先回のブログで一見裕福で富が集中しているような60歳代以上の方の25%は無貯金世帯であり、資産格差が広がっている話を紹介しました。
実は、それに合わせるように医療の世界では、“健康格差”という言葉が広がっています。
健康格差とは、“所得や、学歴、職業などの社会階層で、健康状態や寿命に違いがある。
社会階層が高い人ほど要介護状態やうつ状態が少なく、死亡率が低い。”という話です。
これは訪問診療をしていても痛感します。
収入、居住環境、雇用状態、教育水準、生活様式(喫煙習慣、飲酒習慣、摂食、運動)、環境(大気汚染、水質汚染、農薬、緑地)、社会的環境(犯罪率、雇用機会)で大きく健康に差がついています。
訪問診療先の家でも、サッシでない家は本当に寒いです。
ストーブが本当についているのかと疑うほどの寒さです。
外で息が白くならないのに、室内で息が白くなります。
不思議と、ストーブも不完全燃焼しているように臭いのですが、幸い?隙間風が多いためか一酸化炭素中毒にはなりそうもありません。
そんな環境では一日中布団の中で生活していることが増えています。
布団から出ても、厚手の服を何重にも重ね着をするため動きが悪く、ますます日常生活動作は落ちていきます。
もちろん転倒の危険性も高くなります。
その上、食生活もタンパクが不足気味のため年齢の割に年を取って見えます。
それに対して、優雅に床暖房のきいた部屋は、ストーブのような対流熱ではない輻射熱のためにとても快適な温かさです。
炬燵のように一か所に留まることもないので、日常生活動作が落ちるようなこともありません。
もちろん着ているものも薄くて暖かいため軽快で転倒の危険性も少なくなります。
このように同じ在宅療養をしている方の居住環境一つとっても相当の差があり、結果として健康格差につながっています。
社会主義でない、資本主義の世の中ではこの程度の差はやむを得ないのかも知れません。
そんなことを考えながら、背中にカイロを貼りながら、日々訪問診療をしています。
なんと、開業以来13年間で2万件近くなっています。