分野に関わらずどの経営者に聞いても、人手不足を訴えられます。その中でも、介護事業は労働条件の割には、給与水準も低く人手不足は深刻です。私は、NPO法人でグループホームを経営しています。比較的スタッフには恵まれた経営をさせてもらっていますが、今回退職者が重なり人手不足となりました。その分、スタッフには負担をかけてしまいます。もちろん早急に新規雇用を努力していますが、すぐには人員は埋まりません。そこで今回、『減員加算』をとり入れました。一見、聞きなれない『減員加算』ですが、導入するとスタッフからも好評で、多くの職場で活用できる考え方だと思います。今回の記事では、当グループが導入した『減員加算』についてご紹介します。
目次
1.減員加算とは?
そもそも『減員加算』とは以下のような事情から生まれたものです。
1-1.スタッフの定員とは?
介護事業では、職場の仕事をローテーションするために常勤・非常勤を組み合わせて『スタッフの定員』が必要とされます。介護事業では国が定めた人員基準がありますが、その基準ではとても現場は回りませんので、『スタッフの定員』は人員基準よりも多くなります。
1-2.人手が足りないと利益が出る?
退職等で、一時的にせよ『スタッフの定員』が減ると、皆が少しずつ『休日を減らす』、『勤務時間を増やす』、『夜勤の回数を増やす』などで対応してもらいます。しかし、毎月の決算書では不思議なことが起きます。人手不足の状況になると利益が増えるのです。何しろ売り上げは変わらなくても、人件費は減少するからです。もちろん多少時間外手当が増えますが、常勤職員が1名でも足りない状況であれば、それ以上に人件費は低く抑えられるのです。
1-3.浮いた人件費を一時的に分配
自分は、この点が従来からおかしいと感じていました。そこで、『スタッフの定員』が下回った期間は、その分の浮いた人件費を、残りのスタッフに臨時で配分することが『減員加算』です。法人とすれば、本来払うべき人件費を払っていないのですから、当たり前と言えば当たり前だと思われませんか? もちろん人員が確保できれば、『減員加算』は支給しなくなることは、重々スタッフに説明する必要があります。
2.この発想は、育児休暇取得者のいる職場にも適応可能
『減員加算』の発想は、出産育児休暇取得者のいる職場などでも活用できるのではないでしょうか? 出産育児休暇は確かに権利です。しかし、職場の仲間の負担を増やしてしまうという側面もあります。実際、私の知り合いの女医さんは、それが一因となって職場を退職されました。確かに、病院などでは一つの科の医師数は数名です。その中の一人が出産育児休暇をとると、口では大丈夫と言いながら仕事の負担はかなり増えます。そんな時に『減員加算』として、残ったスタッフに経済的に報いることは良いアイデアではないでしょうか?
3.経営者の決断次第
『減員加算』を支給することは、労務的にも問題はありません。経営者が決断するだけです。『スタッフの定員』が減ることで、負担が増える残りのスタッフに、言葉でなく、明確に金銭で報いることも大切ではないでしょうか?
4.人手不足でしか経営できないなら撤退を
実は、『減員加算』どころか、『スタッフの定員がマイナス』で何とか経営できている事業所が多いことも事実です。経営努力が足りず、適切な値上げもしない、経営者の報酬だけは高額な事業所は、口では、『募集しても人が集まらない』と言っています。しかし、実態は、『スタッフの定員』分の人を雇用すると赤字になってしまう事業所も多いのです。このような事業所は、早々にビジネスの世界から撤退することが望まれます。少なくとも、そのような職場で働くスタッフは他の職場に移った方が遥かに待遇は良くなるのですから・・。
5.まとめ
- 人出不足は、スタッフの負担になりますが、人件費が減る分が法人としては利益が増えます。
- しかし法人としては人件費が出る分利益が残りますが、その分は『減員加算』として残りのスタッフに配分すべきです。
- 『減員加算』の考え方は、育児休暇取得者のいる職場にも適応可能です。