くなります。実際このような施設のショートステイを使って帰ってくると、ADLが落ちている人が結構いらっしゃるのです。

3-2.費用が高い

ショートステイの費用も掛かります。数日利用では費用負担は感じませんが、ショートステイは食費、宿泊費、日用品費で3,000円程度の自己負担があり、介護保険の1割負担も含めると1泊2日で5000円前後の自己負担が必要です。つまり、1か月では15万円以上もかかるのです。こうなると、施設入所とあまり差がない負担額です。

3-3.医療機関への受診が制限される

ショートステイは、単独型と、老健や特養の併設型の2つに分けられます。単独型の場合は、医療機関への受診は可能ですが、併設型の場合、医療機関への受診は原則認められていません。

4.ショートステイでの看取り?

Elderly patients in hospital bed
ショートステイでは医療機関との連携が及んでおらず、救急搬送〜入院〜胃ろう設置という流れになりやすいです

医師の目からみて、ショートステイのロング利用で、最も懸念されることは、老衰のような全身状態悪化です。

4-1.急変時は、救急受診

例えば、今までお元気であった患者さんが、突然、脳血管障害や虚血性心疾患が疑われるような急変時は、ショートステイを利用中であれば、救急搬送が基本です。これは、単独型ショートステイであろうと、併設型ショートステイであろうが違いはありません。施設内で診てくれるというわけにはいかないのです。

4-2.ショートステイは生活介護が主体

高齢者の場合、ショートステイのロング利用中にも、食事量が摂れなくなってくることがあります。これが在宅や施設であれば、自然経過での看取りも可能です。しかしショートステイはあくまで、短期の生活介護です。状態が悪くなった患者さんに対応したり、治療をしたり、さらには看取りをするような体制ではありません。

4-3.胃ろう等延命の可能性は高くなる

そのため、ショートステイのロング利用の患者さんが食事量が摂れなくなってくると、病院へ搬送されてしまう可能性が高くなります。実際、私も数例経験しています。食事がとれなくなった患者さんが、病院に搬送されてしまうと、介護力が乏しい場合は、かなりの確率で胃ろうが導入されてしまうのです。この理由については以下の記事も参考になさってください。

5.ショートのロング利用を考えるなら施設入所を

以上より、私は、ショートのロング利用を考えるなら、グループホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅への入所をお勧めします。

これらの施設の方が、入居者さんへのレクリエーションやイベントも充実しています。介護体制もしっかりしており、施設によっては看取りもお願いできます。そのうえ、費用負担もショートのロング利用と大きくは変わりません。

感情的には抵抗があるご家族は、以下の記事も参考になさってください。

6.ショートでの特養待ちはやむを得ない

最近は、特養で入所の前の待機場所として、併設型ショートステイのロング利用を行っている事業者が増えています。事業者としては、ショートステイの経営効率がで、特養の上がる上で、入居者も確保できるため理想的です。私の患者さんの多くも、ショートが使える限度ギリギリまで使ってから、特養に入居されています。この場合は、ショートのロング利用もやむを得ません。

しかし、2021年度介護報酬改定において、『「特別養護老人ホーム入所までの待機場所」としてのショートステイのロング利用は、「好ましい」とは言えない』と議論になっており、「ショートステイの長期利用是正」がされる可能性があります。

7.まとめ

  • ショートステイのロング利用は事業主のメリットはありますが、利用者さんにはメリットはありません。
  • ショートステイのロング利用によって、ADLが低下する患者さんもいらっしゃいます。
  • ショートステイのロング利用をするなら、施設入所を検討すべきです。
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