介護費用節約のポイント7・FPとケアマネ資格の認知症専門医が解説

介護費用節約のポイント7・FPとケアマネ資格の認知症専門医が解説

麻生太郎さんは受け取りませんでしたが、2019年6月3日、金融庁の金融審議会は、「年金だけでは老後の資金を賄えず、九十五歳まで生きるには夫婦で二千万円の蓄えが必要になる」と試算した報告書を作りました。ちなみに、この試算には、病気や介護にかかる費用は含まれていません。しかし、75歳を超えれば3割の方には介護が必要になり、介護費用は避けて通れません。

今回の記事では、フィナンシャルプランナー(FP)とケアマネ資格を持つ認知症専門医の長谷川嘉哉が、介護にいくらかかるのか、そして少しでも節約する方法をご紹介します。

 1.介護にいくらかかるのか?

そもそも介護にいくらかかるのでしょうか?自宅で介護する場合と、施設に入所する場合で異なります。

1-1.自宅介護の場合

自宅で介護する場合に必要となる費用は、デイサービスやヘルパーなどの介護サービス利用が中心となります。ブレイングループの利用者の方の平均は、月額3〜5万円です。介護度が1、2の方は3万円台の方が多いのですが、介護度3を超えると、自己負担額があがり、利用するサービスも増えてくるため5万円前後となります。

1-2.施設入所の場合

入所する施設の種類によってかなり異なります。同じ種類でも、地域・設備によって値段が変わりますので、おおよその値段と考えてください。思いのほか、費用が掛かることに驚かれるのではないでしょうか?

  • 特別養護老人ホーム(特養):介護度3以上の方が入所できます。費用負担は、7〜15万円程度です。一般的に大部屋ですと安くなるのですが、新しい特養では個室が増えています。
  • 老人保健施設(老健):介護度に関係なく入所でき、費用負担も特養と同様に7〜15万円程度です。しかし、いつまでも入所できるわけでなく、入所期間に制限があります。
  • 有料老人ホーム:有料老人ホームは、健康型、介護型、住宅型の3タイプがあります。健康型の場合は、数千万円から数億円までの施設があります。しかし、普通の方が検討するタイプは、介護型もしくは住宅型で月額の費用は、平均20〜25万円です。
  • グループホーム:正式名称は、「認知症対応型共同生活介護」です。認知症があって、介護度が要支援2以上の方が入所できます。費用は有料老人ホームよりも少し安く、平均13〜20万円です。
  • サービス付き高齢者住宅:平均的な費用は15〜20万円程度ですが、介護度が上がってくると対応できなくなることが多いので注意が必要です。
Hospital room with empty bed
施設入所すると、公的な施設でも月に10万円前後は必要だと考えておいたほうがいいでしょう

2.介護度はつねに正しい認定を

私が外来で常に心掛けているのは、常に正しい介護度をつけておくことです。状態が変わったら、すぐに適切な介護をつけるように変更申請を行います。ご家族によっては、介護サービスの1割負担が上がるために嫌がる方もいます。しかし、利用する介護サービスが増えれば、介護保険の利用限度枠を超えて10割負担になることもあるのです。

また、本来特養に入れる状態なのに、変更申請をしないで高額な有料老人ホームに入ったままの方もいらっしゃいます。常に、適切な介護度をつけておくことが、結局は費用面でも節約になるのです。

*変更申請とは?:介護保険の認定有効期間中に心身の状態の変化により介護の必要の度合いに変化がある場合に、要介護(要支援)状態区分の変更が必要であるとして行う申請です。

3.特別障害者手当の受給も検討しよう

介護負担を減らすために特別障害者手当がもらえないか検討しましょう。

3-1.特別障害者手当とは

特別障害者手当は、自宅で常時特別な介護が必要な20歳以上の方で、身体または精神に最重度の障害を持つ方に手当を支給されます。手当額は、月額26,810(物価スライドにより改定される場合があります)。3か月ごとにまとめて支給されます。(支払月は5月・8月・11月・2月)

3-2.支給の対象

対象者は、20歳以上で、日常生活において在宅で常時特別の介護を要する、最重度の身体または精神の障害者で、政令で定められた障害程度に該当し、かつ重複障害の方。おおむね身体障害者手帳1級(一部2級を含む)。さらに障害者の方だけでなく介護保険の要介護4、5で特別な介護が必要な方も特別障害者手当の申請は可能です。

