ケアプラン作成にはインプラントの有無の把握が必要!その理由を在宅専門医が解説

ケアプラン作成にはインプラントの有無の把握が必要!その理由を在宅専門医が解説

在宅患者さんの話です。その患者さんは、80歳を超え寝たきりであったため当方で在宅医療を提供していました。その際、口腔内の痛みを訴えられたため、訪問歯科受診をお願いしました。すると、以前に入れたインプラントが炎症の源になっているとのこと。炎症所見が強いため在宅での治療は困難であり、地域の基幹病院の口腔外科に入院後インプラントを外してもらいました。

患者さん自身は、元気なころにその当時の「最新のインプラント治療」を行ったようです。しかし、高齢とともにメンテナンスもおざなりになり、インプラントが感染源となってしまったのです。

現在、歯科業界では、インプラント治療が急激に広まっています。インプラントは導入後のメンテンナスが重要です。特に、ADL(=日常生活動作)が低下してからは、自身での歯科受診が困難となります。今回の記事では、医科歯科連携に取り組む在宅医長谷川嘉哉が、インプラント導入患者さんの在宅医療での対応について解説します。

1.インプラントとは?

Dental surgery. Tooth implant cut vector illustration. Healthy teeth and dental implant, stomatology poster
入れ歯とは違い、人工的な歯根に人工歯を移植する技術です

歯科業界の方には当たり前のことですが、そもそもインプラントとは、何でしょうか?

1-1.人工歯根による歯の設置

インプラントとは、失った歯の代わりに、チタン製のインプラント体を人口歯根としてあごの骨(歯槽骨)に埋め込み、その上に人口の歯を固定する治療方法です。機能的にも、見た目にも天然の歯に近づけることができます。

1-2.日本で広まった時期は

現在主流となっているチタン製のインプラントが日本に普及し始めたのは1980年代です。そのため、導入期にインプラントを入れた患者さんが、かなり高齢になっています。また、今後、インプラントを入れた超高齢者の急増が予想されます。

1-3.普及率は

厚生労働省の調査によれば、15歳以上で口の中にインプラントがある人は、2.6%。おおよそ300万人近い人がインプラントで生活を送っていることになります。特に、60〜69歳で割合が高く、5%以上の方が少なくとも1本のインプラントを入れています。これからの時代は、高齢者の口の中のインプラントの存在を、医療・介護現場が意識する必要がありそうです。

2.インプラントの寿命は?

そもそもインプラントの寿命はどの程度なのでしょうか?

2-1.何もしなくてよい…の誤解

インプラントの素材であるチタンまたはチタン合金自体は、腐食することも虫歯になることもありません。そのため、いったんインプラントを入れれば、何もしなくも問題はないと誤解される患者さんもいます。

2-2.自然歯より歯周病になりやすい

インプラントの周囲の歯茎には、線維がないため歯周病菌が侵入しやすい構造になっています。また、クッションの役割をする歯根膜がないため、あごの骨(歯槽骨)が噛むことによるダメージを受けやすくなっています。つまり、インプラントは、天然の歯よりも歯周病になりやすく、進行しやすいと言えるでしょう。歯周病が進行すると、インプラントを支える歯槽骨が溶けて、インプラントが抜けてしまうのです。

2-3.全身状態の影響を受けやすい

インプラントの寿命は、全身状態の影響も受けます。糖尿病、骨粗鬆症、喫煙などは歯周病を悪化させる原因となり、インプラントの寿命を縮めます。最近の知見では、歯周病が命に関わる全ての疾患に影響を及ぼしていることが明らかになっています。同様に、全身状態が歯周病に悪影響を及ぼすことが分かっています。知れば知るほど、医科歯科連携の重要性が理解できます。

3.インプラントはメンテナンスが重要だが…

以上のように、インプラントを入れてからも定期的なメンテナンスが重要なことが分かります。しかし、現実には、メンテナンスが困難になる要因があります。

患者さん自身が元気なうちは、一人で歯科を受診されます。しかし、病気や加齢変化で日常生活動作が低下すると、歯科医への受診自体が難しくなります。家族による送迎も、内科・眼科・整形外科などの受診だけでも大変で、歯科受診まで介護者の手が回りません。

そのうち、本人も家族も「歯周病が進行しやすいインプラント」が入っていることすら、意識をしなくなってしまうのです。

4.インプラントを想定したケアプラン

患者さんに介護が必要になった場合には、ケアマネージャーによるケアプランが作成されます。これからの時代、口の中についても気を配るようになってほしいものです。

4-1.ケアプランで歯の状態把握を

これからの時代、ケアプラン作成の段階では、利用者さんにインプラントが入っているか否かの情報収集が必要になります。同時に、歯科医への定期受診の状況も把握する必要があります。

4-2.受診が困難なら在宅で歯科治療を

情報から定期的なメンテナンスが必要と判断されれば、かかりつけ歯科医への受診を勧めます。ただし、受診が困難な場合は、訪問歯科および歯科衛生士さんによる口腔ケアもプランに入れます。

4-3.口腔ケアは在宅の方が頻回に可能

とくに頻回な口腔ケアが必要なケースは、無理に外来受診するよりも在宅での口腔ケアの方が有効です。外来では、最高でも月に1回しか口腔ケアは行えませんが、在宅であれば月に4回までが可能になります。

Explaining Tooth Implantation
介護者も本人もインプラントに対する知識を得ておくことも重要です

5.医科の外来受診患者さんも、歯科医の判断で訪問診療が可能

都市伝説のように、「医科に外来受診している患者さんには、訪問歯科は入れない」というものがありました。実際に、査定を受けたという話までありました。そこで、私が令和2年6月に、県に確認をとりました。結論は、医科が外来であっても歯科医の判断で訪問歯科診療は可能とのことです。

医科の受診状況に関係なく、歯科医の先生が通院が困難と判断すれば訪問歯科が可能なのです。

6.まとめ

  • インプラントを入れている患者さんが高齢になると、定期的なメンテナンスがなおざりになりがちです。
  • インプラントは、天然歯よりも歯周病になりやすい構造になっています。
  • これからは、ケアマネによるケアプラン作成の際にも、インプラント有無の把握が必要です。
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