3-3.自宅在住以外でも支給される可能性がある

特別障害者手当は、自宅で生活している方に支給されます。そのため介護保険上の、特養・老健・療養型病床群に入所されている方は支給されません。しかし一見施設に見える、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅には、介護保険上は自宅扱いになりますので、基準を満たせば支給を受けることができます。


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A disabled senior man in wheelchair indoors playing with a pet dog at home.
認知症が進んで、要介護度が上がると、この手当が受給できる可能性があります

4.確定申告時の控除を忘れない

確定申告時の控除も忘れてはいけません。詳細は以下も参考になさってください。

4-1.障害者控除

障害者控除は、身体障害者手帳もしくは身体障害者手帳の方だけではありません。介護保険の認定で「要支援から要介護2までの方」は障害者控除(27万円)を、それ以上の「要介護3からの方」は特別障害者の控除(40万円)が受けられます。

4-2.介護保険サービスも医療費控除の対象

居宅系サービスの中でも医療度の高いサービスは保険の自己負担が医療費控除の対象となります。具体的には、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導【医師等による管理・指導】、通所リハビリテーション【医療機関でのデイケア】、短期入所療養介護【ショートステイ】です。

4-3.医療度の高いサービスを併用すると、医療費控除となるサービス

4-2の医療度の高いサービスを併せて利用すると、医療費控除となるサービスがあります。具体的には、訪問介護【ホームヘルプサービス】(調理、選択、掃除等の家事の援助などの生活援助中心型を除く)、訪問入浴介護、通所介護【デイサービス】、短期入所生活介護【ショートステイ】です。

Final return
年金が主体の暮らしになっても、確定申告は行うべきです

5.世帯分離も検討を

要介護者の収入が少なく、同居している家族の年収が高い場合は世帯分離は有効です。介護費用を抑えるには、介護サービスを利用する人と、世帯の中で収入の高い人を分離して、高額介護サービス費の基準が下がるようにします。ときに、特別養護老人ホームに入所している方で、世帯分離を使うことで費用負担が1/3にまでなることもあります。

世帯分離といっても、あくまで住民票レベルの話です。世帯分離を行っても、一緒に暮らしている実体に変化はありません。もちろん親子や兄弟といった関係には影響は及ぼしません。

6.入所しても安住しない

要介護者さんのご家族は、いったん入所すると安心されてしまう傾向があります。介護保険の入所施設は、一か所で死ぬまで安住するというより、状態に応じた施設に代わることが要介護者さんのためにもなりますし、費用負担にもつながるのです。

6-1.認知症があれば、グループホーム

認知症があるのに、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅での生活を続けている方が見えます。これらの施設は大規模な施設が多く、認知症の患者さんには馴染みません。認知症があれば、グループホームの小規模でゆったりした雰囲気のほうが好ましいのです。そのうえ、費用負担も5〜10万円も安くなるのです。

6-2.介護度が上がれば特養を申し込む

グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅で生活しているうちに、介護度が3以上になれば特養に申し込みましょう。数年待ってでも入居できれば、月額の費用負担は7〜15万円とかなり安くなります。ただし、認知症患者さんの場合、経済的に余裕がある方は、グループホームで最期までを希望されるか他もいらっしゃいます。この場合、グループホームに看取りが可能であるか否かを確認しましょう。

6-3.老健で特養を待つ

本来は、入所に期限がある老健ですが、事情によっては長期での入所が認められることがあります。この場合も安住せずに、介護度が3以上なれば特養に申し込みましょう。老健は経営方針が変わると、急に「出てください」と言われることがあるので、注意が必要です。

7.障害者手帳がある人は医療費助成もチェックしよう

介護費用の節約には、医療費の自己負担も減らせないか検討しましょう。身体障害者や精神障害者手帳が交付されると、市町村によって呼び名は異なるのですが、医療費の自己負担が軽減もしくは無料になります。

8.まとめ

  • 介護には、自宅生活。施設入所のいずれも結構費用が掛かります。
  • 特別障害者手当、各種控除、世帯分離、医療費助成など使えるものは使いましょう。
  • 常に介護度の変更申請はできないか?施設を変わることができないか?検討し続けることが節約につながるのです。
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